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MARKETING 書かなきゃいけない人のためのWebコピーライティング教室 ― 第7回

7限目:「ムシ歯」でかみ砕くUX〜コピー制作シート付き

2015年09月04日 11時00分更新

森田哲生/Rockaku

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イラスト:寺井麻美

ライティング教室にUXの授業を取り入れたい理由

 どもども。急に連載ペースを上げているRockaku森田です。この原稿、6限目の初稿を上げてから1時間後には書きはじめています。快挙です(書き上がったのがいつかは……秘密ですが)。

 さて、前回「サッカーでランディングページのレイアウトを監督する」という授業をやってみました。お気づきの方も多いと思いますが、アレはつまるところ、「書かなきゃいけない人」の立場から考える、「コピーを書くためのUI(User Interface)」の話だったわけです。で、「UIやったんだから、アッチもやんなきゃでしょ?」という、Web系メディアなら当然の流れとして、今回は「書かなきゃいけない人」の立場から考えるUX(User Experience)について、バカバカしくもわかりやすいお話を一席披露しましょう。

 なぜ、「Webコピーライティング教室」を標榜するこの授業で、UXに触れるのか(しかも、誰にも頼まれていないのに、持ち込み企画で)。それは、結局のところ、コピーに接触するユーザーが置かれた状況をリアルに想定しておくことが、Webでコピーを書く上で言葉選びや表現に大きな影響を与えるからにほかなりません。

書かなきゃいけない人=考えなきゃいけない人

 「書かなきゃいけない人」であるみなさんが担当するWebページ、コンテンツの多くは、「検索」を介してユーザーと出会います。「検索」って、その手前に「知りたい」「解決したい」「手に入れたい」といった動機や欲求があって、はじめて発生するアクションですよね。そして、その動機や欲求に応え、コンバージョンへと導くのは、みなさんが「書かなきゃいけない」コピーです。つまり、この授業のターゲットである「書かなきゃいけない人」は、同時に、検索という一連のアクションの流れ=ユーザーの体験を「考えなきゃいけない人」なんです。

 でも、何をどう考えたらいいのか? は、なかなか難しい問題だと思います。そんなわけで、そのあたりをかみ砕いて解説していきたいと思います。

突然歯が痛くなったMさんのUX

 UXを解説するために選んだ見立ては(って、すでに記事タイトルでバレバレですが)「ムシ歯」です。つまるところ、「UXという小難しそうな話を、「ムシ歯」をモチーフに、わかりやすくかみ砕く」。それが今回の授業の本筋です。「ムシ歯」でも、ものすごくきちんと噛みますよ。ただ、かみ砕いている僕にはいろいろなダメージ(主にちゃんとしたUXを扱っている人たちからの「このひとバカなのかな?」という視線)が蓄積されていくんですが。

 さあ、本題です。みなさんもいっしょにイメージしてください。ある朝、埼玉県戸田市に住むMさん(37歳)が、奥歯でハンマーが振り下ろされたような痛みで目を覚まします。もう、どうにもならない痛みにあえぎながら、Mさんはノートパソコンを開きます。

 「歯科 埼玉 戸田市」と、Googleの検索窓に入力して検索ボタンをクリックすると、そこにはいくつかの歯医者さんのサイトが出てきました。その中からMさんは、近場の歯医者さんを数件ピックアップします。そのとき、Mさんが意識しているのは、「今日が定休日じゃないか?」「家からは何分かかるか?」あたりでしょう。あとは、「サイトから怪しい気配がしていないか?」「設備や内観が汚くないか?」くらいを気にして、最終的に、「A歯科クリニック」のサイトに辿り着きます。

 Mさんは、アクセスした「A歯科クリニック」のサイトで「ある項目」を探します。それは営業時間と電話番号です。あ、ありました。受付時間は9時からですね。今は8時45分。とにかく15分の間、痛みをこらえて電話したMさんは、運良く9時15分に予約を取って治療を受け、どうにか痛みを和らげることに成功しました。

 はいっ。イメージングタイム終了! このムシ歯の激痛→検索→選定→電話予約→来院までの流れ。これがつまるところUXです。ええ、その通りっ。「見立て」でもなんでもなく。僕の実体験を元にした話ですね。でも、まさに「Experience」なので、そこら辺はヨシとしてください。

Mさんが肉眼でした「条件検索」とは

 さて、ここで問題。歯が痛いMさん(まあ、僕ですけどね)が辿った一連のUXの中で、「検索」は何回あったでしょうか? そうですね。「ググる」という意味では1回です。 

 しかし、それ以外にも肉眼と思考による「検索」がされているんです。それは、Mさんが「A歯科クリニック」に辿り着くまでの検索結果画面上からの選別と、「A歯科クリニック」のサイトに辿り着いた後で、受付時間や休診日、電話番号を探している時です。

