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大変革期に振り返るMacのCPUとOSの歴史 第2回

【Macに搭載されたOSの変遷】ソフトウェアプレーヤーから本格OSに向けての歩み

2021年05月04日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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Mac OS 9のデスクトップ画面

新世代のMac OS Xへの橋渡しを果たした「Mac OS 9」

 モダンなOSではない、という点ではMac OS 9はMac OS 8と大差ないものだった。しかしこの新たなバージョンは、その代わりに別の大きな役割を背負って登場した。それは従来のMac OSをいったん総括すると同時に、その上に構築されたさまざまな資源を次世代のモダンなMac OSに、そしてそのために設計された新世代のMacのハードウェアに受け渡すことだった。

 それ以前のモダン化の試みが失敗に終わったのは、簡単に言えば旧来のアプリをそのままモダンな環境上で動作させることを目指した結果だった。それに対してOS 9は、いわば古いOSをMac OS Xという新たな環境の中で動作させることで、細かな問題を回避するという手法を採用した。これは今で言えば一種の仮想環境のように見えるもの。OS X上で動作するOS 9の環境を使って、OS 9以前のアプリを動作させる。OS Xからすれば、OS 9環境は1つのサンドボックスと見ることもできる。当時のOS Xでは、この環境を特に「Classic」と呼んでいた。

 この記事では、OS 9以前のOSを広義のClassic系と呼んでいるが、OS X上で動作するOS 9は狭義のClassicと言うべきものだ。

Mac OS X上でOS 9を起動するための「Classic」のシステム環境設定

 ただしこのようなOS 9環境は、Macのハードウェア上で直接動作するClassic系OSとは微妙に異なる部分があったため、100%の互換性を保証できるものではなかった。そこでOS 9は、それ以前のMac OS同様、Macのハードウェアの上で直接動かすことも可能としていた。その際には、OS Xと同時に動かすことはできないが、起動時にOS 9とOS Xを選択できる、デュアルブート機能を備えていた。

起動時にOS 9とOS Xを切り替える「起動ディスク」の設定

現在のmacOSに直接つながる「Mac OS X」の登場

 Classic系のOSで行き詰まりとなっていたMacの救世主となったMac OS Xは、簡単に言えば、それまで一時的にアップルを離れていた共同創立者、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰したことによって生まれた。アップルを離れていた期間に創立したNeXT社で培ったワークステーション用OSの技術を最大限に活用して、Mac用のモダンなOS、つまりMac OS Xを開発したのだ。そのあたりを含め、OS X系の話はまた次回以降にお届けしよう。


訂正:初出時、一部表記に誤りがありましたので訂正しました。(2021年5月6日)


筆者紹介――柴田文彦
 自称エンジニアリングライター。大学時代にApple IIに感化され、パソコンに目覚める。在学中から月刊ASCII誌などに自作プログラムの解説記事を書き始める。就職後は、カラーレーザープリンターなどの研究、技術開発に従事。退社後は、Macを中心としたパソコンの技術解説記事や書籍を執筆するライターとして活動。近著に『6502とApple II システムROMの秘密』(ラトルズ)などがある。時折、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として、コンピューターや電子機器関連品の鑑定、解説を担当している。

 

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