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サーバーレス+ストレージレスで管理不要な世界を目指す

クラウドコストを最適化する「Spot」をネットアップが手がける理由

2021年02月12日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 「Spot by NetApp」はクラウドのコスト最適化を実現するサービスで、2020年にネットアップが買収したイスラエルのSpot社の技術をベースにしている。ストレージベンダーからデータマネジメントやクラウドに軸足を移すネットアップにとって、Spot by NetAppがどのような位置づけとなるのかをネットアップ合同会社 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏に聞いた。

ネットアップ合同会社 常務執行役員 CTO 近藤正孝氏

クラウドが当たり前となり、クラウド支出の最適化がテーマに

 パブリッククラウドの利用が一般的となり、多くの企業はオンプレミスでは実現できなかったスピードやスケーラビリティ、アジリティ(迅速性)を実現できるようになった。昨今のコロナ渦の例を見ればわかるとおり、劇的に変化していく社会や市場、生活の中、スピードやスケーラビリティ、アジリティは重要であり、企業がクラウドを利用する大きな理由にもなっている。

 しかし、クラウドの利用が浸透してきた一方で、「クラウドにコストをかけすぎてしまう」という課題も上がってきた。もともとクラウドを利用する大きなモチベーションはコスト削減だったが、クラウドの利用コストはオンプレミスより必ずしも安価ではないことがわかってきている。調査会社のガートナーも「約8割の組織は、IaaS利用料の予算超過が発生するだろう」と予測している。「クラウドと継続的に付き合っていくためには、需要に合わせた供給の調整と支出の最適化が必要になる」と近藤氏は語る。

 今回紹介するSpot by NetAppは4つのサービスによって継続的な支出の最適化を実現するという。「ユーザー企業はすでに1000社以上にのぼっている。ネットアップの社内ITでの事例も、最大75パーセントのコスト削減を実現しています」と近藤氏は語る。

インスタンス調達方法を動的に変更し、コストを抑える

 Spot by NetAppは「Cloud Analyzer」「Eco」「Elastigroup」「Ocean」という4つのサービスという4つのサービスから構成されている。

Spot by NetAppの各サービス

 まずCloud Analyzerは文字通り利用料を試算するサービス。「過去の利用実績をもとに中長期でどれくらいのクラウド支出があるかを可視化するほか、支出傾向に異常がないかを通知します。また、Spotによってコストがどれくらい最適化できるか、他の「Eco」「Elastigroup」「Ocean」を利用した場合の推奨アクションを表示します」と近藤氏は語る。

 また、「Eco」と「Elastigroup」はサーバー等の調達方法をダイナミックに変更し、コストを最適化する。具体的には長期契約によって割引が効くリザーブドインスタンスやSaving Plansや、入札形式で安価に利用できるスポットインスタンスを活用し、利用料を削減できる。

 EcoはこのうちリザーブドインスタンスやSaving Plansによる長期割引を最大限に活用することで、サーバー構成の変化なしで、Amazon EC2の利用料を約7割削減しているという。Elastigroupはスポットインスタンスを活用し、スケールインとスケールアウトを自動化する。スポットインスタンスはオンデマンドの最大90パーセント安くなる代わりに、事業者側の都合で中断されるリスクがあるが、こちらも独自技術と機械学習によって最適なインスタンスを採用する。「機械学習によって需要予測を行ないポリシーを作った上で、中断実績や市場価格を分析し、中断リスクを評価。企業のる可用性の要件に応えることができる」と近藤氏は語る。

 4つめのOceanはコンテナサービスのコスト最適を図るもので、コンテナ環境のスケールイン・スケールアウトの自動化を実現する。Elastigroupのコンテナ版と言える。コンテナクラスター上で動作するコントローラーと、コントローラーからデータを集約するSaaSから構成されており、適正なサイジングやオートスケーリング、コストの最適化などを実現する。

「サーバーレス」に加えて管理不要な「ストレージレス」を目指す

 Spot by NetAppのうちOceanは、ネットアップが進めるコンテナ向けソリューションにおいても重要な位置づけを占める。

 近年、ネットアップは「データファブリック」の構想を前提として、クラウドネイティブアプリに堅牢なデータサービスと可搬性(モビリティ)を実装しようとしている。このうち堅牢なデータサービスを目的としているのが「Project Astra」だ。Project Astraでは永続性のあるボリュームをコンテナ環境に提供するとともに、ストレージの階層化管理、データの保護や圧縮などリッチな機能を実現する。

 Project Astraをベースにしたネットアップのクラウドストレージサービスと、コンテナ環境のサーバーレス化を実現するSpot by NetAppと組み合わせることで、いわばサーバレスMeets「ストレージレス」を実現するのがネットアップの狙いだ。

サーバーレス&ストレージレスの世界を目指す

 ここで言うストレージレスとは、ストレージがなくなるという意味ではなく、ストレージの管理が不要という点を指す。Oceanによってコンテナワークロードにスポットストレージが追加され、フルマネージドの永続性ボリュームが提供。ステートフルなアプリケーションのオーケストレーションが、コンピューティングとストレージの両方の環境で実現されるという。近藤氏は、「アプリケーションの作り方が変わってきており、これからはアプリケーションアウェアなインフラが必要になる。クラウドネイティブなアプリに最適化された環境を実現したい」と語る。

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