地方から人が減り続けている。日本の人口減少や東京への一極集中などが原因だ。このままだと2040年には、多くの地方自治体が行政機能を維持できなくなってしまうとされる。
そこで取り組まれたのが、総務省「ふるさとテレワーク」である。
都会のいつもの仕事をそのまま続けられるよう、地方にテレワーク環境を整備。地方への移住や企業進出を促進し「新たな人の流れ」を創る。さらに移住者が地方に溶け込めるよう支援することで、その流れを一過性のものではなく「定着・定住」につなげる。
その実現可能性を検証すべく、全国15地域で実証実験が行われ、約180社の協力会社から合計約1000人が実際に移住。テレワークの地域への影響、効果や課題を洗い出した。「ふるさとテレワーク」は地方を救うのか? そんな各地での取り組みをレポートする。
今回は和歌山県白浜町。プロジェクトを主導する、セールスフォース・ドットコム 白浜オフィス長の吉野隆生氏に聞く。
白浜町の熱意に惹かれ
和歌山県南西部の海岸沿いに位置する白浜町、通称・南紀白浜。さらさらとした白い砂浜と青い海のコントラストが印象的な「白良浜」は、夏になると浜辺に色鮮やかなパラソルが咲き、夜空に花火が打ち上がる。周辺の観光地としては、砂岩が波に侵食された「千畳敷」、断崖絶壁の名勝「三段壁」、中心部の穴を通して夕日が見える「円月島」があり、「日本の夕陽百選」に選ばれるなど太平洋と夕日の組み合わせが美しい地域だ。
そんな白浜町で実施されたのは、2015年7月にセールスフォースが開設した戦略的テレワーク拠点「Salesforce Village」におけるテレワーク有効性実証である。
発端となったのは、企業誘致を模索する白浜町と、地方のテレワーク拠点を探していたセールスフォースの出会いだ。セールスフォース内では大分県も候補地に挙がっていたが、白浜町の熱意にも惹かれ、いわば「お見合い」が成立。白浜町にあった既存のオフィス施設を「Salesforce Village」に改修し、実証が始まった。
セールスフォースからは本社機能を一部移転したほか、パートナー4社(ブイキューブ、サンブリッジ、日本技芸、ブレインハーツ)からも社員が移住または長期滞在。セールスフォースの吉野氏も「村長」として移住した1人で、最初から「単身赴任」ではなく「家族全員での移住」を決断している。
目指したのは「テレワーク有効性実証」と「移住者支援・地域交流」の大きく2点だ。結論から言うと、いずれにおいても「ふるさとテレワーク」実証事業を代表するような成果となっている。ポイントを探っていこう。
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