もっと早く試しておけば良かった、というのが正直なところ。fFLAT5という新興ブランドの「Aria One」というトゥルーワイヤレスイヤフォンは、同種のイヤフォンとしてはなかなかの高性能だった。
しかも、値段もこなれている。e☆イヤホンでは、1万5984円とあのAirPodsよりほんのちょっとだけ安いという、実に絶妙な価格を付けている。
現状のトゥルーワイアレスイヤフォンは、まず「音が途切れにくく、定位が揺れない」というあたりが最初の評価項目になる。普通のイヤフォンなら定位が頻繁に動くようなものは大問題だが、まだそれを容認しなければ製品として成り立たない。
が、そうした当たり前の性能をひとまずクリアした上で、音質についても語れる製品がAria Oneなのだ。再生能力が高くて値段もそこそこで、AirPods以外のイヤフォンが欲しいのなら、まず最初の候補に入るのではないか。
振動板に古河電工のMCPET採用
fFLAT5は香港に本拠を置くSanwa Global Limitedのオーディオブランドで、日本国内では東祥インターナショナルが扱っている。現在発売中のAria One、Aria Twoは、古河電気工業の開発した超微細発泡光反射板「MCPET」を、ドライバーユニットの振動板として使っている。
MCPETはポリカーボネートを10μm以下の気泡で発泡させたシートで、当初は食品用トレイとしての利用を期待していたらしい。が、光学特性の優秀さに注目され、現在は主にLED照明や液晶バックライトの反射板に利用されている。
そして最近になって、剛性が高く軽量という特徴から、スピーカーユニットの振動板にも利用される範囲を広げてきた。そのひとつが今回のAria Oneであり、ボイスコイルの線材も含めて古河電工の製品であることがパッケージの裏にも書かれている。
もともとオーディオ用の素材として開発されたわけではなかったという例で言えば、エグレッタ「TS1000F」のツイーターに使われているポリマー・クレイ・コンポジットがある。
この素材は住友精化と産総研の共同開発により開発され、耐熱性の高いシーリング材として使われることを期待された。だが、ハイルドライバー方式のツイーターに振動板として使ってみたら、可聴域を超えた領域でも安定した特性を持つユニットができあがってしまったのだ。
果たして古河電工のMCPETはどうなのか。