達人に教わるスタートアップ営業・PR・経営の知恵83
Startup Professional スタートアップの営業・広報・バックオフィス
スタートアップでのサービス運営・プロダクト開発などメイン業務と同じくらい大事なテクニックについて、業務の達人に神髄を教わろう。
2016年2月22日に開催した、アスキー スタートアップの講義型セミナーイベント“Startup Professional スタートアップの営業・広報・バックオフィス”より、「営業」をスペースマーケット 重松大輔CEOに、「広報」をエポックシード 森下麻由美氏より、「バックオフィス(会計・経理)」をfreee 佐々木大輔代表にうかがった。
経営・営業の知恵35
スペースマーケット重松大輔 代表取締役CEO
1.創業当初は商品在庫がキモ。お店に入ったとき品物がないと冷める
2.営業先を探すのは前職からのつながり、友だちから
3.最初に大手と取引するのが大事、何もないときこそトップから落とす
4.一番手がいると二番手、三番手も自動的に入ってくるから
5.大手を落とす方法は決裁権者へのアプローチにこだわる
6.窓口担当、下の人は決められない。100回会っても無理なものは無理
7.大企業は社長から現場が遠すぎるので事業部長クラスに行く
8.従業員200~300人の創業社長がやっているところは直接トップに行く
9.社長付きの番頭さんみたいな方がいる。交流会は会いやすいのでおすすめ
10.自治体は首長がすべて。現場レベルは一切権限がない
11.営業時は業界を勉強し、経営者目線で「これやってます?」と提案する
12.業界の小さな変化を見逃さない。一見関係なさそうなものがつながる
13.最後は執念のある人間が勝つ、パラノイアになる
14.経歴・派閥・出身地を知り、昔からの知り合いのような感じで話す(※全部調べているとわかると「こいつには勝てない」という感覚になる)
15.とにかく勝ちにこだわる、徹底的に一番になる
16.事業は小さく生んで大きく育てる
17.どんなに小さくても取引口座を開く。数千円の取引でもいい
18.営業先の異動があると大変。異動と決済のタイミングを聞いておく
19.異動が決まると適当に流す人、一生懸命やってくれる人がいる
20.前任者否定の法則もある。否定することで自分のポジションが上がることも
21.ピッチイベントやプレゼンは積極的に出る。ピッチも営業のひとつ
22.プレゼンは磨くほど良くなる。良いピッチの動画を見て研究する
23.ピッチを「あまり練習してなかった」と言い訳するところは事業部がいい加減
24.スケジューリングやクロージングなどリクルートの営業ノウハウを使う
25.営業力を取り入れるのが難しければ元リクルートの人間を採用したほうが早い
26.営業・マーケティング系の書籍『影響力の武器』『ホットペッパーミラクル・ストーリー』『何かが足りない!あなたの営業』は読むべき
27.営業・PRには社会問題や時流を取り入れたほうがいい
28.記者と知り合うのは交流会。いちばん記事にしやすいのはウェブ
29.ウェブから新聞・雑誌に回っていく
30.新聞に載ると講演会の話などが来るようになる
31.絵面を意識した商品設計をする。どんなシーンで使われるか想起されるもの
32.自治体とのアライアンスを組むと、人のふんどしで相撲がとれる
33.継続的にソーシャル発信する
34.相手のビジネスにとってアイデアになる話をひたすらする
35.一回会うと人は断りづらい。まともな提案なら「やってみようかなあ」となる
知恵者──スペースマーケット重松大輔 代表取締役CEO
1976年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒。2000年NTT東日本入社。主に法人営業企画、プロモーション等を担当。 2006年、当時10数名の株式会社フォトクリエイトに参画。 一貫して新規事業、広報、採用に従事。ゼロから立ち上げたウェディング事業は現在、全国で年間約3万組の結婚披露宴で 導入されるサービスまでに育つ。2013年7月東証マザーズ上場を経験。2014年1月、全国の貸しスペースをマッチングする株式会社スペースマーケットを創業。
広報・PRの知恵28
エポックシード 森下麻由美 PRのひと
1.PRとは「誰に何をどうやって伝えるか」の思考と実践をくりかえし、認知浸透や行動をうながすためのコミュニケーション活動のこと
2.広告とPRのちがいは「金銭の部分と情報のコントロール」
3.日本は広告とPRがあいまいだが、世界を目指すなら分けて理解すべき。アメリカではステマは法律違反、大事なことは関係性の明示
4.PRはメディアの信頼性をレバレッジで使わせてもらうということ
5.メディアの信頼性をゲタとして履かせてもらうのがPR。PRはメディアの信頼を棄損してはいけない
6.発信する情報の価値を高められればPRになる、逆に低ければメディアの信頼性や編集力に広告としてお金を払っていいものを一緒に作ればいい
7.PRの目的は「認知向上」「第三者を通じた客観的な信頼の獲得」「ユーザー、取引先のロイヤリティの向上」などさまざま
8.ステークホルダーを想定するのが大事。そこをわからずにPRしてもムダ
9.VC、パートナー企業、証券会社、監督省庁があるところならそこも想定対象
10.掲載先は投資系の専門メディア、既存ユーザーに届けるなら新聞の生活面など
11.記事が出たあとにどうなるかが大事、量を出すことだけを目的としなくてもいい
