「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」が六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーで11月1日から開催。日本の現代美術アーティスト28組が「あなたのドラえもんをつくってください」をテーマに作った作品を展示しています。2018年1月8日まで。個人的な注目はしずかちゃん(原作的にはしずちゃん)の裸です。
まずは、鴻池朋子さんの「しずかちゃんの洞窟(へや)」。
大きな皮緞帳(かわどんちょう)に描いたのは、赤いメスの狼にくわえられた全裸のしずかちゃん。しずかちゃんの周囲はカエルの卵、カナヘビ、ツバメ、カワウソなど生き物のモチーフで満ち、本物の毛皮でできた「四次元ポケット」がついた構成です。鴻池さんは「シラ — 谷の者 野の者」など、オオカミのイメージが強い作家さん。よく見ると全裸のスネ夫も浮かんでいて、かわいいです。
次に目に入ってくるのが、会田誠さんの「キセイノセイキ~空気~」。
しずかちゃんのシャワーシーンをテーマにした絵画ですが、裸のしずかちゃんは透明で、水の流れしか見えません。公式図録(2700円)掲載のインタビューによれば「強いて言いますと、コンセプチュアルであることが常態である現代美術の典型的な流儀くらいは、現代美術に詳しくないお客さんにも、わかりやすく示せたかな、と」。タイトルは無粋を承知でいえば“規制の世紀(性器)”ですね。
裸ではないですが、坂本友由さんの「僕らはいつごろ大人になるんだろう」。
モチーフは、映画ドラえもん「のび太の宇宙小戦争」。巨大化したしずかちゃんがぐっしょりと濡れ、スカートをぎゅっとしぼっています。原作に忠実に描くことを大事に考え、あえて原作に近い服を探し、モデルに着せて描いたそうです。「しずかちゃんはみなさんのイメージと違うかもしれませんが、僕のイメージはコレとして受け入れてほしいです」(坂本さん・公式図録より)
強引に今回のテーマに含めたいのは、しりあがり寿さんの「万事解決!劣化防止スプレーの巻」。
しずかちゃん・ドラえもん・のび太の3人を、フルヌードというか、棒人間のようなユルいアニメーションとして描いています。かなりインパクトがあり、放送局のカメラも殺到していました。「漫画のパロディーってけっこうあるじゃないですか。でもアニメーションのパロディーってまだあんまりなくて、それを御本家のものでできるって、すごいチャンスかも」(しりあがり寿さん・公式図録より)。物販でこの映像をあしらった自由なTシャツも売っていますのでご注目ください。
入り口に展示している村上隆さんの「あんなこといいな 出来たらいいな」も、裸のしずかちゃんとのび太くんを中央・下部分に配していますね。
現代美術作家である村上隆さんは、ドラえもんの漫画の世界に現代美術という文脈でアプローチ。作品制作中、ドラえもんの世界には芸術の歴史がちりばめられているという発見があったと話しています。「のび太くんとしずかちゃんの裸がありますが、それは芸術そのものの在り方の一つ、人間をどう取り扱うかという芸術の問題を表します」(村上さん・公式図録より)
ちなみにドラえもん展の会場に隣接するカフェ「THE SUN」で展示コラボメニューを出しているのですが、コラボスイーツに「しずかちゃんのバスプリンデザート」(1280円)というメニューがあります。「しずかちゃんの大好きなお風呂をプリンに!」という説明文がちょっとどうかしていて良いですね。
うっかりしずかちゃんの裸に目をとられてしまいましたが、ほかにも見どころがたくさんある展覧会です。写真家・梅佳代さんのクスッときて余韻が残るとても良い写真「私の家のドラえもんの写真」、奈良美智さんの「ジャイアンにリボンをとられたドラミちゃん」などもぜひ見てもらいたいと思います。
なお今回の展示は原則撮影OK、記録代わりに写真が撮れます。ただ、写真を撮るよりもまずは展示と直接向き合ってほしいです。芸術的なしずかちゃんの裸をスマホごしに見るなんてもったいないですからね。
THE ドラえもん展 TOKYO 2017
開催期間 2017年11月1日(水)~2018年1月8日(月・祝) ※会期中無休
場所 森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ森タワー52階)
住所 東京都港区六本木6-10-1
料金 一般1800円 中学生・高校生1400円 4歳~小学生 800円
(C)Fujiko-Pro