2018年9月11日、インテルは「コンピュータービジョン」の動向とインテルが提供する「OpenVINOツールキット」に関する説明会を開催した。登壇した米インテルのジョナサン・バロン氏は、幅広いAIポートフォリオとコンピュータービジョンの開発を推進するOpenVINOのメリットをアピールした。
デバイスからクラウドまで一気通貫で提供するインテル
コンピュータービジョンはいわゆる「IoTの目」にあたる技術で、写真や動画から必要な情報を取り出す画像センシングなどを指す。冒頭、登壇したジョナサン・バロン氏は、2023年までにこのコンピュータービジョンの市場規模が173.8億ドルに拡大し、ディープラーニングや動画解析の市場も急速に成長するとアピールした。その背景としては、IPビデオの価値増大やセキュリティアプリケーションの成長といった市場要因のほか、画像品質やネットワーク帯域が向上したり、動画解析の進化といった技術的な要因もあるという。
いわゆる「ビデオ」から「ビジョン」へという進化にはネットワーク化(Connected)、インテリジェント、自律化という3つの背景がある。昨今、カメラはネットワークにつながるだけではなく、お互い通信できるようになっている。また、写真の中の事物を追跡し、認識するだけでなく、一連の処理を自律的に動作させることが可能になっている。こうしたビジョンとAIは流通、製造、交通、スマートシティ、医療など、さまざまな産業に大きな変革をもたらしている。
インテルもこうしたコンピュータービジョンに対して強くコミットしており、AI分野におけるリーダーシップとなっているほか、クラウドからエッジまでインテリジェンスを分散させることができるという。「デバイスからクラウドまで幅広いポートフォリオをもっている企業がインテルしかない」とバロン氏はアピールする。
コンピュータービジョンの開発を推進する「OpenVINOツールキット」
インテルではスマートカメラやビデオレコーダー、サーバー、データセンター、クライアントまで幅広いAIソリューションを持っており、チップに関してもCPUだけでなく買収したアルテラのFPGAやビジョンプロセッサユニット(VPU)の「Movidius」という2つのアクセラレーターを提供しているという。
また、コンピュータービジョンでの開発を推進するツールキットとして、インテルは昨年から「OpenVINO(Open Visual Inference&Neural Network Optimizetion)」を提供している。OpenVINOでは、TensorFlow、nGraph、MXNet、Caffeなど幅広い推論フレームワークに対応するほか、既存のコンピュータービジョン向けにはOpen CV、ダイレクトコーディングに向けてはOpen CLなどに対応する。
OpenVINOを使うことで、CPUは既存の2倍の性能を引き出すことができるほか、インテルFPGAでは既存のCPUの約1.4倍、Movidius VPUでは既存の組み込みチップの約5倍の推論性能を実現するという。また、AWS GreenGlassを搭載したデバイスと連携し、機械学習の推論をエッジ側で実行することも可能だという。
OpenVINOはAgentVI、Dahua、Dell、GE Healthcare、Hikvision、Honeywellなどで導入されており、医療用画像診断の性能を向上したり、サポートするカメラの台数自体を増やすことが可能になったという。OpenVINOは無償でダウンロードして利用できる。