5Gスマホは新幹線ではつながりにくい? ハンドオーバー実験の競争
5Gは、10Gbps程度の通信速度を実現すると言われているが、「高速で使える」というのは何も通信速度に限った話ではない。高速に移動する環境でも、5Gが使えるようにと実験が進んでいるのだ。
たとえばサムスン電子とKDDIでは、2017年8月に韓国のサーキットにおいて、時速192キロで走行しているクルマに対し、ハンドオーバーしながら5G通信を継続するという実験に成功している。
このハンドオーバーというのは、走行しているクルマが通信している基地局から離れ、別の基地局に近づいた場合、通信を持続させながら、通信する基地局を切り替えていく作業のことを指す。まるで順々にデバイスと基地局が手をつなぎながら通信するため、「ハンドオーバー」という言われ方をされている。
4Gで使われているような800MHzなどの低周波数帯と比べて、5Gは特に28GHz帯という高周波数帯の場合、電波が弱まりやすいため、ビームの幅を絞り、電力を集中することで電波が届く範囲を延伸する「ビームフォーミング」という技術を活用する。
しかしビームフォーミングを活用すると、ビームの幅が狭くなってしまうため、基地局は動きつづけるデバイスを正確に補足し、電波を当て続けなくてはならない。そのため、ハンドオーバーの実現は難しい技術とされていた。
そんななか、KDDIとサムスンは2017年2月に東京都内で最高時速60キロで走行するクルマに対してのハンドオーバーに成功。さらに2017年8月に韓国で最高時速192キロに成功したのだった。
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だが、「KDDIには負けてはいられん」と対抗心をむき出しにしたのがNTTドコモだった。
超高速移動環境を実現するため、NISSAN GT-Rに5Gのアンテナやシステム、4Kカメラなどを搭載しただけでなく、搭載装置類の重量やバランスをチューニングした専用のマシンを開発。2018年4月に日本自動車研究所のテストコースで時速305キロで走行するクルマに対して、5Gの無線データ通信転送に世界で初めて成功したのだった。
ハンドオーバーに関しては、時速290キロでの速度での実験に成功。さらに、時速200キロで走行するクルマから、4K映像を無線ライブ中継するという実験も世界初で実現している。
正直な話、日本の高速道路でクルマを走らせた場合、どんなに頑張っても、制限速度が普通車の場合で時速100キロなので(一部除く)、時速300キロでの5G通信やハンドオーバーなんてオーバースペックのように思われる。
確かにクルマでの利用を考えれば、時速300キロなんて必要ないのだが、これが「電車」とならば話は変わってくる。
東海道・山陽新幹線であれば、時速300キロというのは営業的には当たり前の速度であるし、2017年に開業を計画するリニア中央新幹線では時速500キロが想定されている。
KDDIと東日本旅客鉄道が、在来線試験電車を使って、時速100キロでの5G通信実験をした実績があるものの、やはり新幹線を使っての5G実験というのが難しいとされている。
そのため、将来的に新幹線でも5G通信が難なくできるようにと、各キャリアではクルマをサーキットで走らせて、ハンドオーバー実験に余念がないのだ。