会計士・税理士はなくなる仕事ではない 2016年のfreeeが目指す展望
1 2
16日、freee(フリー)は「会計士・税理士を取り巻く環境とfreeeの展望」と題した説明会を実施。freeeを導入している税理士・会計士事務所の数が2000を突破するなどの最新状況と今後の展望を発表した。
Fintechスタートアップとしてさまざまなメディアでも取り上げられている同社は2012年7月創業のベンチャー。5分で会社の設立ができる「会社設立freee」、業務用のクラウド会計サービス「クラウド会計ソフトfreee」、給与事務と労務事務をまとめた「クラウド給与計算ソフトfreee」と、会社設立といったビジネスのはじまりから、成長後まですべてをサポートできるプラットホーム展開を行っている。
リリースから好調を維持しており、現在のクラウド会計ソフトでのfreeeのシェアは、40万事業所を突破してシェア37.5%の業界トップとなっている。累計で52億円の調達を果たしており、従業員も150人超と中堅ベンチャーの域にある同社が進める次の展開は、「リアルタイム経営パートナー」という構想。説明会の内容とともに、新たに発表された内容をまとめてみた。
今、会計士・税理士に求められている仕事
オックスフォード大学のオズボーン教授による702の職業について調べた”機械に奪われる仕事”についての論文は有名だ。同論文を元にしたダイヤモンド社発表のデータでは、”なくなる仕事”として会計士が2位とされていた。これをもとに、海外・国内の状況から会計士の仕事の現在について発表を行ったのはfreeeの伊佐裕也執行役員マーケティング本部長。
海外の政府統計データによれば、オーストラリア・アメリカでは“なくなる仕事”という見方に反して、ともに会計士自体の増加傾向にあるという。重視されているのは、「会計士はIT、HR、マーケティングなどさまざまなスキルが生かせるやりがいのある仕事」であり「行動力、業界の知識、テクノロジーの理解などを兼ね備え、経営に大きなインパクトを与えるもの」という認識だ。つまり、海外では「なりたい仕事」として人気が高い。
続いて提示されたのは、ともに60~70%の割合でクラウド会計ソフトの利用が進んでいるイギリスとオーストラリアの事例。イギリスでは顧問先となる企業側からもクラウド化を望む声が多く、また半数以上の企業がクラウドの導入でもっと高い顧問料を支払ってもいいと思っているという。前提には、「いままでよりも付加価値の高いサービスを提供してくれるのであれば」という考えがある。
2008年からクラウド会計ソフトを導入し、2010年には完全なクラウド化を果たしたニュージーランドの会計事務所であるエンジンルームを例に伊佐氏は現場の声を紹介。顧問数400を抱える同社は完全なクラウド化によって、「既存顧客との関係性のさらなる強化、知識やサービスに付加価値を感じてもらっている。クラウド導入によって短時間で業務ができるようになり、サービスの提供価値も強まった」という。
機械が奪っていった仕事で生まれた時間によって、より価値のある業務の提供が可能になるという流れは、ニュージーランドに限らず、アメリカ、オーストラリア、イギリスでも同様のレポートや発言があるようで、会計士には”重要な付加価値の提供”が求められているという。
一方でfreeeの調査によれば、「税理士に今後お願いしたい業務」 では、「コンサルティングや業務効率化へのアドバイス」が1位となっていおり、日本でも付加価値へのニーズが高まっていると伊佐氏。
実際に説明会のゲストとして登壇した税理士法人の担当者も、煩雑になりすぎている経理業務の中身を機械に作業を任せることで、適時適切な数字の提供ができるようになったと語っていた。
経営の意思決定における「必要な数字を出せるか」という点への対応が従来よりもやりやすくなるため、求められている”コンサルティングや業務効率化へのアドバイス”ができるのだという。
機械が担える税務申告や監査業務だけでなく、リアルタイムの会計データによる企業の意思決定、事業での重要な意思決定につながる部分で専門性のあるアドバイスができるかが、会計士の領分になるというわけだ。
1 2