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遠藤諭のプログラミング+日記第3回

書を捨てよ!ドローンを作ろう。FLYBRIXがやってきた

2016年09月12日 10時00分更新

文● 遠藤諭/角川アスキー総研

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 これからの我々の身の回りの電子機器がどんなものになっていくのか、そのためのいちばんいい教科書はドローンだと思う。(今回は「週刊アスキー連載中の『神は雲の中にあられる』より転載です)

いま最高の教育的物体はドローンだ

 今年春の発売以来、品切れ状態が続いていた「FLYBRIX」がようやく私の手元に届いた。いまどきどんな商品がそんなに人気なのかというと、ドローンの本体をレゴで作り、それに専用のフライトコントローラを積んで飛ばすというキット。レゴには、メカニカルに動く「レゴ・テクニック」とか、ご存知じマイコンと組み合わせた「レゴ・マインドストーム」がある。しかし、いまいちばん興味しんしんなオモチャといったらドローンでしょう。それを単純に組み合わせたのがFLYBRIXというわけだ。

 私が、取り寄せたプロポ付きのパッケージは294ドル(ほかにスマホで操作する189ドルのパッケージがある)。さっそく箱をあけてみると、ジャラジャラとレゴ部品(純正品)の入った袋のほかに、メイン基板やモーターやバッテリなんかの静電気防止袋がいくつか入っている。もっも、ローター(プロペラ)のサイズは直径55ミリという小ささなので、「えっ、こんだけ?」という感じのフリカケみたいな感じの小さな部品の集まりである(空を飛ぶものなのでそもそも軽いのだ)。

 なんといっても、これだけのキットで4発(クワッドコプター)、6発(ヘキサコプター)、8発(オクタコプター)の3種類の基本スタイルのものが作れてしまうのがすばらしい。私の場合、いままでDJI Phantom 2 Vision+と、PARROTのBebopシリーズやRolling Spiderシリーズと4発のドローンしか飛ばしたことがなかった。ところが、ドローン仲間(といっても相手はプロフェッショナル)の株式会社ジュエの山崎友一朗さんが映画やコマーシャルフィルムの撮影用に使っている大型の6発ドローンを見せてもらったらあまりにカッコよかったのだ。

FLYBRIXで、オクタタプターを組み立ててみたがペアリングしないと思っていたら郵送でバインディング専用のケーブルだけ送られてきました。基本デザインは空中分解しないように非常によく考えられていて、モーターを取り付けるパーツなど一部の部品はオリジナル。ちなみに、物理的なデザイン以外にソフトウェアのチューニングも可能になっている。

 8発のオクタコプターの場合は、8個のローターという過剰感がたまらない。私は、中学生の頃、『クモの話』(八木沼健夫著、北隆館刊)という本を読んで、すっかりクモ博士になったことがある。クモには、網を張る造網性と、壁や地面を走りまわる徘徊性の大きく2タイプあるのだが、前者は幾何学的だし後者はスポーツカー的なアナーキーさがある。どちらも、男の子のカッコよさと関係が深い生き物だと思う。FLYBRIXのオクタコプターに関していえば、全体が直径20センチほどの本体にローター8個というのは、F1の水平対向12気筒みたいな贅沢さ(ついでに平べったさ)ではないか。

 もちろん、FLYBRIXの魅力は最大の特徴は自分で考えたデザインのドローンが作れることだ。ただし、空を飛ぼうというからにはむやみに形を大きくしたり変形するわけにはいかない。せいぜい“X”型のフレームを“卍”型にしてみるぐらいで、重量オーバーになった時点で飛べなくなってしまう。

 というわけで、FLYBRIXは、多分に“学び”を意識しているわけだが、私は、それ以上にドローンであることが多くの学びを与えてくれると思う。いままで空を飛ぶ機械というのは、航空力学的に緻密にデザインされた“フォルム”というものがとても重要な意味を持っていた。複葉機の時代から最新型のロケットまでそれは変わらないはずである。いまや世界最初のコンピューターともいわれる1930年代にドイツのツーゼが作った“Z1”は、ジェット戦闘機の翼面設計のために考案された。

 それに対して、ドローンはそうした空気力学的な設計とは無縁なのだという。山崎さんは、重量のあるシネマカメラを搭載するためにドローンを自作しているそうだが、バランスよく剛健であることが重要で設計自体は1日もかからないそうだ。実際のところ、ドローンは、複数のローターが均等に配置されていたらとりあえずは宙に浮いてしまう。ドローン用の市販のフライトコントローラーの中には3発で飛べるものも売られている。ユーチューブには、2枚の細長い木の板を十字型に打ち付けて、それにローターを付けて飛ばしてしまう映像も上がっている。

 これぜんぶ、スマートフォンで急激に進化したセンサーとArduinoなどの小型高性能なマイコンのおかげなのだ。いままで“物理的”だった飛行物体が、ドローンでは“ソフトウェア的”なものへと逆転したのである。つまり、ドローンほど、たったいまのデジタルの本質というものを肌で感じることのできる教育的物体はない。といっても、PARROTのRolling Spiderが下向きのカメラで横位置、気圧センサで高さを安定させているのに対して、FLYBRIXは加速度センサーしか入っていないので、飛ばすのは結構大変。それは、それで人生の試練ということで教育的なのでありますね。

飛行中に空中分解しない程度の剛性となるFLYBRIXの構造。ただし、墜落のたびにはバラバラになってしまう。

※写真は専用の送受信機だが、日本で飛ばす場合には技適マークのある送受信機を使用する必要があります。

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