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新生サッカー日本代表を担う堂安・南野・中島「若手三銃士」の素顔

2018年09月14日 06時00分更新

文● 藤江直人(ダイヤモンド・オンライン

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コスタリカ戦で大活躍した日本代表
コスタリカ戦で大活躍を見せた(左から)南野拓実、中島翔哉、堂安律の3選手と、DF植田直通 写真:JFA/アフロ

森保一新監督(50)に率いられた新生日本代表が、4日遅れの初陣で最高のスタートを切った。パナソニックスタジアム吹田にコスタリカ代表を迎えた11日のキリンチャレンジカップ2018で、3‐0の快勝劇を演じる原動力になったのは、前線で先発として抜擢された20歳の堂安律(FCフローニンゲン/オランダ)、23歳の南野拓実(レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)、そして24歳の中島翔哉(ポルティモネンセSC/ポルトガル)。世代交代の旗手となる「若手三銃士」の素顔と、代表経験が浅い3人を輝かせた森保監督の采配を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

森保ジャパンに初勝利をもたらした
「若手三銃士」の躍動

 陳腐な表現になるが、日本代表のボールになるだけで、これほど胸の鼓動が高鳴ってくる試合はいつ以来だろうか。まだ記憶に新しいワールドカップ・ロシア大会は、いい意味で開幕前の予想を裏切る西野ジャパンの快進撃に導かれた興奮と高揚感、そして一体感にも後押しされていた。

 翻ってパナソニックスタジアム吹田で11日にベールを脱いだ、森保一新監督に率いられる新生日本代表はボールを持ったらとにかく仕掛ける。ベクトルは常に前へ。それぞれが放つ自由な発想がいつしかチーム全体のそれに昇華していく過程に、ワクワクした思いを抱かずにはいられなかった。

 コスタリカ代表を3‐0で一蹴した90分間を“簡潔な言葉”に凝縮させていたのが、時間の経過とともにボールを持つだけで歓声を浴びるようになった、新生日本代表の「10番」を背負うMF中島翔哉(ポルティモネンセSC/ポルトガル)だった。それは「楽しかった」――。

「試合がすごく楽しかった。チームメイトもすごく助けてくれて、本当に楽しかった。10番というのはサッカーでは特別な番号だと思いますし、それも含めてすごく楽しかった」

 ただでさえ限られている活動時間が、6日未明に発生した最大震度7の北海道胆振東部地震で大きな影響を受けた。練習が中止になった6日は宿泊していた札幌市内のホテル近くで軽く体を動かし、7日に札幌ドームで予定されていたチリ代表とのキリンチャレンジカップ2018は中止となった。

 8日午後に空路で入った大阪も、上陸した台風21号にもたらされた被害が依然として残っていた。9日は当初予定されていた練習会場が水没により変更。さらに大粒の雨にも打たれた中で、4日遅れの初陣に臨む森保監督はチームに対するマネジメントを急きょ変更している。

「攻守両面で連携・連動して戦った日本人の良さと言える部分は、世界に通用すると思っています。規律という面で組織力が独り歩きしてしまうところもありますが、それぞれの個の力と組織力があるからこそ(ロシア大会では)いい戦いができた。日本人が持っている技術にも自信を込めて、試合の中で勇気を持ってトライすることを選手たちには求めていきたい」

 札幌で新体制を始動させた今月3日の時点では、監督としてJ1を3度制したサンフレッチェ広島時代の代名詞であり、昨年10月から指揮している東京オリンピック世代のU‐21日本代表でも取り入れていた[3‐4‐2‐1]システムを、A代表でもベースにする青写真を描いていた。

 しかし、ピッチ上で表現するには時間が足りない。理想を貫けば逆に不要なストレスが生じる。ならば、ロシア大会を戦った西野ジャパンと同じ、慣れ親しんだ4バックでまずは戦う。西野ジャパンでコーチを務めた経験から組織力だけでなく、個々が持つ技術の高さにも森安監督は大きな信頼を寄せていた。

