COMPUTEXでは見事に姿を消した8コアのCoffee Lakeであるが、やっと出荷時期などが決まったようで、いろいろ情報が流れてきたので、このあたりでまとめておきたい。ただその前に余談というか直接関連しない話を2つ紹介しよう。

第9世代Coreプロセッサーとなる8コアのCoffee Lake
今年中にCascade Lakeを投入
その後継はCooper Lakeと判明
まず8月8日、インテルは2018 Data-Centric Innovation Summitというイベントを開催、ここでXeonを中心としたソリューションの紹介や今後の展望などを説明したが、この中で同社のJim Keller氏(Senior VP, GM, Silicon Engineering Group)により2020年までのXeonのラフなロードマップが示された。
内容は、連載464回で紹介した通り、2019年中は引き続き14nmを使った製品が投入されるという話で、新たにCooper Lakeというコアが投入されることが発表された。また今年中(第4四半期なので10月以降)にCascade Lakeが投入されることも発表になっている。
まずCascade Lake、連載253回で触れた時には新たに“Protective walls”(保護障壁)を搭載すると説明したが、これに加えてVNNI(Vector Neural Network Instruction)が追加されている。
これはおそらく、インテルがKnights MillことXeon Phi x205で搭載したAVX512命令の拡張を指すものと思われる。もともとKnights MillはKnights Landingをベースに、AVX512_4FMAPS/AVX512_4VNNI/AVX512_VPOPCNTDQという、DNNの演算に最適化した命令セットを追加することで、DNNのピーク性能をKnights Landing比で2倍にしている。
ほかにもOptane DC(Optane Memoryを搭載したNVDIMM)のサポートや、より高い動作周波数なども相違点として挙げられているが、内部構造に関わる部分ではProtective wallとVNNIの2つのみが差となる。
一方、続くCooper Lakeは新たにbfloat16のサポートが追加されるとする(おそらくAVX512命令への追加であって、x87への追加ではないだろう)。bfloatは連載468回で説明した浮動小数点の話の中には出てこない。
ここで近いのはBinary16(仮数部11bit、指数部5bit)だが、bfloat16の場合は仮数部8bit、指数部8bitになる。つまり、「精度は落としてもいいけど、扱える桁数はFP32(仮数部24bit、指数部8bit)と同じだけ欲しい」というニーズに応えたフォーマットである。これにより、ダイナミックレンジ(=扱える桁)を落とさずに、FP32の倍のスループットで演算が可能になる。
もう1つ興味深いのは、このCooper LakeはIce Lakeとプラットフォームが互換になることだ。逆に言えばCascade Lake→Cooper Lakeではプラットフォームの変更がともなうわけだが、現時点ではこれが単にVRMの仕様が変わる程度の話で済むのか、それともソケットまで変わるのかははっきりしない。ただ2019年のタイムフレームでは、まだメモリーはDDR4のままと思われるので、ソケットまで変える意味が不明である。
かつてのスケジュールではDDR5の標準化は今年中に完了するはずだったが、もう少しずれ込みそうという話が出ている。また仮に今年中に標準化が終わったとしても、2019年中は良くてエンジニアリングサンプルどまり、まともにDDR5の製品が出てくるのは2020年以降になるだろう。
強いて言えばこのCooper Lakeの世代ではI/OがPCI Express Gen4に対応する(公式にサポートするかどうかはともかくとして、PHYそのものはGen4対応の物が入る)のは確実なので、これに合わせてLGA3647v2などにマイナーアップデートが行なわれる可能性はあるかもしれない。

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