12.六本木のベンチャー界隈のあいだで話題になりたいならどの媒体か、投資家にこういうメディアを見ているといわれたらそこ、大手の役員には意外と「夕刊フジ」などの方がいい場合もある
13.商材により、読み手や媒体の特性からPRより広告のほうがいいこともある
14.PRは合気道。媒体や社会のニーズに合わせて時流に合ったものを届ける
15.相手の情報課題を調べてリストを作り、メッセージまで切って持っていく
16.PRは1回で終わりではなく、企業がある限りずっと続けていくもの
17.ベンチャーは、まずは量を出して信頼や実績を獲得していくのが大事。量から質に切り替わるタイミングがある
18.広報PRは女性誌だとアパレルなどキラキラした職業イメージだが、泥臭い
19.ベンチャーでの広報採用に経験は関係ない、経営者とおなじ視点が持てる、自分より仲間を引き出す裏方気質の人なら誰でもOK
20.PRパーソンには調整力は大事、社内にいるだけで情報が集まってこないといけない
21.10年もPRをやっているので記者リストは豊富だが、担当入れ替わりなど激しくメンテナンス必須
22.プレスリリースは事実を端的に書いてある客観的な内容に
23.ニュースリリースは記事体で読める、検索した人に伝わるものの傾向
24.配信先リストは誰でも自分でゼロからつくれる
25.バリュープレスやPR TIMESや@Pressなど配信サービスはたくさんある。特性を理解して活用するといい。Googleニュース検索などで第三者的にも観察できる
26.News2uはコストは高いが帝国データバンクの電子証明を活用し、発信元確認をしている
27.大手がコストをかけて使っているのは米国でも問題となった「なりすまし」リリースを回避するため
28.PRで勉強になる本は『考える技術・書く技術』。リリースを書いたり、戦略を考える訓練になる
知恵者──エポックシード PRのひと 森下麻由美代表
東京農工大学大学院生物制御科学科卒業。2005年にマーケティングPRのベンチャーのビルコムに新卒採用第一期として就職。その後、2009年よりソーシャルメディアマーケティングの老舗アジャイルメディア・ネットワーク株式会社にジョインする傍ら、PRコンサルタントとして活動、2011年にPR会社のエポックシード(株)を創業。先端技術や金融から世論形成、ITサービスまで、美容とファッション以外の分野を得意とする。ベンチャー企業から東証一部上場企業・独立行政法人、外資企業など様々なサイズやフェーズの企業を支援。
クライアント実績:Evernote、GitHub、サントリーホールディングス株式会社、デジタルハリウッド株式会社、株式会社うるる、日本労働組合総連合会など
バックオフィス(会計・経理)の知恵20
freee 佐々木大輔代表
1.法人口座の場合、オンラインバンキングは月額1980円程度の手数料がかかることが多い
2.メガバンクなどの場合はMacから使えないこともあるので注意
3.法人口座をつくるときはオンラインバンキングが充実しているかで選ぶべき
4.ネット系の銀行は月額手数料が無料やユーザビリティーが高いケースが多い
5.意外なことにゆうちょ銀行もオンライン対応で使いやすい
6.クレジットカードを使えば、経費が自動で吸い上げられるので便利
7.タクシー代をソフト側で自動的に「旅費交通費」に分類できる
8.起業したあとはカード審査が通りづらくなるという都市伝説がある
9.法人カードは3期分の決算書がないとつくれない
10.個人の信用をもとに会社の口座から引き落とせる法人向けのカードがある
11.楽天、アメックス(American Express)、JCB、オリコなどは上記「バックオフィスの知恵10」のカードがつくれる
12.カード利用額も最初は20万円程度だが、Google AdWordsなどで一瞬でなくなってしまうので多いほうがいい
13.1ヵ月に10万円分使うとしても、次に10万円を使うと、後から支払いが来るため20万円を使ってしまうことになり、カード上限金額は実質半額ほどになる
14.1万円超の年会費があるものの、限度額はアメックスが強いといわれている
15.個人のマイルも「バックオフィスの知恵10」のカードは貯まる
16.法人と個人で別々のカードを持つと完全に経理を自動化させられる
17.現金払いでもスキャナーで領収書をとりこめば会計帳簿が自動でつけられる
18.POSレジからも会計ソフトにデータをとりこめるようになっている
19.請求書の発行と支払いのプロセスは会計ソフトの中で一括管理できる
20.オンラインバンキングの口座と自動連携をすればそのデータが自動で帳簿に反映される
知恵者──freee 佐々木大輔代表
一橋大学商学部卒。データサイエンス専攻。『全自動のクラウド会計ソフトfreee(フリー)』を提供するfreee株式会社代表取締役。Googleにて日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けマーケティングチームの統括を務めた後にfreeeを創業。Google以前は、博報堂、投資ファンドを経て、レコメンドエンジンのスタートアップALBERTにてCFO兼レコメンドエンジン開発責任者などを経験。
次回、開催のアスキー スタートアップのイベント“ASCII STARTUP ACADEMY”はビジネスで利用できるクラウドサービスをテーマに、3社のスタートアップ企業に登壇いただく、『過熱する法人向けビジネスクラウド新事業 新進スタートアップが明かすサービスの秘訣』を2016年5月31日(火)に開催する。参加登録は以下のリンクよりお願いします。