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攻殻機動隊は徹底された世界観など色々な難解な面があるけど、なにより楽しんでほしい

Production I.G石川社長インタビュー、『ゴースト・イン・ザ・シェル』に『イノセンス』やS.A.Cのニオイを感じた

2017年03月25日 10時00分更新

文● 八尋/ASCII

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ProductionI.G 代表取締役社長 石川 光久氏に実写映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」についてインタビュー

 4月7日に、攻殻機動隊の実写映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』が公開となる。2016年11月13日に開催されたエクスクルーシブイベントを皮切りに、日本オリジナル本予告映像が解禁されたほか、日本語吹き替えキャストに田中 敦子さん、大塚 明夫さん、山寺 宏一さんが決定するなど、続々と情報が公開されている。

 少佐役のスカーレット・ヨハンソンさんや、荒巻役のビートたけしさんなどがどんな演技を披露しているのか、実写という新たな攻殻機動隊がどう描かれているのか、アニメのキャスト陣による日本語吹き替えがどうなるのかなど、私も今から楽しみにしている作品だ。

製作総指揮のProductionI.G 代表取締役社長 石川 光久氏にインタビュー!

製作総指揮を務めるProductionI.G 代表取締役社長 石川 光久氏

 『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、押井 守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『イノセンス』、神山 健治監督の「攻殻機動隊 S.A.C」などを世に輩出したアニメーション製作会社Production I.G代表取締役社長の石川 光久氏が製作総指揮を務めている。今回、石川氏に『ゴースト・イン・ザ・シェル』について話を伺うことができたので、紹介する。

ーーまず、実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』が実現した経緯を教えてください。

石川 光久氏(以下、石川):士郎さん(士郎 正宗氏、漫画「攻殻機動隊」の作者)の原作があるので、ハリウッドとの窓口は講談社さんが担当です。ただ、Production I.Gはドリームワークスに『イノセンス』を交渉して売った経緯もあって、人脈が広がったんですね。そのときに大手の会社に知り合いが増えたんです。

 その中で、「攻殻機動隊を作りたい」と言っている会社は結構ありました。その中から、講談社さんと一緒に実際にお会いして、攻殻機動隊という作品をどこのプロデューサーさんに預けたらいいかということを考えていました。各社から「攻殻機動隊をこういうスタイルで作りたい」という話を聞き、どれも魅力的なオファーでしたが、その中から絞っていって決まりました。まあ、10年以上も前の話ですけどね。

ーー10年も前からなんですね。

石川:そうですね。結構前からです。脚本は、内容は絶対周りに言ってはいけない状況でしたが、前もって読ませてもらえる人の中に入れてもらってました。何回も色々な作家さんに頼みましたが、イノセンスを描きたい人が多かったんですね。

 もちろん、イノセンスは士郎さんの攻殻機動隊のど真ん中を掘り下げて掘り下げて作った作品なので、(イノセンスを題材に)やろうと思ったこともあったのですが、面白い内容でもお客さんが絞られてしまう可能性がありましたから。

 そういう風に何回も色々な作家さんに頼みながらここまで作ってきました。おそらく脚本に対するお金と時間のかけ方は、日本と比べると10倍以上だと思います。イメージとしては100倍くらいです。

ーーProductionI.Gとしてはどのような関わり方をしているのでしょうか

石川:Production I.G.,LLCの寺島(寺島 真樹子氏)が、通訳のほか日本とハリウッドとの間に入って橋渡しをやってくれました。また、藤咲君(藤咲 淳一氏)がたけしさんのセリフのサポートなども担当しています。そのほかは、世界観や「この場面でこのセリフはおかしくないか」など、質問されたらアドバイスをしていましたが、こちらからこの方がいいというような要求はしていません。

撮影現場で、モニターを見ている押井さんの目が尋常じゃなかった

ーー撮影現場の雰囲気はどうでしたか?

石川:私が行ったということよりも、押井さんと神山さん、音楽の川井さん(川井 憲次氏)というメンバーで行けたということがよかったです。押井さんも、最初は本作について色々と小言を言っていましたが、現場に行ってガラッと変わりました。何より、スカーレット・ヨハンソンの少佐役を「少佐役は彼女しかいない」と絶賛していましたね。

 あと、押井さんはカメラの撮り方とか構図のこだわり方とかを見ていました。モニターを見ている目が尋常じゃなかったですね。スイッチが入ったんでしょう。

ーー神山監督はどのような感じで現場を見学していましたか?

石川:神山さんもスゴイと感じたと思いますが、あの男はそんな簡単な男じゃないから(笑)。完成した映像を観て初めて色々考えるんじゃないかなと思います。

ーー石川社長自身は現場を観てどう感じられましたか?