 僕がこの行為を「閲覧=Page View」ではなく、「検索=Search」だと捉えるのは、そこに「条件」があるから。このとき、Mさんは、「歯が痛い現状をいち早く解決する」という動機・欲求を優先事項に据え、無意識的な「条件検索」をしていたはずです。図にするとこんな感じです。

 つまり、人間は、自分が抱える課題を解決するために、「優先事項」を設定し、目の中に「チェックボックス」を実装しているんです。この「チェックボックス」にチェックが入っていない項目は、「ないもの」と認識して読み飛ばしていく。これは、みなさんが日常生活の中で、辞書で知りたい英単語を調べているときや、テレビの番組表で見たい番組やタレントの名前を探しているときと同じです。この点を考慮しないと、コピーはもちろん、サイトの構成やデザイン自体のクオリティも、本当の意味では向上できません。

歯医者さんのコピーワーク

 多くの場合、歯医者さんがサイトをつくろうと思えば、サンプルとして挙げた架空の「A歯科クリニック」のように、技術力やホワイトニングなど、自分たちのウリや強みを前面に押し出したいと考えるでしょう。また、もっとも目につくヘッダー左のロゴ上にカッコいいキャッチコピーを書いて配置したくなるかもしれません。

 でも、地域密着型の歯医者さんが獲得すべきコンバージョンは、新規の見込み客=歯が痛い人の欲求に応えてこそ生まれる「来院」です。だから、僕ならヘッダー左上のポジションには「戸田公園駅徒歩3分」というコピーを書きます。一連のUXを読み解いているなら、「戸田公園駅徒歩3分」だって、立派に新規客を誘導できる、機能的なキャッチコピーになるんです。

 つまり、自分たちの見込み客が、サイトと出会う前後に辿るUXを読み解き、ある程度の仮説を立てるだけで、訴求すべき内容の優先順位が見えてきますし、コピーをどう書くか? 画像をどこに配置するか? といった基準が非常にクリアになるんですよね。

「書かなきゃならない人」のためのUX可視化プロセス

 もちろん、この授業を受けてくださっている方のほとんどは歯医者さん、あるいは歯科医のサイト担当者ではないでしょう。でも、歯が痛かった経験がある人は、それなりにいる。だから想像がしやすく、ユーザー目線に立ちやすかったと思います。

 別に、「歯が痛い人」じゃなくてもいいんです。あなたが飲食店のサイト担当者なら、「深夜にお腹が空いてなにか出前を取りたい人」かも知れません。自動車や保険関係のサイト担当者なら「乗っていたクルマのエンジンがいきなり止まった人」でもいいですし、住宅会社のサイト担当者なら、「結婚・出産を機に住み替えしたいと思っている人」でもOK。運送会社のサイト担当者なら「仕事の都合で引越しすることになった人」なんていうこともあるでしょう。

 重要なのは、見込み客たるユーザーが抱える欲求、優先事項、課題解決までに与えられた猶予などを把握し、考え得る体験の流れを項目化し、整理すること。UX可視化のためのフォームを一例としてまとめてみました。

 さっそく、これをいくつかの例に当てはめて記入例をつくってみます。

こうした考え方は、昨今は流行っている「カスタマージャーニーマップ」などとも共通する部分がありますが、「カスタマージャーニーマップ」が施策全体を設計するのに対し、これはあくまでも、コピーを書かなきゃいけない人が、コピーの精度を上げるために設計されたシートだと言えます。

 いかがでしたか?「ムシ歯でかみ砕くUX」。上記でご紹介した項目シートは、実際に担当する業務に合わせてカスタマイズしてもいいと思います。「レイアウトサッカー」同様に、自分がコピーを書かなければならないサイト、ページ、コンテンツを取り巻くユーザーの視線や欲求の流れを客観的に追う習慣を付ければ、自ずと、コピーの精度・効果も底上げできると思います。

 それでは、ごきげんよう。さようなら。

著者:森田哲生(もりたてつお)

著者写真

1978年生まれ/多摩美術大学卒業後、編集プロダクション、デザイン会社勤務を経て2007年に独立し、コピーライター事務所Rockaku(ろっかく)を創業。広告代理店やメーカー、制作会社など多彩なパートナーとともに、コピーワーク、ネーミング、情報設計などを手がける。また、宣伝会議、OpenCU、CSS Nite、スクー、その他企業研修などでコピーライティングの講義を多数担当し、それなりにほめられているらしい。


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