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最大40個のデバイスと最大300mの長距離通信が可能、工場や病院、学校などですでに活用中

BLE IoTデバイスの課題を解消、BluetoothルーターのカシアCEOに聞く

2018年07月23日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 東京エレクトロン デバイス(TED)は2018年6月、米カシア・ネットワークスが開発/製造する「Cassia Bluetoothルーター」の取り扱いを開始した。1台あたり最大40個のBluetooth Low-Energy(BLE)デバイスと、最大300メートルの距離で双方向通信ができるという製品だ。複数台のルーターを設置し、そのエリア内にあるすべてのBLEデバイスを一元管理することもできる。

 海外ではすでに、数千台規模のBLE IoTセンサー/ビーコンを導入する工場や学校キャンパス、病院/介護施設などで活用が始まっているという。今回、カシア・ネットワークス CEOのフェリックス・ツァオ氏が来日したのにあわせ、Cassia Bluetoothルーター/コントローラーの特徴や技術、導入事例、エッジコンピューティングへの展開などを詳しく聞いた。

米カシア・ネットワークス(Cassia Networks)創業者兼CEOのフェリックス・ツァオ(Felix Zhao)氏。15年前まではシスコシステムズでセンサーネットワークの研究をしていた
「Cassia Bluetoothルーター」の本体。屋外設置が可能な防水防塵の「X1000」(左)と、屋内用「E1000」(写真ではE1000にUSB LTEモデムを装着している)

短距離/1対1接続というBLEデバイスの「先入観を変えたい」

 カシア・ネットワークスは4年前、2014年に米国シリコンバレーで創業したベンチャーだ。現在は中国にも開発子会社を持ち、すでに北米/欧州/中国市場でBluetoothルーターを販売している。2016年の米CES(Consumer Electronics Show)でコネクテッドホーム部門の「Best of CES」を、また2017年CESでは「Innovation Award」を受賞している。そして今回、TEDを通じて新たに日本市場でも展開することになった。

CassiaのBluetoothソリューションはIoT導入を簡単にし、イノベーティブなアプリケーション開発も可能にする

 Cassia Bluetoothルーターは、前述したとおり最大40個のBLEデバイスと接続して、無線LAN(Wi-Fi)、有線LAN、3G/LTE回線とのルーティングを行う装置である。PoE給電に対応する屋外設置用の「X1000」、屋内設置用の「E1000」などをラインアップしている。なお、「最大40個」というのは双方向通信を行う場合の上限値であり、BLEセンサー/ビーコンからのデータを受け取るだけ(一方向通信)の場合は100個以上を接続できるという。

 もうひとつの特徴が、BLEデバイスと最大300メートルの長距離通信を可能にしている点だ。これにより、工場や病院施設、キャンパスなど広いエリアをカバーして、ウェアラブル端末などの移動するデバイスとの通信を容易にできるようにする。

 カシアを創業してBluetoothルーターの開発に取り組んだ理由について、ツァオ氏は「BluetoothはとてもIoT向きな通信規格だが、制約も多かった」からだと語る。BluetoothはWi-Fiよりも消費電力がずっと少なく、一方でZigBeeよりもずっと普及している。「昨年度のデバイス出荷台数はWi-Fiがおよそ20億個、ZigBeeが300万個、そしてBluetoothは40億個だ」(ツァオ氏)。

 しかし、身近にあるBLEデバイスを見てみると、たとえばワイヤレスマウス/キーボードやスピーカー、スマートウォッチなど、「数メートルの距離で」「PC/スマートデバイスと1対1で接続する」ことを前提としたものばかりだ。センサーネットワークを研究してきたツァオ氏は、ここに変革を起こしたいと考えた。

 「現在のBluetoothは『“ラスト1メートル”を接続するもの』で『デバイスをリモート操作することはできない』といった先入観をもって捉えられている。この見方をくつがえして、もっとクリティカルな業務用途でもBLEデバイスを活用できるようにしたいと考え、Cassia Bluetoothルーターを開発した」(ツァオ氏)

Bluetooth/BLEは省電力、低コスト、オープンなどIoTに適した特徴を持つが、通信距離の短さ、1対1のペアリングなどの課題も抱えていた

 ちなみに、一般的なBLEデバイスは最大でも10メートル程度の通信距離しかサポートしていないが、Cassia BluetoothルーターではBLEデバイス側を一切変えることなく、より長距離な通信を可能にしている。どういう技術でそれを可能にしたのか尋ねたところ、ツァオ氏は「独自技術のスマートアンテナ」「ルーターの感度増強」「干渉ノイズレベルの削減」の3点だと答えた。同製品の筐体は法人向け無線LANアクセスポイントと同程度のサイズだが、その大部分は大型の内蔵アンテナが占めているという。

大規模IoT環境向けコントローラー、エッジコンピューティングもサポート

 もうひとつ、複数台のルーターを設置する大規模環境向けの製品として、管理コンソール「Cassia IoTアクセスコントローラー」も用意されている。このソフトウェアを通じて100台以上のルーター、数千個のBLEデバイスを一元的に管理/コントロールできるほか、ルーター間でのデバイスローミングやロードバランシングといった通信環境の制御も行う。提供されるSDKを使ってこのコントローラーにAPI接続し、そのデータを活用するアプリを開発することも可能だ。

「Cassia IoTアクセスコントローラー」のWebインタフェース(ダッシュボード)。同サーバーはオンプレミスにもクラウドにも配置が可能

 アクセスコントローラーを導入することで、たとえばファームウェアの一括アップデートができるほか、新規デバイスのペアリング、新規ユーザーの登録といった作業もまとめてこなすことができるようになる。

 また3台以上のルーターがあれば、いわゆる三角測量の方法でリアルタイムにBLEデバイスの位置情報を取得することもできる(誤差5~10メートル程度)。アクセスコントローラーにあらかじめマップを登録しておけば、管理者はそのマップ上で各デバイスの位置を確認することが可能になる。たとえば工場内での現場作業員の居場所確認や、病院でのアセット管理などに活用できる。

デバイスからのデータ収集に加えて、デバイスの位置情報取得も可能だ

 加えてツァオ氏は、Cassia Bluetoothルーターおよびアクセスコントローラーでは「エッジコンピューティングもサポートしている」と説明した。両製品がサードパーティ製アプリをルーターやコントローラーにインストールできる仕組みを備えているため、エッジ(現場)側でデータ処理やデバイスコントロールができるわけだ。実際に、米国ザンコンピュートが販売するスマートビルディングソリューションでは、Cassia Bluetoothルーターにインストールされたアプリがセンサーデータを処理し、障害発生など重要なデータだけをクラウドに転送する仕組みをとっているという。

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