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鳥居一豊の「コンパクトスピーカーが好き!!」 第5回

小型スピーカーらしからぬ、おおらかさ

ELACのCARINA BS243.4で「Song for LISTNERS」を聴く

2020年09月03日 13時00分更新

文● 鳥居一豊 編集●ASCII

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セッティングを済ませたCARINA BS243.4。いよいよ試聴だ。

エネルギーたっぷりなロックから、新しいELACを感じる

 CARINA BS243.4は、いい意味でELACらしくない音だ。

 アンドリュー・ジョーンズ氏のこれまでのELACスピーカーに近い感触で、中低域がリッチでおおらかな鳴り方をする。もちろん、中高域の情報量は豊かで、声のニュアンスや曲による歌い方の違い、声の出し方なども実にきめ細かく鳴らし分ける。この再現はJETツィーターの優れた実力を引き出したものと言える。また、ごくわずかだがアタックを柔らかくして、耳当たりのよい感触に仕上げている。中低音がわずかにふくらんだバランスということもあり、ややゆったりとした鳴り方をする。

 リファンレスにしているB&W 607との比較でも、明らかにスケールの大きな鳴り方になる。低音が雄大で、ベースやドラムの響きもリッチだ。重厚なロックサウンドをエネルギーたっぷりに聴いている感じで、ELACらしくないというよりも小型スピーカーらしくない鳴り方だ。

楽曲別に表現の違いを確かめる

「Muse」(Song for LISTNERS_side Goodbye):
バラード調で、歌声もやや憂いをおびたものになる。声のニュアンスもきちんと出すし、声を張ったときのエネルギー感もしっかりと出る。小気味よくなるギターのフレーズもきめ細かくならすし、その一方でベースやドラムのリズムもよく弾む。

 B&W 607は歌声も各楽器の音ももっとシャープになる。線が細いというほどではないが、音像がしっかり立って音場の広がりも広い。オーディオ好きが好む傾向の音だ。これに比べるとCARINA BS243.4は、よりライブ感があるというか、音場というよりステージが見えるような印象だし、歌をはじめ演奏もより生き生きとした印象になる。

「Slip out!」(Song for LISTNERS_side Goodbye):
ノリの良いロック・サウンドで、CARINA BS243.4では、ハイテンポのグルーブ感がよく伝わる。リズムも量感はたっぷりだが、弛んでしまうようなことはなく、アップテンポから中盤のややテンポを抑えた部分のリズムの変化もしっかりと出る。低音の鳴り方は135mm口径の比較的小さなユニットとは思えない、より大口径のウーファーのようなボディのしっかりとした鳴り方だ。

 B&W 607もコンパクトなサイズとは思えないほど低音はよく鳴るが、その音はタイトな感触で量感は控えめ。そのぶん、ベースの音階やドラムスのリズム感をよりクリアに描き分けるが、音像はやや線が細い。非力というわけではないが、贅肉をそぎ落として体重を絞ったスポーツ選手のような、ストイックな音になる。

「Trauma」(Song for LISTNERS_side Hellow):
ハードロック調の曲で、リズム進行も歌い方もかなりハイテンション。リズム感は弛まずに力強く鳴り、まさに重厚な感触になる。低めに抑えた歌声が、サビの部分になると高く伸びていく感じの歌声もエネルギー感たっぷりで、この歌声のパワー感はなかなかのもの。コストダウンを果たしたJETツィーターではあるが、音の解像感やエネルギーたっぷりの出方はJET Vと遜色のないものだと感じる。

 B&W 607はやはりより鋭く尖った印象。テンションの高さはよく伝わるし、テンポ感の正確さもよくわかる。音像の定位がシャープで、個々の音がしっかりと立つこともあり、クールで客観的な鳴り方にも感じる。CARINA BS243.4が演奏が行われているステージに居て、音楽に間近に迫って聴いている感じだとすると、607はミキサー室で音をモニターしているような感じになる。高域はややキツい感じもあり、ディストーションを効かせたギターの音も鋭く、厳しい音も正直に出す傾向であることがわかる。

「Slumber」(Song for LISTNERS_side Hellow):
リラックスした感じの歌声が、カントリー曲のムードと相まってほっとする気持ちよさがある。アコースティックギターの鳴り方もナチュラルな感じだし、肩の力の抜けた感じではあっても音自体のエネルギーはたっぷりだ。それにしても、彼女の声の操り方というか、感情の込め方の上手さがよくわかる。彼女がふだん演じることが多いキャラとは違った低めのトーンで、情感をしっかりと込めて歌っているのがわかる。歌唱力も十分だが、こうした情感を込めた歌い方ができるのは声優の歌ならではの魅力。そこが質の高いオーディオ機器だとよりよくわかる。

「Into the blue’s(modern ver.)」(Song for LISTNERS_side Hellow):
これは作品のオープニングに使われている曲の別バージョン。エネルギッシュなロック・サウンドで、歌声もラストのサビの部分ともなるとパワーを出し切っている感じで、なかなかにハードなシャウトを聴かせてくれる。声の充実感やボディ感が出て聴き応えは満点。B&W 607もテンションの高さやエネルギー感は不満がないが、比べるとどうしても熱量の高さとか、情感がもう少し欲しいと感じてしまう。

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