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スペインのロマネ・コンティ「ベガ・シシリア」飲み比べ

すごいワインを飲みに行ったらすごいプリンに悩殺された

2017年06月20日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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悪魔的プリン

 すごいワインを飲みませんかと誘われた。

「お店で出すと1本10万円」
「スペインのロマネ・コンティ」
「世界最高峰の生ハムとともに」

 という濃い情報が一気に送られてきた。バブリーな楽天市場のようだ。

 グルメ担当のナベコさんがプライベートな事情で行けないというので、盛田さんどうですかと話を振られた。普段は家電と赤ちゃんの記事しか書いていないが、お酒のことは愛している。たまには良いワインを飲んでもいいのではないか。妻に確認をとると「仕事なら仕方があるまい」と許しをもらえた。

 ワインだーウオー!!!!


ワイン×生ハムは最強のCP

 誘ってくれたのは飲食系クラウドファンディングサイト「キッチンスターター」代表の渡辺浩志さんだ。調理家電が好きな人で、家電アスキーのわたしとしては炊飯器の比較記事でお世話になった。知られざる「ベガ・シシリア」というスペインワインの魅力を伝えるため、スペインレストランでベガ・シシリアを代表するワイン4種の飲み比べを企画したのだという。

 向かったのは「the ringo 西麻布」というモダンスパニッシュのお店だ。「墓地下」という水木しげる的バス停のそばにある。

 墓地というのは青山霊園のことでおしゃれだった。青山には墓地という意味があるわけで、青山霊園はチゲ鍋みたいな意味にならないだろうか。まったく関係ないことを考えながらおしゃれな店内に入っていく。

青山霊園を降りたところに

おしゃれなレストラン the ringo 西麻布

 店内はおしゃれなマダムとミドルでいっぱいだった。まずは集まった人々にthe ringo米田豊シェフがご挨拶。米田さんはおしゃれなモダン・スパニッシュ料理人だが、ラーメン屋で働いたこともあったと言われて親近感がわいた。

 趣旨を説明した後、ワインが運ばれてくる。

米田豊シェフ。ピアス穴がでかい

 ワインとともに饗されたのは「ホセリート(Joselito)」。イベリコ豚の生ハムだった。

 豚はスペイン南西部にあるコルク樫の森で放し飼いにしているらしい。森ハムである。海塩だけを原料に、3年以上熟成させたもので、料理人の間で「世界一のハモン・イベリコ」(イベリコ豚の生ハム)と言われるそうだ。

スペインの生ハム「ホセリート」

 たしかにこれがめちゃめちゃうまかった。

 脂が甘く、口に入れると溶ける。肉のうまみがよくわかる。しょっぱすぎず、独特の生ハムくささがなく、なめらかで、クセがない。文句なくワインに合う。日本だと取扱店が少ないという。もったいない。また食べたい。

