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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第6回

kintoneマスターを目指すべくkintone hive東京に初参加!

ジーベックがkintone導入で体験した期待、幻滅、そして改善

2017年06月08日 11時00分更新

文● 柳谷智宣

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サイボウズ社が提供しているウェブサービス「kintone」は、一言で言うなら「簡単に自社の業務に適したシステムを作成できるクラウドサービス」だ。業務アプリを直感的に作成できるほか、社内SNSとしての機能も備えスピーディーに情報共有ができるなど魅力が盛り沢山だ。
本連載では、そんなkintoneの導入から基本機能の紹介、そしてアプリの活用法など、ビジネスの現場で役立つ情報を取り上げていく。第6回と第7回では特別編として、筆者が参加してきたkintoneのユーザーイベント「kintone hive」の前半の模様をお届けする。

 2017年5月19日、六本木アカデミーヒルズで「kintone hive tokyo」が開催された。kintoneのユーザーによる事例紹介や活用事例を発表するイベントで、東京では5回目となる。当日は前半後半に分けて、それぞれ2つの事例紹介と3社のライトニングトークが行なわれた。

 まずはkintoneプロダクトマネージャーの伊佐政隆さんが、開会の挨拶を行なった。kintoneは現在、契約者数が6000社を突破し、累計34万個のアプリが作成されているという。1日、880個のアプリが増えているのだ。業務システムがこのペースで増えるというのは、kintoneでしかあり得ない現象で、まさに日本の会社のITシステムを変えつつあるというのを感じる。

 「kintone CERTIFIED」というkintoneの認定資格制度も発表された。kintoneの基礎知識やスキルを認定する資格で、11月に正式リリースされる予定とのこと。筆者ももっと勉強して合格してみたいと思う。

六本木アカデミーヒルズで「kintone hive tokyo」が開催。開会の挨拶を行なったのはkintoneプロダクトマネージャーの伊佐政隆さん

「kintone CERTIFIED」というkintoneの認定資格制度がお目見えする

「素人流業務改善全社プロジェクト」ジーベックテクノロジー/本堂円さん

 事例ユーザーのトップバッターを務めたのは、ジーベックテクノロジーの本堂円さん。ジーベックテクノロジーは1996年に設立され、産業用特殊工具の開発や製造、販売を手がけている会社だ。材料を切ったりして加工する際、加工面にとげができることがある。これをバリというが、このバリを取るための機械を扱っている。金型向けセラミック砥石の分野では世界シェア80%というからスゴイ。

 事例タイトルは「素人流業務改善全社プロジェクト」。本堂さんが社内のシステムを改善していくという切り口だ。ジーベックテクノロジーでは、2003年に顧客・案件管理システムを自社設計で開発したそう。しかし、10年ほど使い続けたが不満が出るようになった。検索性に乏しく必要な情報にたどりつくまでに30分以上かかるようになってしまったのだ。結局長年いる営業マンの記憶力が一番使えるのでは、という状況。それを打開すべく、2012年にトップダウンで導入されたのがSalesforce.com。このシステムの切り替えから本堂さんがかかわることになった。

 Salesforce.comもドラッグ&ドロップでアプリを自由に設計できる。しかし、入力の導線や画面の構成に制限があり、専門の会社にカスタマイズを依頼したものの思い通りにいかなかった。費用面で妥協する点が多く、導入時点で多数の不安を抱えていたという。案の定、ユーザーから不満が噴出。システムが営業マンの頭の中の流れと違う、見づらい、検索もしにくいと言われ、次第に入力されなくなっていった。案件記録が営業マンのノートにしかないというはるか昔の状況に逆戻りしてしてしまった。2年間利用したが、継続は無理と判断した。

事例ユーザーの1番目はジーベックテクノロジーの本堂円さん

自社設計システムとSalesforce.comを使っていたが限界を感じた

 設計の融通がきいて社内SEがいなくてもメンテナンス可能、そして費用面でも納得のツールを探し、2014年秋にkintoneをテスト導入した。ここから、本堂さんはハイプ・サイクルに沿って説明を続ける。ハイプ・サイクルとは、ガートナーが提唱する特定の技術が社会に適用するまでの流れを説明する図のこと。黎明期、流行期、幻滅期、回復期、安定期の5つの段階が設定されている。

 まずは過度な期待のピーク期(流行期:2014年11月から2015年9月)。本堂さんの作戦は、kintoneを使えばカンタンに業務改善できることを示し、全員に触れてもらい、期待を上げすぎないという3本柱。導入してすぐにホームページ経由のセミナーの申し込みアプリを作成した。アプリからウェブフォームを作成できるサイボウズスタートアップスの「フォームクリエイター」を採用した。ホームページから入ってきたレコードを確認したら、日本オプロの帳票作成ソフトを使い、ワンクリックで受講票を発行できる仕組みを作った。全社員に触れてもらうという目的のため、社内イベントの出欠確認や健康診断受診の確認などを行なうアプリも作成。そして、本丸となる顧客・案件管理システムも移行した。

 そのおかげで営業マンが再びデータを入力してもらえるようになったが、悩みも出てきた。1つのレコードに対して、複数のレコードが紐付く数値項目があるがテーブル行を使うべきか関連レコードを使うべきか迷ったのだ。結局、入力漏れを防ぐために動線を優先し、1つのアプリ内で完結するテーブル行を採用した。しかし、項目数が多いので、横に長い構成になってしまい、横にスクロールしないと入力も閲覧もできないので不便だったのだ。セールスフォースと同様、絞り込み検索もしにくいまま。

 導入から1年経って幻滅期(2015年10月~2016年12月)に入り、ユーザーからの不満が噴出する。JavaScryptを使えばなんとかできそうと感じるものの、誰に相談していいのかわからず時間だけが過ぎる。ある日、本堂さんはセミナーのお知らせの中にM-SOLUTIONSの紹介を目にする。kintoneのカスタマイズアプリの構築や運用サポートをしていると知り、すぐに連絡。業務アプリの改善をお願いすることに。

 入力画面に新たなボタンを設置し、クリックすると別アプリの入力画面が立ち上がり保存できるようにした。そのため、関連レコードを使えるようになったのだ。検索画面では、検索パーツを埋め込みよく使う項目をすぐに使えるようにした。

 それでもあまり使ってくれない開発部のためには、特許管理アプリを作成。出願から登録までの履歴を集約し、行動出願者とコメント欄でやりとりできるようになった。すると、徐々に開発部も使ってくれるようになってきたという。

 啓蒙活動期(回復期:2017年1月~)はアプリの数が増え、kintoneが社内情報の中心にあるシステムになった。アプリをメンテナンスできる社員の育成も初め、各部から次々とkintone化したい業務の要望が寄せられるほど。本堂さんの作戦が実を結んだのだ。

入力の動線と見た目、コストを重視してkintoneを導入! 期待が高まる

1年ほどたつとユーザーの不満が噴出しはじめる

1つのレコードに複数のレコードが関連する情報の扱いに悩む

セミナー情報からソフトウェア開発会社に出会う

JavaScryptを使い、関連レコードを手軽に使えるようになった

kintoneが全社に受け入れられ使われるようになった

単純作業は自動化して人はやりがいのある仕事を! と語る本堂さん

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