 その象徴が前線に配置された20歳の堂安律(FCフローニンゲン/オランダ)、23歳の南野拓実(レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)、そして24歳の中島の「若き三銃士」となる。初めてトリオを組む3人に対する指示は「自由に攻めていい」だった。

オランダから初凱旋の堂安律は
個人技とコンビネーションでチャンスを演出

 東京オリンピック世代の堂安は不思議な縁を感じながら、オランダへ渡ってから初めて凱旋する日本国内のピッチに立った。忘れもしない昨年6月25日。ガンバ大阪からフローニンゲンへ期限付き移籍する前のラストゲームが、川崎フロンターレと対峙したパナソニックスタジアム吹田だった。

「スタンドを見渡せばシートが青色ですし、懐かしいなと感じていました。親戚や友だちも見に来てくれたので、無得点という結果は残念でしたけど、自分がプレーする姿を見せられてよかったです」

 右サイドハーフの位置からドリブルでカットインしながら、利き足の左足でボールを操るタイミングをうかがい続けた。パスやシュートだけでなく、右サイドバックの室屋成(FC東京)とも即席とは思えないあうんの呼吸を披露。個人技とコンビネーションでチャンスを演出した。

 最大の見せ場は後半14分。中島からFW小林悠(川崎フロンターレ)と渡ったボールに反応して相手の最終ラインの裏へ抜け出し、GKの動きを見極めながら左足で軽くキック。GKの顔面に当たりながらもゴールラインを越えかけたボールは、相手DFの必死のクリアでかき出された。

「シュートを打つ前に(ゴールの)パフォーマンスを考えていました。やられましたね」

 持ち前の明るいキャラクターで取り囲んだメディアを笑わせた堂安は、1年目で9ゴール4アシストをマークして完全移籍を勝ち取り、背番号も「25」から「7」へ変更して2年目の臨んでいるその胸中に、コスタリカ戦でデビューを果たしたA代表に対しても大いなる野望を抱いている。

「世代交代の流れが来るのを待つのではなく、自分たちからつかみ取りに行きたい。年齢は関係ないと思っているので」

2年9ヵ月ぶり出場の南野拓実が
森保ジャパン第1号得点者に

 小林の周囲で例えるなら衛星のように動き回った南野は、約2年9ヵ月ぶりとなった国際Aマッチが3試合目にして初先発だった。地震に襲われた北海道だけでなく、台風21号で大きな被害を受けた地元・泉佐野市を含めた大阪府、そして関西全体へ勇気と元気を届けたいと意気込んでいた。

「こういう状況でサッカーをやれていること自体がありがたいし、まだ物資が足りないような状況もある中で、こうして大阪で試合ができる。ザルツブルクでも昨シーズンや最近はトップやトップ下でのプレーが多いし、慣れているポジションなので手応えはつかめています」

 セレッソ大阪からオーストリアへ旅立ったのが2015年1月。地元で見せた成長の跡はチーム最多の5本のシュートであり、その中の一発を左足で強引にねじ込んだ後半21分の代表初ゴールだった。前半16分の先制点はオウンゴールだったから、南野が森保ジャパン第1号得点者となる。

 中盤でこぼれ球を拾ったMF遠藤航(シントトロイデンVV/ベルギー)が、ドリブルでボールを前に運んで中島へパス。フリーの「10番」は、自分を追い抜いてペナルティーエリア内へ侵入した遠藤へのスルーパスを選択。遠藤がノールックで折り返したパスに、走り込んできた南野が反応した。

「代表から遠ざかっていた期間は悔しい思いもしたけど、ここからだと思っています。まだまだ足りないと思っているし、今日も全然満足していない。ただ、初戦で大事だったのは分かりやすい結果を残すことと何よりもチームが勝つことだったので、その点に関してはよかったと思っています」

8度も「楽しかった」を連発、
中島翔哉はチームの“攻撃スイッチ”をON

 そして、誰よりもまばゆい輝きを放った中島も、国際Aマッチ出場3試合目にして初先発だった。ハリルジャパンの最後の活動となった今年3月のヨーロッパ遠征。デビューを果たしたマリ代表戦で初ゴールをゲットするも、ロシア大会に臨む代表メンバーの中に食い込むことはできなかった。