石川:もちろん、士郎さんの原作が土台になっていますが、私個人の主観としてはS.A.Cのニオイもあるなと思いました。また、香港に行って映像を観せてもらったときに、レイアウトや構図などは、押井さんの『イノセンス』にインスパイアされているなというニオイもしました。

 あと、変に未来に行き過ぎないというのがうまいなと思いました。未来をしっかり描いているけど、変に未来に行き過ぎない地続き感がありました。車も変にいじらずに、例え未来だったとしてもオンボロの車は使われているところとか。

 押井さんも生活感にはすごくこだわりを持っていて、「石川、なんであの机に傷がないのにOKしたんだ」とか、そこ見るんだというところにすごくこだわるんです。この作品でも、人間が生きている証みたいなのを、SFの世界だからこそなおさらしっかり作りこんでいましたね。スタッフが優秀だなと思いましたよ。

『イノセンス』やS.A.Cシリーズのニオイを感じた

香港で映像を観て、原作やアニメ作品にリスペクトを感じたという

ーーお話の中で、S.A.Cシリーズのニオイや『イノセンス』のニオイを感じたとおっしゃいましたが、様々な作品が混ざり合っているといった感じでしょうか。

石川:ベースは士郎さんの原作ですけどね。押井さんも士郎さんの原作あればこそと言っていましたし、そのベースに対してどれだけ積み上げられるかなので。押井さんや神山さんは、アニメーションという分野での、攻殻機動隊の0から1を作った2人です。そこがあの2人のすごさですから。

 今回の制作陣も、士郎さんの原作を熟読してその中から作品を作っているのは間違いないですが、押井版もアニメシリーズも当然研究していますからそのニオイを感じましたし、リスペクトをすごくしているなと感じました。この前のエクスクルーシブイベントのときも、ルパート・サンダース監督が押井監督作品に影響されて作ったと言っていましたし、Production I.Gのことも私のことも言及してくれました。

 一般のお客さんに「石川」なんて名前を言ってもわからないと思いますが、それでもあのように言ってくれたのはProduction I.Gの代表としてありがたかったですね。

ーー『ゴースト・イン・ザ・シェル』は原作、アニメにリスペクトを感じるオリジナル作品なんですね。

石川:パラレルワールドですね。設定がしっかりしていて根っこが深いので、誰が作っても攻殻機動隊になるというのが士郎さんのすごさです。また、原作やアニメもそうですけど、川井さんの音楽を使ってくれるというのもうれしいです。

招待状をもらった感じ

ーーこれまで漫画があって、アニメがあって、そして今回ハリウッドで実写化ということですが、攻殻機動隊としてはどういう意味合いがあると思いますか?

石川:招待状をもらった感じですね。招待状というか、挑戦状というか、日本のアニメーションに対して「俺たちこんな作品を作ったぞ、さあどうする?」と言われていると僕は受け止めました。こちらも「これはすごい作品を作ってきたな」と感じるだけでは駄目だと思います。

 過去の作品で満足してはいけないと思っていますし、今度配信するVRコンテンツも1つの攻殻機動隊ワールドですが、これからどういう作品を作っていくか、Production I.Gが今後どこに向かっていくかのヒントになると考えています。

ーー全世界で公開されることで、新たな攻殻機動隊ファンは増えるでしょうか。

石川:そうですね。確実に認知してくれる人は増えると思います。エンターテインメントは人に観られてなんぼですから。

ーー最後に、日本の攻殻機動隊ファン、映画を観に行こうと考えている人にメッセージをお願いします。

石川氏は最後に「楽しめます!」と自信をみせた

石川:とにかく楽しめます。攻殻機動隊は徹底された世界観など色々な難解な面がありますが、なにより楽しんでほしいです。士郎さんが追求していたことも楽しめる作品ですから。これは、私が100回しゃべるより1回観てもらった方が伝わると思いますよ。

ーーありがとうございました

作品概要

作品名:ゴースト・イン・ザ・シェル
監督:ルパート・サンダース
原作:士郎正宗「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」
公開日:4月7日
配給:東和ピクチャーズ

イントロダクション
 近未来、脳以外は全身義体の世界最強の少佐(スカーレット・ヨハンソン)は唯一無二の存在。悲惨な事故から命を助けられ、世界を脅かすサイバーテロリストを阻止するために完璧な戦士として生まれ変わった。テロ犯罪は脳をハッキングし操作するという驚異的レベルに到達し、少佐率いるエリート捜査組織・公安9課がサイバーテロ組織と対峙する。捜査を進めるうちに、少佐は自分の記憶が操作されていたことに気づく。自分の命は救われたのではなく、奪われたのだと。―本当の自分は誰なのか?犯人を突き止め、他に犠牲者を出さないためにも少佐は手段を選ばない。全世界で大絶賛されたSF作品の金字塔「攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL」をハリウッドで実写映画化。

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