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ガソリン車用ターボが絶好調の重工2社、EV隆盛でも注力する理由

2018年10月03日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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三菱重工相模原製作所では最後の点検・梱包作業以外を自動化している。(左下)乗用車用のターボは両手のひらに乗るサイズだ

「ここまでの稼ぎ頭になるとは誰も予想していなかったんじゃないか」。三菱重工業関係者がほくほく顔で言う。

 というのも、車両過給機(ターボチャージャー。以下、ターボ)事業が絶好調だからだ。国内でシェアを争う三菱重工とIHIの2017年度のターボ事業の売上高は共に2000億円を超え、右肩上がりで成長している。

 ターボ事業の売上高の8割強を占めるのが自動車用ターボだ。ターボ搭載車は、エンジンのサイズを小さくしても出力を底上げできるので、燃費が良く排ガスの浄化もできる。その上、乗用車向けで2万円、軽自動車向けで1万円という低価格も手伝って、今や世界のガソリン車8000万台の約3割に搭載されている。

ツートップ入りには壁

 もっとも、自動車メーカー各社が軸足をガソリン車から電気自動車(EV)などの電動化車両へシフトしており、ターボの将来性を疑問視する声は多い。

 重工2社は、「ガソリン車の生産台数の伸びが鈍化しても、ターボの搭載率は15年から20年にかけて11%も上昇する見込みで成長余地がある」と反論する。また、三菱重工関係者も、「EV普及には時間がかかるので、あと15年は食える」と強気な姿勢を崩さない。

 重工2社がターボに注力する理由は参入障壁の高さにある。エンジンを開発する自動車メーカーに常駐し、約3年をかけて共同開発するため、長年培った信頼関係と、旧モデルの構造を知っていることがものをいう。

 技術的にも利がある。ターボには、航空エンジンのタービンや火力発電のボイラーの製造で培った高い技術が生かされているからだ。

 世界の自動車向けターボ市場は、米ハネウェル・インターナショナルと米ボルグワーナー、その後を追う日系重工2社の世界4強の寡占市場。新規参入するのは難しい。

 共にシェア約2割の日本勢はツートップ入りを狙うが、壁は高い。自動車メーカーの再編・提携が進み、共通化されたエンジンユニットの量産規模が大きくなったことで、「受注を失ったときの衝撃が以前よりも大きくなった」(三菱重工エンジン&ターボチャージャの大迫雄志ターボ事業部長)からだ。規模の優位性がある米国勢が力を増している。

 加えて、ターボは量産型部品なので、「とにかくコストが課題」(IHI車両過給機SBU長の川崎義則執行役員)。そのため、工場の自動化ラインの整備や基幹部品の集中生産、部材の調達価格の低減を一気に進めているところだ。

 IHIは今後、中国や北米市場の強化を掲げて、自動車用ターボ事業に年間数十億円の投資を行う。三菱重工は来年にもハイブリッド車向けのデモ機を造り、搭載車種を広げる戦略だ。米国勢にコストで勝つことが事業拡大の鍵になっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松野友美)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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