 中島を高く評価していたヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、4月に入って電撃解任されたことも中島にとってはマイナスに働いた。急きょバトンを引き継いだ西野朗監督は極めて時間が限られている状況下で、A代表における経験と実績を重視したメンバーを編成する決断を下した。

「でも、そこまで悔しいという感じはあまりなくて。ロシア大会中は家族とたくさんの時間を過ごせたので本当に幸せでしたし、今はこれからの4年間のこともあまり考えていない。今の自分にできる限りのいいプレーをして新しいチームの力になり、勝利に貢献するだけだと思っています」

 試合後に中島が「楽しかった」を連発した時は、決まって最高のパフォーマンスを演じている。コスタリカ戦後の取材エリアでは、7分あまりの間に8度も「楽しかった」と口にした。実際、コンビネーションが熟成されていない森保ジャパンで、攻撃のスイッチを入れ続けたのが中島だった。

 左サイドハーフの位置でボールを持つと、これでもか、とばかりに1対1を挑み続けた。フェイントを繰り出したかと思えば急停止し、次の瞬間、中央へ切れ込む得意の形でマーカーを子ども扱いするように翻弄する。時にはそのまま縦へ抜け出し、後半に入ると味方も巧みに使い出した。

 まさに無双状態。中島が動き出せば南野、堂安、小林が連動する流れがいつしか生じた。自然とボールも「10番」に集まってくる。4年後のカタール大会へ向けて、新たなエースが誕生したと思わずにはいられない一挙手一投足。それでも、ピッチを離れれば謙虚で朴訥な人柄が顔をのぞかせる。

「サッカーはやっぱりゴールを奪うスポーツなので、それは積極的に狙っていきたいと思っていたし、それを求められて試合にも出ていると思うので。できるだけチャンスを作り、シュートを打ちにいこうと思っていました」

「若手三銃士」が森保ジャパンの象徴、
そして、世代交代の旗印になる

 もっとも、森保監督はただ単に「自由」をテーマとしていない。昨シーズンのJ1得点王で、今月23日には31歳になるベテラン、小林を最前線に配置した選手起用に、A代表における経験が乏しい「若手三銃士」に対する配慮が見え隠れする。

「みんな本当に自信を持っている、肝が座っている、というのが最初に感じたことでした。僕が若い時はこれほどやれなかったし、すごく感心しました。世界でやっているだけあるな、と」

 限られた練習時間の中で、小林は若くして海外へ飛び立った後輩たちとの「違い」を間近で感じた。その上で味方のパスを引き出す動きを繰り返す、フォワードとして体に染みついたセオリーをあえて捨てたほうがいいという結論に達したという。

「とにかく技術が高いし、局面も打開できる。そこで自分がちゃんとしたところで待っていればパスが来る、という印象ですね。ドリブルを仕掛ける選手のためにわざとスペースを空ける、変にフォローにいかずに勝負させたほうがチャンスになるといった特徴はつかめたので、自由にやっていいよ、と練習から言っています。若さゆえのエネルギッシュなところが彼らの魅力だと思うので」

 遠藤の縦パスをジャンプした小林が胸で落とし、以心伝心で走り込んできた南が右足を一閃する。相手GKのファインセーブに阻まれたものの、前半39分に飛び出したビッグプレーはそれぞれが発揮した最大の「個」が、実戦の中で極上のハーモニーを奏でるに至った証となる。

 7日に韓国で国際親善を戦っていたコスタリカに蓄積された疲労。何よりもロシア大会にも出場したコスタリカが新監督の下、若手中心のメンバーで臨んできた点は差し引く必要があるが、それでも胸のすくようなサッカーを介して日本中に元気と勇気を届けた90分間は大きな価値がある。

 森保監督も今後は、3バックの封印を解くはずだ。ロシア大会で躍動した主軸たちも順次復帰してくる。それでも「自由」を触媒としながら異彩を放ち続けた「若手三銃士」は森保ジャパンの象徴となる可能性を示しただけでなく、新生日本代表に求められる世代交代の旗印も担っていく。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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