ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第369回
業界に痕跡を残して消えたメーカー フロッピーディスクを業界標準化したShugart Associates
2016年08月15日 11時00分更新
会社はひっそりと消滅するも
同僚が業界を牽引するメーカーを興す
1970年台のマイコン業界に多大な影響を与えたShugart Associatesだが、その一方で会社そのものはなかなか大変なことになっていた。
まずShugart氏は自分の名前を冠した会社を1974年10月に退職している。公式には、今後の製品の方針に関して取締役会と方針が異なったため辞任ということになっているが、実際にはベンチャーキャピタルが首を切ったという説も唱えられている。
1973年と1974年、同社は一銭の売上げもなく(なにしろ製品を出していないのだから当然だ)、さすがにベンチャーキャピタルとしては「売れる製品」の開発を主張、一方Shugart氏は自身のプランを変更するつもりがなく、ここでベンチャーキャピタルが痺れを切らした、ということらしい。
その後同社はフロッピードライブの開発を始め、1976年にはSA400をモノにする。ここでベンチャーキャピタルは出口戦略として同社の株をXeroxに売却、1977年に同社はXeroxの子会社となった。Xeroxの思惑は不明なのだが、将来性があると思ったのだろう。
同社は引き続きSA400の改良に勤しむ。SA400は未フォーマットだと109.4KB、フォーマット済みだと片面35トラック、18セクター/トラック、セクター容量128Bytesで80.6KBになった。
これを後期モデルでは両面40トラックとして125KBまで容量を増やしている。ただ容量の増加への要望は高く、倍密度(両面80トラック)の仕様の開発を始めていた。
さらに薄型化への要望も強かった。ただXeroxの傘下にあったからといって、開発コストが十分にあったわけではないらしい。このため同社はHalf-Hight、つまりSA400の半分の高さ(5インチベイ1つ分)のフロッピードライブの開発と生産を、松下寿電子工業に丸投げした。
当初は松下寿電子工業が製造したドライブはShugart Associatesが独占的に購入できる契約だったらしいが、積みあがる在庫はShugart Associates一社でさばききれるものではなかったらしく、結局独占契約は1985年に解消。この結果松下寿電子工業は同年世界No.1のフロッピードライブメーカーになった一方、Shugarts Associatesの業績は急落することになり、倍密度ドライブの開発も中断してしまった。
その後、同社はShugart Corporationと名前を変えるが、Xeroxも同社を1986年にNarlinger Groupという投資会社に売却。Narlinger Groupの元では、他社で生産中止になったストレージ関連製品を引き取っては継続生産するというビジネスを1990年代初頭まで行っていたが、やはり長続きはしなかったようだ。
同社がもう一つ特徴的なのは「人」である。まずShugart氏は元々のShugart Associatesの立ち上げの時の同僚であるFinis F. Connerと一緒に、Shugart Technologyを1979年に設立する。
ところがこの社名にはShugart Associatesからクレームが付いた。そこで社名をSeagate Technologyに変更している。現在も存続する、というか3社しかないHDDベンダーの1社であるSeagateである。
またShugart AssociatesでSASIの標準化を含む開発の指揮を取っていたLarry Boucherは、開発が一段落した1981年に退社し、自身でAdaptecを興し、SCSIアダプタマーケットで市場を席巻する。
そのSCSIという規格自身もSASIをベースとしたものであり、これにいくつかの改良を加えたものである。この改良はShugart AssociatesとNCR Corporationの共同作業による部分が大きいが、結果としてShugart Associatesから少なからぬエンジニアがNCRに移動したと聞いている。
そんなわけでShugart AssociatesはFDDを開花させ、ストレージ業界全体を大きくする「スタートアップ」の役割を存分に果たしたあと、ひっそりと消えていった。
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