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地球を救う次世代のエネルギー源となるか、ヘリカル型熱核融合炉

「地上の太陽」実現に一歩前進、熱核融合実験炉「ヴェンデルシュタイン7-X」第1実験成功

2015年12月11日 14時41分更新

文● 行正和義 編集/ASCII.jp

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ヴェンデルシュタイン7-Xの模式図

 ドイツ・グライフスヴァルトに建設された熱核融合実験炉「ヴェンデルシュタイン7-X (Wendelstein 7-X)」の第1回実験が12月10日に実施され、無事プラズマの形成に成功した。

 「ヴェンデルシュタイン7-X」はドイツ最大の研究機関であるマックス・プランク研究所が主体となって研究開発を進めている熱核融合実験炉。日欧英米諸国の共同チームがフランスで建造を進めている国際熱核融合実験炉「ITER」の「トカマク型」と異なり「ヘリカル型」を採用する。

ヘリカル型はプラズマを螺旋状に回転させつつ封じ込めるため、複雑な形状の電磁石を必要とする

 トカマク・ヘリカルともにガスを加熱してプラズマ化、磁場で円環型(ドーナツ型)に封じ込めつつ、プラズマが核融合するまで温度を上げる。トカマク型はやや縦長のドーナツ状なのに対し、ヘリカル型はプラズマ円環が螺旋状の複雑な形で流れるのが特色。いずれも1950年代に考案され、ヘリカル型のほうが熱が逃げにくいなどの利点があるが、プラズマ流の計算や磁場の維持が難しいことから核融合はトカマク型が主流となっており、ITERでもトカマク型で進めている。

建設中のプラズマ容器。容器自体非常に複雑な形状となっている

 マックス・プランク研究所などのチームは技術進歩によってヘリカル型が実現可能として約17年前から計画を開始。スーパーコンピューターを用いたプラズマの流れや磁場計算、複雑な磁場形状を実現する超電導磁石の開発、幾度かの遅延を経てようやくテスト開始となった。

実験炉本体。超伝導電磁石とその冷却装置、制御装置などの集合体だ

 実験炉はプラズマ中心部で直径5.5メートルという比較的コンパクトなもの。あくまで実験炉なので投入エネルギーのほうが出力エネルギーよりも大きく、実際に発電を行なうとすれば数倍規模の炉になると考えられる。

形成されたヘリウムプラズマ 

 第1回のプラズマ生成・維持テストは無事成功したようだが、これはヘリウムを用いた事前テストで、本番は水素を用いる。水素プラズマを用いた実験は2016年1月下旬に予定しているようだ。さらに数段階の実験フェーズを経て熱核融合実験の進むなど、熱核融合を発電に使う道のりはまだまだ先は長いのは確か。

 ITERはさまざまな要素とスケジュールが遅延しているが、ITERのトカマク型に対して未来の保険としてヘリカル型を進めておきたいという見方もあるようだ。ともあれ、豊富な水素や重水素を用いたクリーンな未来の発電技術とされる核融合実現に向けて第一歩と言える。

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