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月額会員制カフェが人気、飲食業界で「定額制」がはやる理由

2018年06月12日 06時00分更新

文● 真島加代[清談社](ダイヤモンド・オンライン

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近年、注目を集めている「定額制サービス(サブスクリプション)」をご存じだろうか。その名の通り毎月決まった金額を支払うことで、さまざまなサービスを受けられる、というもの。電子書籍の「アマゾンアンリミテッド」や音楽ストリーミングサービス「Spotify」など、さまざまな定額サービスが登場するなか、ついにコーヒーの飲み放題を実現した定額制カフェが登場し、人気を集めているという。(清談社 真島加代)

異業種も参入して顧客を奪い合い
「定額制カフェ」登場の背景とは

定額制カフェが続々と登場している
カフェはもちろん、居酒屋にも出てきた「定額制サービス」。背景には、業種の垣根を超えての顧客の奪い合いがある(写真はイメージです)

 プロが入れてくれたおいしいコーヒーを、好きなときに好きなだけ飲みたい…コーヒー好きの人ならば、一度はそんな夢を抱いたことがあるのではないだろうか。じつは近年、そんなコーヒー愛好家の夢をかなえてくれるコーヒー飲み放題サービスを提供する「定額制カフェ」が都心に登場し、話題を呼んでいる。

 定額制カフェとは、一定の月額料金や会費を支払うことで、コーヒー飲み放題や店舗のメニューが割引になる、などのサービスを提供する店のこと。ユーザーにとってはうれしいかぎりだが、材料費がかかる飲食業界では敬遠されそうなサービスに思えるが……?

「定額制カフェが登場した背景には、経営とマーケティング環境の変化や、競争環境の激化が関わっています」

 そう話すのは、経営・マーケティングコンサルタントの新井庸志氏(HPはこちら)。新井氏によれば、定額制カフェが生まれた背景には、外食産業だけでなく小売業界をも巻き込んだ、大きな市場の変化によって、新たなサービスを提供せざるを得ない状況があるという。

「いまや、カフェの競合相手は、同業のカフェだけではありません。数年前から、マクドナルドやコンビニエンスストアもコーヒーに力を入れているように、異業種が参入していることで、競争相手が増加しています。近年では、居酒屋業界でも同じことが起きています。ちょい飲みブームによって牛丼屋やラーメン屋、ファミリーレストランなどでもアルコールを提供するようになりました」(新井氏、以下同)

 このように、業種の垣根を越えて顧客の奪い合いが発生しているなかで、カフェ業界に一石を投じたのが、コーヒー飲み放題を打ち出した「定額制カフェ」だという。

飲食店が恐れる閑散期「ニッパチ」も
定額制にすれば怖くない

「顧客を奪い合うなかで、ユーザーの囲い込みを目的としたマーケティング手法が増えてきました。そこで、月額会員を募ることでユーザーを囲い込み、安定的な売り上げを確保しようと考えるカフェが登場したのです。飲み放題サービスで注目を集めている『coffee mafia』や『ALPHA BETA COFFEE CLUB』にお話をうかがったところ、どちらの利用者も近隣の住民や勤務地が近いビジネスマンの方々が大半を占めているそうです」

 競争環境の激化によって生まれた「定額制カフェ」。月額会員の囲い込みに成功したとしても、コーヒーを飲み放題にすることで売り上げに影響はないのだろうか。

「定額制は、月ごとの売り上げのムラを抑えられるので、むしろ店側にとっては大きなメリットになるのです。前出のcoffee mafiaは『2月、8月の売り上げが落ち込みにくくなる』点にメリットを感じているとのことでした」

 2月と8月といえば、売り上げが下がりやすいため、多くの飲食店が頭を抱える閑散期だ。しかし、月額会員のユーザーを獲得することができれば、季節に関係なく安定した売り上げを得ることができる。

 また、前出のALPHA BETA COFFEE CLUBの場合は、月額会員の売り上げよりもサイドメニューでの売り上げのほうが多い、という結果が出ている。「飲み放題のコーヒー以外にサイドメニューの併せ買いをしてもらえる」という点がメリットになっているようだ。

定額飲み放題居酒屋も登場!
定額制サービスはどこまで広がるか

「消費者が商品の購入を決める過程において、『品質』や『価格』とともに『体験』や『サービス・おもてなし』といった要素も重視するようになりました。coffee mafiaからは『会員制のおかげでお客さまとのコミュニケーションが取りやすい』といった声も上がっています。定額飲み放題で、顧客の来店頻度を増やす仕組みを取り入れることで、店側と顧客のコミュニケーションが密になり、顧客満足度の向上にもつながっているようです」

 もちろん、消費者にとっても「勤務先や自宅の近くで、満足度の高いおいしいコーヒーを、好きなだけリーズナブルに楽しめる」というメリットは大きい。定額制サービスは双方が得をするウィンウィンの関係を作り出すのだ。

 新井氏は「『定額制サービス』は、今後も業界の垣根を越えて拡大していくはず」と予測する。たしかに、先日も居酒屋業界大手のアンドモワが、業界初の「月額定額制飲み放題サービス」を開始し、話題になったばかりだ。

「マーケティングの観点から見ても、定額制サービスは企業にとって理にかなっています。日本の人口は減少傾向にあるため、これまでと同じ広告費を投下しても費用対効果が悪くなっていくのは明白。それに伴い、広告の手法も『常に新規顧客を獲得する手法』から『既存顧客に継続的にお金を落としてもらえる方法』へと変化しているのです。しかも、後者の場合は広告費を抑えられる、という大きなメリットもあります」

 顧客を囲い込むだけでなく、広告費用の削減にもつながる「定額制サービス(サブスクリプション)」は、今後も業界を超えてキーワードとなるはずだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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