うまい

 そんなうまい生ハムをナイフでちょこちょこ切って食べながら、順番に高いワインを飲んでいく天国がはじまった。せっかくなので素人評価をさせてもらう。

ウオー


スペインのロマネ・コンティ飲み比べ

●ピンティア 2010年
希望小売価格 1万円
品種 テンプラニーリョ100%
解説 グレード的に普通のやつ

【感想】
・しっかりしてる
・樽っぽい味する
・日本人好きそう

 ドシンと強力な味。すっぱすぎず香りもいい。趣味のいい地方のおっさん風味。


●アリオン 2011年
希望小売価格 1万2000円
品種 テンプラニーリョ100%
解説 ピンティアとぶどうの産地が違うやつ

【感想】
・しっかりしてる
・なめらかな感じ
・ぶどうの味する

 穏やか、喉ごしすっきり。ぶどう酒っぽい。趣味のいい地方のおばちゃん風味。


●バルブエナ 2008年
希望小売価格 2万5000円
品種 テンプラニーリョ93%、メルロー7%
解説 ハイエンド、同社の哲学をあらわす代表作

【感想】
・いい匂いがする
・口あたりがいい
・余韻が長く残る

 ハーブ的な香り。力強くなめらか、余韻が長い。趣味のいい地方のお嬢さん風味。


●ウニコ 2004年
希望小売価格 7万円
品種 テンプラニーリョ87%、カベルネソーヴィニヨン13%
解説 いいぶどうが獲れた年だけ作る超レア品

【感想】
・日本酒っぽい香り
・酸っぱくなめらか
・ぐいぐい飲める

 辛口日本酒っぽい香り。口あたりが超良い。なぜか地方にいる謎の貴婦人風味。


コスパのいい舌

 という感じだった。好みとしては、

1.ピンティア(1万円)
2.バルブエナ(2万5000円)
3.アリオン(1万2000円)
4.ウニコ(7万円)

 の順になった。

 ピンティアとバルブエナがとくに好きだ。たぶん父娘だと思う。ウニコは味が繊細すぎて「あっわかりみが……」というとき飲み干してしまった。誰か分からないうちに消えてしまった美女という感じだ。脳内の味覚データベースが貧弱だと検索クエリにまともな結果が返ってこないということがよくわかった。

 結果一番安いのを一番うまく感じたわけで、コストパフォーマンスのいい舌である。

 聞いてみるとベガ・シシリアは高級ワインの中でもコストパフォーマンスがいいというのがウリらしい。シャトー・マルゴー、シャトー・ラトゥールといったフランスの5大シャトーのワインはここ10年で10万円以上に高騰してしまったが、ベガ・シシリアは超絶ハイエンドのウニコでも上代7万円のまま、比較的お求めやすいお値段ということのようだった。

 スペインワインは安いというイメージしかなく、高級ワインがあること自体初めて知った。「スペインワインって『カヴァ ブリュット』くらいしかイメージがなかったから」と、隣の席にいたマダムも言っていた。5大シャトーを飲んだことがないので味が匹敵するのかわからないが、最高級品にも「お値打ち」の概念はあるものだと妙なところに感心した。

感想 全部うまい


フォアグラプリンが危険

 飲み比べが終わり、高級ワインを買うならお値打ちスペインワインはいかが? とdancyuリスペクトで締めようと思ったのだが、その日一番感動したモノは最後にあらわれた。企画趣旨に反して生ハムでもワインでもない。キッチンスターターの渡辺さんが「盛田さん、これうまいんで……」と耳打ちしてきたのが悪い。

 それが「フォアグラのプリン」だった。

 プリンといっても甘いわけではなく、茶碗蒸しのようなお料理だ。口に入れた途端フォアグラの強い香りがガーッときて、コクのある濃厚な味がグワーッとくる。ワイン塩をぱらぱらまぶして食べてもうまいし、はちみつをたらして食べると魔性の味になる。「ウオーッ!ウメエーッ!」と言いながらカパーとワインをあおると気分はアンダルシアである。よくわからないがわたしは自転車をこぎたい。

フォアグラプリン with ワイン塩&ハニー

スプーンがへんな形ですね

おや…

はちみつ

やばさ

 750円(税込810円)でお持ち帰りができたので妻と一緒に家でも食べた。トーストしたフランスパンに塗って食べると悪魔のようにうまかった。妻は授乳中でお酒が飲めないためウィルキンソンの辛いジンジャーエールと合わせたがそれもまた最高にうまい。パンが無限に進んでしまって危険だった。

 気になったらあなたも既にフォアグラプリンだ。およばれに預かったときのおみやげにしたら酒飲みが喜ぶと思う。お金があるときはスペインのすごいワインも一緒にどうぞ。


●お問い合わせ
モダンスパニッシュ the ringo 西麻布
東京都港区西麻布1-15-1
Tel 03-6447-1799
http://the-ringo.jp/




書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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