まだ開発段階のCannon Lakeは
10nmプロセスが難航し1年遅れ
次はCannon Lakeについて説明しよう。連載411回でも少し触れたが、これに加えて今年9月に北京で開催されたTechnology and Manufacturing Day in ChinaにおいてはインテルのStacy Smith氏がCannon Lakeのウェハーを示すなどして順調ぶりをがんばってアピールしていた。
ちなみにそのTechnology and Manufacturing Day in Chinaでの発表そのものは、今年3月に米国で行なわれたものとほとんど内容は同じであって特に目新しい話はないのだが、1つだけ気になったポイントがある。
インテルSenior Fellow兼Manucactureing Group DirectorのMark Bohr博士による基調講演の最後にロードマップが出てきたのだが、10nm世代が“Development”(開発)に分類されていることだ。
3月のKaizad Mistry氏(VP, Technology and Manufactureing Group, Co-Director, Logic Technology Development)の講演の最後では、まとめとして「インテルの10nmプロセス技術は、2017年後半に量産に入る」と明確に述べている。
9月といえばもう2017年後半のど真ん中であり、ここで量産(Manufactureing)ではなく開発(Development)というのは尋常ではない。もちろん、量産に入る直前までは開発フェーズなのであって、たとえば12月31日に量産を開始したとすれば、12月30日までは開発だと強弁することは可能であるが、あまりそういう言葉の使い方をインテルはしない。
ここから推定できるのは、少なくとも3月の段階では10nmプロセスの量産を今年中に開始するつもりだったのが、9月の段階では後送りになったことが確定した、ということだ。
これは、台湾Digitimesも9月に報じている。こちらはCannon Lakeを採用することを考慮していたベンダーからの情報を基にしたレポートであるが、こちらによれば1年遅れることになるという。
実は、同種の話を別の筋からも聞くことができた。これはインテル ファウンダリーの10nmプロセスを検討していたSoCベンダーが、他のファウンダリー(一番有力なのがTSMCの12FFCらしい)に切り替えている最中、という話である。
理由は同じで、10nm世代での提供時期が1年遅れるので、製品スケジュールが合わなくなるからだそうだ。つまり問題はCannon Lakeではなく、10nmプロセスそのものにあると思われる。
ここまでくると、はっきり言って年内のCannon Lake投入はかなり絶望的になった。数量を猛烈に絞って、なかばES品を出すような感じにしても、果たしてどこまで出せるかというところだ。
似た話は14nmの立ち上がりの時にもあったが、この時にはYield(歩留まり)とSpeed Yield(どの程度の周波数で動作するかの平均値)の両方がとにかく低かったので、出荷量もごくわずかで、ターゲットも省電力のYシリーズのみに絞ることでとりあえず「出荷した」という実績をまず作った。
その後プロセスを改善してBroadwellの量産出荷を開始、ついでアーキテクチャーを14nmプロセスにあわせ込んだSkylakeで大量出荷、という形でつないできた。
ところが10nmに関しては、今の情報を見る限りはまだYieldやSpeed Yieldを問題にする以前の段階に見える。1年遅れる、というのはなにかしら仕切り直しが入ったとしか思えない。
となると、2017年中に出てくるのは、まだES以前のシリコンと言うことになるわけで、さすがにこれを出荷するのは無理であろう。以上のことから今年中にCannon Lakeを見ることは絶望的である。
それでも今年はまだ良い。Kaby Lake Refreshもあるし、デスクトップはCoffee Lakeも出たばかりである。問題は来年で、デスクトップ向けも10nmに移行の予定だったのが、これも1年遅れることになる。またモバイル向けも、35/45WのHシリーズにアップデートがないことになる。
このままではCoffee Lakeを無理やりモバイル向けに持ってきたり、デスクトップ向けのCoffee Lake Refreshが出るという騒ぎになりかねない。おそらくインテルの中ではそのあたり、真剣に頭を抱えている最中ではないかと思うのだが、どういう落とし所になるのか気になる部分だ。
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