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“The Machine”ゆずりの最大48TBインメモリマシンが「宇宙の謎」解明を手助け

ホーキング博士のビッグバン研究に「HPE Superdome Flex」採用

2017年12月06日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が11月初旬に発売した「HPE Superdome Flex」は、同社ミッションクリティカルx86サーバーラインのSuperdomeでインメモリコンピューティングを可能にするプラットフォームだ。共有メモリプールの容量は最大48TBにも及ぶ。このSuperdome Flexを、英ケンブリッジ大学にあるスティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の研究所「Centre for Theoretical Cosmology(COSMOS)」が採用したという。

 11月末にスペインのマドリードで開催されたHPEのプライベートイベント「HPE Discover Madrid 2017」では、COSMOSでディレクターを務めるポール・シェラード氏、HPEのVPでSynergyとミッションクリティカルサーバー担当GMも務めるランディー・メイヤー氏が記者向けに説明を行った。

HPEでは今年8月にも、宇宙空間での耐久性を調べる目的でスーパーコンピューターを国際宇宙ステーションに送っている。宇宙研究との“縁”が続いていることから、HPE Discover会場には宇宙をイメージしたスペースも設けられた
英ケンブリッジ大 Centre for Theoretical Cosmology(COSMOS)ディレクターのポール・シェラード(Paul Shellard)氏HPE VP 兼 Synergy&ミッションクリティカルサーバー担当GMのランディー・メイヤー(Randy Meyer)氏

「巨大なデータが扱いやすく、プログラミングも簡単になる」

 Superdome Flexは、ミッションクリティカルワークロード向けの新しいインメモリコンピューティングプラットフォームだ。可用性は99.999%。HPEが「The Machineプロジェクト」として研究開発を進めているメモリドリブンコンピューティング(メモリ主導型コンピューティング)の技術要素が取り入れられており、48TBまで拡張が可能なメモリはシングルシステムデザインを持つ共有メモリプールであり、超高速インターコネクトを通じてアクセスできる。「最も拡張性のあるモジュラー型インメモリコンピューティング・プラットフォーム」だと、HPEのメイヤー氏は胸を張る。

インメモリコンピューティング向けに構成されたミッションクリティカルx86サーバープラットフォーム「HPE Superdome Flex」

 なぜCOSMOSはSuperdome Flexを採用したのか。COSMOSのシェラード氏は「データセットが膨大な量になり、データの種類もさまざま。この2つの問題を解決するためだ」とその選択理由を説明する。

 COSMOSは「時間」と「空間」についての研究機関であり、ホーキング博士はビデオの中で「(2016年に検出成功が報告された)重力波は、ブラックホールと宇宙全体について素晴らしい洞察をもたらす。このような新しいデータがある中で、柔軟かつパワフルなコンピュータシステムを使って研究を進め、基礎物理学における自分たちの理論を検証し、新しいコンセプトを探る必要がある」とコメントを寄せている。

ホーキング博士とCOSMOSが宇宙の謎を解き明かす(HPE公式チャンネルより)

 シェラード氏はホーキング博士の言葉を補足するように、「コンピューター上に“ミニ・ビッグバン”を作り、宇宙について予測している。そして実際のデータを見て、宇宙の起源を理論検証する」「重力波を決定するためにブラックホールを衝突させている」と、その取り組みを説明する。ただし、これまでデータ処理上の課題が大きくなるばかりで、新たなデータタイプに対応するソフトウェア開発も課題として加わっている。データ分析を少しでも高速にすることが、研究推進のために必要なことだという。

 COSMOSではこれまでSGI UVを使っていたが、上述した課題に対応するために、新たにSuperdome Flexや「HPE Apollo」、さらに「Intel Xeon Phi」搭載システムで構成されるスーパーコンピューター環境を構築した。「われわれの人的リソースは、プログラミングを維持するのに十分な人数だけだ。HPCシステムはスレッド、ノード、たくさんのメモリ階層があり、とても複雑だ」(シェラード氏)。

 新しい環境でインメモリコンピューティングを選択した理由について、シェラード氏は「イノベーションを加速させることができるから」だと答えた。「巨大なデータをメモリに取り込んで作業ができるだけでなく、データパイプラインを迅速に開発、デリバリし、拡張することもできる。プログラミングも簡単になる。加えて柔軟性があり、少人数でたくさんのことができる。――インメモリパラダイムはすばらしいものだ」(シェラード氏)。

 HPEのメイヤー氏は、そうしたニーズは学術研究機関だけでなく、企業顧客からも聞かれると語る。「Superdome Flexは継続的にイノベーションできるアーキテクチャになっており、柔軟にメモリやプロセッサを追加できる」(メイヤー氏)

 Superdome Flexの開発には、The Machineやメモリスタの研究開発に関わっていたスタッフが多くいるという。実装は「The Machineに似たもの」になっており、筆者が「これは“The Machine 0.5”と言えるか?」と聞いたところ、メイヤー氏の答えは「イエス」だった。

 シェラード氏は、インメモリコンピューティングの力で「理論を迅速に検証できる」と目を輝かせる。COSMOSとしてHPEに期待することも、「これからもインメモリのスケールアップを継続してほしい」ということだった。

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