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目的はドキュメントの共有ではなく「アイデアの共有」、製品責任者に聞く

Dropbox Paperの開発では「思考に集中できるシンプルさ」を考えた

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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「フォントは1種類のみ、文字色は黒だけ」選択肢を減らすことの意味

 「アイデアを書き出すことに集中できるように、シンプルなツールにした」というラダクリシュナン氏のコメントどおり、Paperでは一般的なドキュメント編集ツールが備える機能の多くを切り捨てている。たとえば画像幅やテーブル幅の調整など、表示調整の大半は自動化されており、細かな調整はできない。そのぶん、ドキュメントが出来上がっていくスピードは速い。編集作業を高速にこなすためのキーボードショートカットも豊富に用意されている。

――実際にデモを見るとよくわかりますが、たしかに「ドキュメントをきれいに仕上げる」ためのツールではなく「アイデアを生み、共有する」ためのツールですね。

ヴァーナー氏:Paperでは、とにかくシンプルにすることにこだわっています。たとえばテキストのサイズは3種類(大見出し、中見出し、本文)しか選べませんし、フォントは1種類のみ、文字の色は黒だけです。

 選択肢を少なくしてシンプルにすることによって、ユーザーが伝えたいアイデアやイメージ、コンテンツのほうに集中できると考えています。

――PowerPointのような「ページ」という概念がないのも、作業に集中するうえではいいでしょうね。

ラダクリシュナン氏:ページがないのは、アイデアを「ひとつの流れ」として残すという意味もあります。とにかく思考の流れを邪魔しない、途切れさせないよう、スムーズに作業してもらうことを意識して開発しています。

 新機能の追加にあたっても、その目的をよく検討したうえで追加の優先順位を決めています。長年開発が続いてきたツールには、機能追加が繰り返された結果、機能がリッチになりすぎてしまっているものもあります。われわれの考え方は、「機能(の数)が20%でも、それで80%のユースケースをカバーできるならば、その20%にフォーカスする」というもの。100%を盛り込もうとは考えていません。

――ところで、Paperの開発にあたってもPaperを使われたと聞きましたが。

ラダクリシュナン氏:もちろん! 初期段階のPaperを使いながら開発を進めました。

 現在ではDropboxの社内全体でPaperを活用しています。ミーティングの議事録作成からデザインスペックの検討、プロダクトマネジメント、業務のプランニングや予算書作成まで、全員のPCで何らかのPaperが開いています。今回のわたしの日本出張についても、プランを立てるためにまずはPaperを作りましたよ(笑)。

クリエイティブな業務を行うすべての人に使ってほしい

 最後に、Paperのターゲットや今後の目標などを聞いてみた。

――「Paperはクリエイティブ作業のプロセスを支えるツール」だとおっしゃいましたよね。ターゲットとしているユーザーはデザイナーなのでしょうか。

ラダクリシュナン氏:社内外のコラボレーションに多くの課題を感じているのがデザイナーなので、まずはデザイナーを意識しています。全体のうち20%から30%の機能は、特にデザイナー向けに開発したものです。

 ただし、デザイナーがチームを組み、コラボレーションするのはプロダクトマネジャーやコーダー、デベロッパー、マーケターなど幅広い職種のユーザーです。Dropboxとしては、デザイナーが企業へのエントリーポイントとなって、Paperの利用が広がっていくことを期待しています。

 また「クリエイティブな作業」というものも、決してデザイナーだけが行うわけではありません。Paperの利用が浸透していくのと同時に、クリエイティブな要素も社内に波及していくものと考えています。

――ストレージサービスのDropboxとの関係や、今後の連携はどうなるのでしょうか。

ラダクリシュナン氏:現在のDropboxは、コンテンツワークフローを支えるひとつのプラットフォームとして成長しています。Paperでアイデアを生み出して制作プロセスを進め、制作したものはDropboxで共有する。さらに、クライアントへの納品の際には、単にDropboxフォルダを共有するのではなく「Dropbox Showcase」で綺麗に整理してコンセプトを伝える。こうした一連の流れをカバーしています。

 今後はさらにDropboxとの、より深いレベルでの連携を計画しています。また、クリエイターがよく利用するワークフローツールなど、サードパーティツールとの連携もさらに拡大していきます。

 Paperの製品部門メンバーは皆、情熱的に開発的に取り組んでいて、ユーザーからのフィードバックもたくさん受けたいと思っています。洗練された新しいツールを試すのが大好きな日本のユーザーにももっとPaperを広め、フィードバックをいただきたいと思います。

――最後に、お二人がPaperで「お気に入り」の機能を1つずつ教えてください!

ヴァーナー氏:プレゼンテーションモードです。わたし自身、これがあるおかげでPowerPointのスライドを作ることがなくなりました。

ラダクリシュナン氏:プロダクトマネジャーとしては、すべての機能が自分の子どものようなものなので……うーん、「全部」ですね(笑)。

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