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日本の小売業はeコマースと実店舗でお客さまを取り合うのをやめるべき

デマンドウェアCEOに聞く日本のEC市場の特殊性

2016年03月25日 15時27分更新

Web Professional編集部

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米国に比べて5~6年遅れていると言われる日本のeコマース市場の特殊性はどこにあるのか? クラウド型のeコマースサイト構築サービスを提供する米デマンドウェアのトム・エブリングCEOに話を聞いた。

――デマンドウェアは、2015年から日本国内向けの営業活動を始めていますが、まだ多くの人が知るには至っていません。会社のことを教えてください。

デマンドウェアは、デジタルコマースの流通小売り業向けに、SaaS型のショッピングサイトを開発、販売する会社です。小売り業のお客さまに、デジタルで成功するための機能を提供することをミッションとしています。もともとはドイツの起業家ステファン・ショーンバックが1990年代に設立した会社が起源で、当時は「インターショップ」というeコマースサイト構築用のパッケージソフトを小売り業の顧客向けに販売していました。しかし、ステファンは18~24カ月ごとにパッケージソフトをアップグレードしていたのでは、インターネットの成長速度にあわず、テクノロジーの進化を小売業者が享受できないと気付きました。そこで、SaaS型の製品を開発することを決め、より大きな市場とベンチャーキャピタルによる資金調達のため、2004年にアメリカに移り、設立したのがデマンドウェアです。今でも開発者の一部はドイツに残っており、アメリカのテック企業とは違って、当時から国境や言語を越えることが前提のサービスを提供していたのが特徴です。

米デマンドウェアのトム・エブリングCEO

――すべてのネット企業が成功するわけではありません。デマンドウェアは、なぜeコマース分野で成長したのでしょうか?

デマンドウェアのeコマースサイトは、100%カスタマイズできることが特徴です。また、eコマースは基幹系であり、情報系のように「数時間落ちちゃったけどお詫びを告知して終わり」というわけにはいきません。落ちないことがとにかく重要です。2005年に米国で販売を開始したとき、最初のお客さまはニューヨークのデリカテッセン(総菜屋)ゼイバーズでした。コロンビアスポーツや、スノーボードのバートンなど、初期のころのお客さまが成長するのに合わせて、当社も成長したのが成功の基本要因です。アパレルファッション業界、スポーツ用品、ブランドのある電気製品のお客さまが特に多いですね。ただし、私がCEOに就任した2010年のお客さまは20社で、そこから急速に成長したことも言っておきましょう。2015年には約400社のお客さまが利用されており、どの会社とも長期的関係を築いています。

デマンドウェアによるストアフロント用の開発ツール

――お客さまの成長がなぜデマンドウェアの成長につながるのでしょうか?

デマンドウェアと他のeコマース系ソフトウェア企業は、そもそもビジネスモデルが異なります。ソフトウェア企業は、パッケージソフトを販売して、最初に収入を得ます。お客さまが成長しようがしまいが、根本的には関係ありません。しかし、デマンドウェアは、eコマースの売上額から一定の割合を利用料としていただくクラウド型のサービスです。実際には、ちょっと試して、何ができるかもわからないうちに辞める、ということがないよう前払い金を頂きますが、前払い金は初期手数料ではなく、あくまで毎月お支払いいただく利用料の前払いで、初めはそこから取り崩していくことになります。お客さまが成功しなければデマンドウェアも成長できませんから、当然、お客さまが成功することに真剣になる。デマンドウェアとお客さまは、利害が一致しているのです。設立者のステファンが考えたビジネスモデルです。また、カスタムプラットフォームは1~⒉年でバージョンアップするはずですが、デマンドウェアは昨年だけで9回、今年は4回バージョンアップしました。インターネットの成長速度にお客さまがついていくのは大変ですが、デマンドウェアなら、機能もセキュリテイも、任せていただくだけです。

デマンドウェアによるデモサイト

――売上額ベースで利用料を支払うことは、お客さまにもメリットがありますか?

売上額に応じた利用料にする以前は、PVやCPUコストなど、別の指標も検討しました。しかし、たとえば今月はPVが多いから利用料も多めに下さい、と言われてもお客さまは困るでしょう。売上額を基準にすれば、eコマースシステムのコストは売上額の何パーセントだ、とあらかじめ見込めますから、システム利用料が変動しても利益率は変わりません。経営者にとって、コストの割合が変わらないのはよいことです。また、デマンドウェアにしてみれば、自社の売上額を増やすには、お客さまに成功してもらうしかありませんから、お客さまに成功していただく、新しいメニューを次々に開発する動機が生まれます。

デマンドウェアによるデモサイト

――これまでにどんな新メニューを開発しましたか?

