「日本企業にプラットホーム的な企業は多くない──遅れのようなものが見える」
アップルやグーグルを日本企業と比較して、出井伸之氏はそう述べた。出井氏はソニー元代表。2005年にソニー会長兼グループCEOを退任後、2006年にコンサルタント会社クオンタムリープを設立した人物だ。
出井氏がIT大手に共通するプラットホーム型経営について話したのは25日。人工知能を使ったマーケティング企業Appier(エイピア)が開催した、IT系メディアの記者を招いたラウンドテーブルにゲストとして登場した。
事業を通じて得られるデータにこそ価値がある
なぜアップルが成立したかは明らかだ、と出井氏は言う。
「プロダクトにiOS、iCloud、iTunesが乗っているプラットホームを作った。グーグルの売り上げは7兆円ほどで、プロフィットセンターは広告。アップルとは違うプラットホームをつくった。フェイスブックも同じ。モノを配達するうえでデータを集めているのはアマゾン。モノを届けるだけでなくデータを集める、分析するというところに企業価値がある」
エレクトロニクスを中心として、ただモノを売るだけのビジネスモデルは古びてしまった。これからは消費者の行動を分析して次につなげられる企業が新しい価値とビジネスを作っていく、というのが出井氏の考えだ。
出井氏はこれからのビジネスとして人工知能にも注目している。
人工知能ビジネスにもプラットホームは必要だ
トラフィックをもとにしたインターネット広告枠の自動取引や、端末同士で通信して迂回路を知らせるカーナビなどを例にあげ「これから起きる日本の社会変化は人工知能にあるような気がしてしょうがない」と出井氏。
人工知能を生かすには大量のデータが必要で、やはりプラットホームが不可欠となる。出井氏は「大きな情報」を収集できる、日本のプラットホーム企業があらわれるには、国単位の土壌づくりが必要だという姿勢を見せていた。
なお、エイピア創業者のチハン・ユーCEOはハーバード大学とスタンフォード大学に在籍していた人工知能の研究者。グーグルが開発した自動運転車のベースをスタンフォード大学の研究チームとともに開発している。
エイピアでは現在、スマートフォンやタブレットなど使うデバイスが変わっても、つねに利用者にふさわしい広告を見せられるアドテクノロジー『クロスデバイスインテリジェンス』を開発・運用している。