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業務全体の自動化を実現する「ハイパーオートメーション」へのロードマップを披露

RPA化すべき業務はRPAが教えてくれる UiPath新製品に見る仕事効率化の進化

2020年03月02日 11時30分更新

文● 指田昌夫 編集●大谷イビサ

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 RPAソフトウェア大手のUiPath(ユーアイパス)は、2月末に都内で製品説明会を開催した。急成長を遂げるRPA市場における差別化ポイントをアピールするとともに、企業の業務全体の自動化を指す「ハイパーオートメーション」の世界についてのロードマップを披露した。なお、本説明会はオンラインでも同時配信された。

国内採用企業は1年で倍増

 最初に、2019年12月にUiPath日本法人の取締役CRO(チーフレベニューオフィサー)に就任した鈴木正敏氏が登壇した。鈴木氏は日本オラクル、SAPジャパン、シマンテック日本法人などのITベンダーで、豊富な顧客企業との業務経験を持つ。「CROは日本ではまだなじみの薄い役職だと思うが、ダイレクトセールス、パートナーセールス、プリセールスの全営業部門とマーケティングを統括し、企業の利益成長に関する全責任を持っている」と自らの役割を説明する。

UiPath日本法人 取締役CRO 鈴木正敏氏

 鈴木氏は、急成長するRPAの分野のなかで、UiPathはトップ企業としてガートナー、フォレスターなどの調査会社からリーダーの認定を得ている大手ベンダーであり、日本でもPRA部門の売り上げシェア1位(ITR)、大手企業への浸透度1位(MM総研)などの評価を得ていると説明。「日本市場では2018年の750社から2019年1500社に倍増、認定資格取得エンジニアも2019年に約1万4000人と、こちらも倍増している」

 急成長の理由は、過去3年間、1年ごとの重点分野を戦略的に切り替えてきた成果だと鈴木氏は説明する。2017年は、大手企業で使える運用基盤の力を入れ、セキュリティ、コンプライアンス、スケールアップへの対応を強化した、続く2018年は、ロボットの開発や管理する環境をより使いやすくし、2019年にはAIによる自動化によって、より複雑な業務への対応力を高めた。「PRAが登場した当初は、OAの延長線上のソリューションなのか、企業システムとしてとらえるべきものなのかが定まっていなかった。そのなかでUiPathは、いち早くエンタープライズの使用に耐えるセキュリティや堅牢性を提供し、大規模な運用による業務効率化に貢献した。現在の成長はその判断が正しかったことを裏付けている」

 同社のビジョンは「A Robot for Every Person」。ビジネスにおいて、働く人の能力を拡張する“パワードスーツ”のような役割を果たすものを目指している。

「そのビジョンのもとで、RPAとして重要なポイントは、一からシステムを作らなくても既存のものをつなぎ合わせることで実現できること、またビジネス環境の変化に柔軟に対応できる柔軟性を持っていることだと思っている」(鈴木氏)

RPAコア製品はAIでさらに使いやすく

 UiPathではこれまで、PRAプログラムの「開発」「管理」「実行」という3つの部分に向けてソフトウェア製品を提供してきた。具体的には、ワークフローに沿って業務処理を設計する「Studio」、自動化プロセス(ロボット)の管理ソフト「Orchestrator」、そして実際のロボットであるサーバー型「Unattended Robots」、デスクトップ型「Attended Robots」などである。

 RPAは基本的に、プログラミングの知識がない人でも画面の操作によって業務プロセスをつないでいくことができるが、UiPathの製品は、特にユーザーインターフェイスに強みがあると、マーケティング本部の原田英典部長は説明する。

マーケティング本部 原田英典部長

「たとえば、手作業の画面操作を記録する場合でも、マウスカーソルの座標による認識、AIによる認識、プログラム内のIDによる認識など、複数の方法から最適なものが選べる。またロボットの管理面では、デスクトップ型とサーバー型のPRAが混在している環境でも、まとめて1画面で管理できる点は、UiPathの利点として多くの顧客企業から支持されている」(原田氏)

 これらのコア製品は、今後AIの導入によってさらに複雑な業務の自動化にも対応できるようになるという。

RPA化すべき業務を自動的に見つける

 UiPathでは、RPAコア製品の領域から、その前後のプロセスへ活用範囲を広げる計画を持っている。具体的には、業務自動化の計画段階の支援と、RPA実行後の効果測定をフィードバックする部分をカバーすることを目指す。計画から開発、実行、運用、測定、評価までの一連の流れを網羅することで、企業の業務全体の自動化を指す「ハイパーオートメーション」の世界に近づこうとしている。

UiPathのロードマップ

 今回の説明会では、計画段階とRPA測定に使うツールとして「PROCESSGOLD」「Explorer EXPERT」「Insights」という3つの新製品の発表があった。業務プロセス自動化計画の初期段階では、「何を自動化するか」の判断が、RPAプロジェクトの成否にかかわるもっとも重要な部分である。

 PROCESSGOLDは、すでに企業で使われている業務アプリケーションのログを分析し、どこを自動化すれば高い効果が得られるかを発見するためのツールだ。ワークフローの図では単純な流れの業務でも、実際は数々の例外処理が行われていて、それらがぐるぐると回りながら処理が進んでいることが多い。その実際の動きを可視化し、何が起きているのかを自動的に可視化する。SAP、Salesforce、Microsoft Dynamicsなどの主要な業務アプリケーションに対応している。

「業務プロセスを可視化、数値化することによって自動化の優先順位を決めることができる。つまり科学的に自動化計画を進めるためのプロセスマイニングツールがPROCESSGOLDだ。自動化するターゲットを自動的に見つけることができるので、より効果の高いRPA導入が実現できる」(ソリューション本部エバンジェリストの夏目健氏)

UiPath ソリューション本部エバンジェリスト 夏目健氏

科学的アプローチでRPA化を推進

 PROCESSGOLDがシステム内部のログを可視化するのに対して、「Explorer EXPERT」は、現場作業者のフロント作業に介在して、RPAを開発するIT部門の作業負担を軽減する。

 RPA化にあたって従来は、業務担当者にIT部門の担当者がヒアリングをしたり、紙に書き出してもらった資料をIT担当者が読み解くような作業がどうしても必要だった。Explorer EXPERTは、通常の手作業の業務を全て記録し、IT部門が開発時に必要な手順書と、UiPathコア製品のワークフローを自動的に出力するソフトウェアだ。言うなれば、手作業の業務を自動的にITの世界で使う言語に“翻訳”してくれるようなツールである。もちろん完璧なワークフローにはならないが、開発者はそれを手直ししていけばよく、RPAを効率よく作成することができるという。

 そして3つめが、RPAの効果測定ツール「Insights」だ。管理ツールのOrchestrator に追加可能なアドオンとして提供する。基本的にはレポーティングのツールだが、ロボットの稼働状況、効果について強力な分析機能を提供する。作ったロボットの稼働が少なければ、RPAの設計に問題がある可能性があり、逆に稼働が高すぎる場合は、さらに追加のロボットを投入するべきかなど、業務効率化が適正かどうかを監視し、改善に向けて役立つ。UiPathではほかに、2製品のリリースを予定している。

「これらのツールを使って、科学的なアプローチでRPAの導入と評価をしていくことで、業務全体の自動化であるハイパーオートメーションに近づくことができる」と夏目氏は説明した。

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