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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第415回

7FFプロセスは今年後半、7FF+は2019年に量産 TSMC 半導体ロードマップ

2017年07月10日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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7FFプロセスは今年後半に本格量産開始

 これに続くのが7nm世代である。最初のプロセスである7FFはすでに今年4月からRisk Productionが始まっていることが明らかにされており、順調であれば今年後半、それもやや遅い時期に量産がスタートすると思われる。

 年内にはさらに20以上のテープアウトが予定されているそうで、Volume Productionに入るのは2018年前半だろうか。これに続くのが7FF+で、こちらは2018年後半にAvailableになる、とされている。いろいろ突っ込みどころの多い話ではあるが、順に説明していきたい。

 まず7FFと7FF+の違いについて。最大の違いは露光である。7FFは、ArF+(フッ化アルゴン)液浸という従来の露光プロセスをそのまま利用して露光するが、7FF+はEUV(Extreme Ultraviolet Lithography:極端紫外線リソグラフィー)を使っての露光である。

 この結果、配置配線というか物理設計に関して、現実問題として2つのプロセスの間に互換性がない。ArFを使う場合、7nm世代ではQuad Patterningが必要である。要するに全体のパターンを4回に分けて露光の手順を取るというものだ。

 このために必要な工夫が“Color”である。これは、隣り合う配線に別々の“色”を割り当て、色が重ならないように工夫する必要がある。こう書いてもわかりにくいと思うので例を挙げよう。

 下の写真の左はTriple Patterningの例で、この場合はカラーが3色となるのだが、手前の拡大部で、ピンクとオレンジと緑が、隣り合わないようになっているのがわかる。

ARM Technical Conference 2016におけるSynopsisとサムスンのセッションより。これはサムスンの10nmプロセスをSynopsysのツールでサポートするという実例だ

 これが隣り合うとどうなるかというと、パターンが崩れてくっついてしまったりする可能性が高いためである。このカラーリングは以前からあり、16nmまではDouble Patterningということで2色で済んでいたのが、10nmではTriple、7nmではQuadとどんどん色数が増えていっている。

 話を戻すと、7FF用のマスクはこのQuad Colorに対応したものになる。ところが7FF+ではEUVを使うことで、Double Patterningで済む。つまりDouble Colorに対応したマスクで済むわけで、マスクそのものがまったく異なることになる。

 当然最適化をかけると、物理的な配置配線が変化することになるので、新規にやり直しになる。実際TSMC自身もEUVレイヤーに関しては再設計が必要、と明確に説明している。

 ただ現実問題として再設計した結果として物理的な位置が変わると、当然配線層も影響を受けるわけで、現実問題として全部再設計に近いと思われる。

大本命の7FF+は
7FFより性能が10%向上

 7FFと7FF+の性能だが、TSMCによれば7FFは以下のようになるという。

  • 16FF+に比べて消費電力が60%削減され、性能が30%向上、エリアサイズを70%削減できる
  • 10FFと比べると消費電力が40%弱削減され、エリアサイズを37%以上削減できる

 一方、7FF+の性能は、以下のようになる(10FFとの性能比較は不明)。

  • 7FFに比べて性能を10%向上させられ、エリアサイズを15~20%削減できる(消費電力は不明)

 どうみても本命は7FF+ということになる。実際、先にテープアウトが年内に20以上と書いたが、7nmを待ってるデザインは20どころか100では効かないほどあるにもかかわらず、たった20しかないというあたりが7FFの問題である。

 ちょうどTSMCの16FFと同じように、16FF+を待ちきれないものだけがやむなく16FFを使ったのと同じように、7FF+を待ちきれない製品だけが7FFで製造しようとしている、という感じだ。つまり7nm世代で製造と言っているほとんどの製品は7FF+と予測されることになる。

 問題は、その7FF+がいつ出てくるかである。TSMCは7FF+について先に書いたとおり2018年にAvailableとしているが、これはおそらくRisk Productionのこと。量産開始は早くて2019年初頭、本格量産は2019年後半と予測される。

 ここで鍵を握るのはEUVの露光装置である。EUVに関してはオランダのASMLが現在のところ唯一の装置メーカーになってしまっており、そのASLMの7/5nm世代向け露光装置のNXE:3400Bが、今年中に出荷を開始することが明らかにされている。

 NXE:3400Bは、設計では1時間あたり125枚のウェハーを処理できるとされているが、光源出力は実際には150W近辺らしい。EUVの話は連載252回で紹介したが、ここでGlobalFoundriesの示した「1時間あたり120枚」という最低ラインはなんとか超えられたスペックである。

 2014年の時と試算の条件が異なるのは、「ArFのQuad PatterningをEUVのDouble Patternigで置き換える」というシチュエーションになっていることで、このシチュエーションであればEUVでもArFと同等のスループットになる、とみなしているようだ。

 ただ、これが本当にうまくいくのか、それとも単に机上の空論で終わるのかは現時点でははっきりしていない。ASMLはNXE:3400Bを現在21台受注しているそうで、これを順次顧客(インテル、TSMC、サムスン、GlobalFoundries、etc...)に納入するわけで、納入が終わり初期調整からパイロット運転を経て、量産まで持っていくにはまだ1年以上かかると思われる。

 この段階で問題がなければ、2019年後半には本格量産に入れることになるのだが、ここでなにかあった場合には本格量産が2020年までずれることになる。その場合、7FF+待ちだった顧客はどうするのか? というのが次なる問題である。もっともこれはTSMCに限った話ではなく、他のファウンダリーもほぼ同じ状況である。

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