3年前になります。eコマースだけではなく、実店舗でもデマンドウェアを使っていただくために、店員向けのタブレットソリューションを提供しました。店員がお客さまの買い物の手伝いをするために、タブレットを操作しながらカラー、サイズなどを検索し、店頭在庫がなければeコマースで購入していただき、そのまま顧客の自宅に届ける仕組みです。このようなソリューションは他社も提供していますが、デマンドウェアはソフトウェア代としてはいただきません。販売金額に応じた手数料をいただくのがビジネスですから、タブレット代だけで、こうしたO2O施策を試し、効果を試してから全店に展開できるのです。また、eコマース向けにはパーソナライゼーションの仕組みも提供しました。アルゴリズムで顧客の好みを割り出すレコメンデーションの仕組みを持つ企業を買収し、デマンドウェアのプラットフォームに実装しました。もちろん、追加の利用料は発生しません。お客さまの売上額が増えれば、それでよいのです。

多言語対応ながら、管理画面は完全に日本語されている

――日本での取り組みをこの時期に強化するのはなぜでしょうか?

デマンドウェアにとって、日本は魅力的なマーケットです。日本の経済規模はイギリスよりもずっと大きい一方で、小売市場に占めるeコマースの割合はずっと低く、長期的に見れば日本のeコマース市場はまだまだ成長する余地があります。他の国ですでに利用中のお客さまを含めればすでに20社が利用中なので、大きな投資が必要なわけではありません。日本の小売業の皆さまにデマンドウェアのことをもっと知っていただき、長期的な関係を築ければ、必ずうまくいくと確信しています。

――海外と比べて、日本の小売業は何が違いますか?

日本の会社は、eコマースと実店舗を分けて考えすぎではないでしょうか。日本以外の国では、この境目はとても曖昧です。たとえば当社お客さま企業の1社では、オンライン売上の30%は、顧客が実店舗に商品を受け取りに来ます。また別の1社では、オンライン売上の25%は、実店舗内でeコマースサイトを操作した買い物です。日本の小売業は、お客さまの買い物を、eコマースと実店舗で取り合うのをやめるべきです。eコマースでの買い物が簡単になり、体験が充実すれば自然とそうなるのです。アメリカの小売業がやってきたことを、日本企業が実行する時期です。また、日本企業は、海外の顧客にeコマースでもっと販売するべきでしょう。日本には海外の顧客も知るようなハイブランドがあるのに、海外の売上額が少ないのはもったいないことです。だから、ここにチャンスがあるのです。また、ショッピングサイトと、ブランドサイトが分かれているのが日本の特徴です。米国企業は数年前にブランドサイトが実店舗の購買行動に影響を与えているのに、サイト間がつながっていないのはおかしいと気付きました。ブランドサイトでそのまま購入できたほうが売上額が増えるとデータから類推し、垣根を取り払いました。日本企業もそうするべきだと思います。

エブリングCEOの薫陶を受ける日本法人の北村 守社長

――日本企業の海外向けeコマースでもデマンドウェアが使えますか?

デマンドウェアは、すべてのお客さまに原則として同じ機能を提供しています。POS連動の仕組みは今のところ米国のみですが、約400社1500サイトがデマンドウェアの同じバージョンで稼働しており、各国のeコマースの実情に合わせて機能を使い分けることで、簡単に海外進出できます。カスタムメイドのプラットフォームでは、開発費さえかければ何でもできますが、デマンドウェアなら売上額に応じた利用料をお支払いいただくだけですよ。

デマンドウェアのデモサイト

――eコマースでもスマホの比率が高まっていますが、モバイルのコンバージョン率は低いと言われています。何か知見はありますか?

全世界で3億人の顧客が、デマンドウェアで買い物を楽しんでいます。2015年の第4四半期には、モバイルとパソコンのデータトラフィック比率は45%でほぼ同じでした。その上でお話すると、確かにモバイルのコンバージョン率は低いのですが、すべてのサイトで低いわけではありません。どの会社のどのサイトがモバイルのコンバージョン率が高いか調べたところ、例えばBuyボタンの色は緑色のボタンがよいとか、いろいろなことが分かってきました。デマンドウェアは、個々のお客さまがeコマースサイトでしている工夫を勝手に他社に開示することはしませんが、データを集計し、どうすればモバイルの売上額が増えるかの知見は、すべてのお客さまにアドバイスします。素晴らしい工夫をされているお客さまの努力を損なわず、デマンドウェアのお客さま全体も得をすることが、自社の成功にもつながると考えています。多くの日本企業がデマンドウェアを採用すれば、日本のデータを集めて、日本に特化したアドバイスもできると思います。

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