AWS Cloud Roadshow 2014の全国行脚でクラウドの魅力を説き続ける
信頼の貯金でマインドを変える!長崎社長に聞くAWS躍進の理由
2014年11月12日 09時00分更新
クラウド分野において日本は欧米に遅れていない
TECH大谷:この数年のAWSの躍進はすさまじいものがあります。数年前は、AWSもセミナーの参加者が少ない時代があったと聞いていますが、ここ数年で一気に認知されるようになったということなんでしょうか。
ADSJ長崎:この1~2年で飛躍的に変わりました。なにより、エンタープライズの方々が真剣にわれわれの話に耳を傾けてくれるようになりました。4年前は、なんでアマゾンがクラウドやるの? そもそもクラウドってなに?という感じでしたので、信じられないくらいです。
TECH大谷:確かにAWSに関しては、顧客数の増加やパブリッククラウドの市場規模の拡大、マジッククアドラント、圧倒的なシェアなど、いい数字ばかりです。今日の長崎さんの講演もそうですし、サーバーワークスの大石社長の“切腹話”しかり、1人の聴衆として、こう言われちゃったらクラウド入れない理由ないよねという気持ちにさせられます。実際、日本のクラウド導入って海外に比べてどうなんでしょうか?
ADSJ長崎:よく日本のITは欧米に比べて3~4年遅れていると言われますが、クラウドに関しては、その差がありません。欧米と比べて遜色ない、場合によっては世界に比べても先進的な事例がいくつもあります。
特にスタートアップでいえば、ヌーラボ様とか、ファームノート様とか、完全に世界を視野に入れてビジネスを進めています。彼らは成功の確率を高めるためのツールとして、AWSを使っています。いわばDropboxやPinterstと同じで、お金を持っているか、否か、いかに関係なく、システムを利用できるので、投資を本業に向けることができます。「AWSがなければ、こうしたビジネスができなかった」という彼らの声を、日本中の起業家にお伝えしたいです。
まだクラウドが選択肢に入っていない企業に向けて
TECH大谷:とはいえ、エンタープライズでも絶対にクラウド入れないという会社がありますよね。AWS、ひいてはクラウドをより一層ブレイクさせるにはどうしたらよいとお考えですか?
ADSJ長崎:ご指摘の通り、確かに「クラウドはいやだ」というお客様もいらっしゃいます。こういうお客様の考えをすぐに変えることはできません。これに関しては「魔法の杖」はないと思っています。
実際、ここまで来るにも時間はかかったし、今後も一夜で変わるわけではないでしょう。日本通運様のような大規模なリプレース事例をのぞけば、ほとんどのお客様はテスト・開発からスタートして、検証を重ねて、導入を進めます。セキュリティの要件を数ヶ月に渡ってやりとりするという例も珍しくありません。
ですから、われわれは8年間培ってきたノウハウや事例、フットプリントを地道にお伝えする以外にはないと思います。その意味ではエンタープライズのCIOたちがノウハウを共有しあうE-JAWSの存在はとても大きいです。数年後が楽しみです。
TECH大谷:最近は、デスクトップサービスとか、ディレクトリサービスとか、ファイル共有とか、エンタープライズIT向けのサービスが増えていますしね。
ADSJ長崎:われわれも発展途上ということです。現時点でエンタープライズの要件をすべて完全に満たしているとは思いませんので、足りない機能があれば、どんどん追加していきます。お客様の声をきちんと吸い上げるとともに、事例が増えれば、導入も加速していくと考えています。とにかく時間がかかってもやり続けていこうと思っています。
価値を提供し続けることで信頼性を醸成する
TECH大谷:AWSに関してよく話題にあがる「ベンダーロックイン」の懸念に関してはどうですか?
ADSJ長崎:われわれは当初からロックインするとは思っていません。すぐに使えるし、すぐに止められますし、AWS上で動くアプリケーションも非常に多い。これだけ選択肢を用意しているベンダーはほかにないと思います。
TECH大谷:チェックインだけではなく、チェックアウトもできると。
ADSJ長崎:はい。旧来、ベンダーとお客様の関係は、導入というワンショットで終わり、あとはメンテナンスです。これに対して、われわれとお客様との関係は、お使いいただいてからが始まります。逆説的に言えば、お客様に価値を提供し続けなければいけません。われわれはサービスの価格を日々下げていますし、お客様が必要としていることを日々探しています。これを積み重ねるしか、長期的な信頼は勝ち得る方法はないと思っています。
その点、4~5年前に比べて、ADSJも人的リソースが増え、事例が増え、それらが“信頼の貯金”となって、少しずつ頼られる存在になっている気がします。