フェイスブックが信頼回復のキャンペーンのためにPR企業と契約して自社の不祥事への注目をそらし、友好的な政治家を利用して米国議会による調査を制限しようとしている。ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
ケンブリッジ・アナリティカのデータ問題、ロシアの荒らしによるフェイクニュースの氾濫、フェイスブックのプラットホームを利用したミャンマーでの暴動の煽動といった問題は、過去数年間でフェイスブックの信頼に打撃を与えてきたものの一部である。問題への対応として、フェイスブックは積極的なPRとロビー活動を展開したが、その内容の一部がニューヨーク・タイムズ紙の調査によって明らかになった。
以下は「ハイライト」というよりは「ローライト」と言うべきだろう。内容には非公式な事柄も含まれている。
―フェイスブックは共和党系の身辺調査企業であるディファイナーズ・パブリック・アフェアーズ(Definers Public Affairs)と契約し、抗議活動家の信用失墜を狙ったとされている。その内容の一部は、フェイスブックの独占力を公に批判してきた著名投資家のジョージ・ソロスが、抗議活動家グループに資金提供をしているとほのめかすものだった。ソロスは、極右派による反ユダヤ主義攻撃の頻繁な標的となっている。
―ディファイナーズは、保守派ニュース・サイト「NTKネットワーク」に掲載された、アップルとグーグルを攻撃する複数の記事に関係している。記事の中にはアップルがプライバシーに関して曖昧な姿勢を見せていると批判するものなどが含まれ、フェイスブックから批判の矛先を意図的に逸らそうとする試みがうかがえる。
―反ユダヤ主義的という批判を抑えるため、ユダヤ系市民権団体の名誉毀損防止同盟(Anti‐Defamation League)にロビー活動をした。
―フェイスブックは民主党と共和党両者に好印象を与えるため、多くのテック企業が(インターネット上での自由な発言が制限されると)反対していた反性的奴隷(anti-sex trafficking)法案に意図的に賛成した。
―フェイスブックはチャック・シューマー上院議員(民主党上院院内総務)の支援を受けていた。シューマー上院議員はフェイスブックに対して厳しい質問を繰り返していたマーク・ウォーナー上院議員に対し、フェイスブックに損害を与えるのではなく、うまく協調していけるような方向性を探るように非公式に要請していた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、シューマー上院議員の娘はフェイスブックに勤務しており、フェイスブックは議員の支援を継続的に評価していたという。
今回の調査により、連邦議会に対してフェイスブックに対するコントロールとプライバシー保護強化を求める声が強まるだろう。下院司法委員会の独占禁止法小委員会に所属する民主党の有力者であるデイビッド・シシリーニ下院議員は、ニューヨーク・タイムズ紙の記事を受けて「フェイスブックの経営陣は顧客の利益よりも自分たちの莫大な利益を常に優先するのだということが明らかになった」とツイートしている。
今回の発覚によって、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)と、PRおよびロビー活動の計画立案をしてきたシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)両者の判断に対してさらなる疑問が投げかけられることになるだろう。また、過去数年間で急落していたフェイスブックの従業員の士気に、さらなる悪影響を与える可能性もある。今回のPRは従業員の士気向上という目的もあったと評する向きもあり、より一層皮肉な結果になったと言えるかもしれない。