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遠藤諭の『デジタルの、これからを聞く』 第1回

藤井太洋氏に聞く、IT業界のすぐそこにある未来、いま起きている現実

ITとともに生まれた産業革命に匹敵する本質的な方法論

2014年04月16日 11時00分更新

文● 遠藤 諭/角川アスキー総合研究所

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NASAのデータを一般人が自由に活用できる時代だから

遠藤 (遺伝子工学を扱った前作から)宇宙に行った理由はなんでしょう?

藤井 単純に趣味ですね。

遠藤 IT業界では「宇宙旅行したい」と言っている人が本当に多いですよね。

藤井 やはり地球を外から見たいんでしょうね。さらにその先へ行きたい。絶対にそこはフロンティアですから。

遠藤 藤井さんも天文少年という感じだったんですか?

藤井 天文少年ではなかったですね。ただ、天の川がとてもよく見える場所に住んでいましたので。

遠藤 どのあたりにお住まいだったんですか?

藤井 奄美大島です。はっきりと星が見えるので、空を見上げるのは好きでしたね。

遠藤 天体は身近に感じられていて、今回それをテーマにしたと。

藤井 きっかけがありまして。2012年にNASAのデータを使ってアプリケーションを作ろうという「スペースアップスチャレンジ」の第1回に参加したんです。スペースアップスチャレンジはISSを含む世界中のハッカソン会場で、48時間で何か作ろうというもので、友人が「おもしろいよ」と誘ってくれて。ちょうど私もJavaScriptで遊んでいた時期だったので行きました。

INTERNATIONAL SPACE APPS CHALANGE 2014 TOKYOのウェブサイト

※国際宇宙ステーション(International Space Stationの略)

※プログラマーやデザイナーなどが集まり、集中的に何かを作るイベント。

遠藤 場所はどこだったんですか?

藤井 東京大学の駒場キャンパスです。そのときに作ったのは軌道を3Dで描くアプリケーションです。CSS 3だけで動くものでした。当時WebGLが動くブラウザーが出るか出ないかくらいのときで、「(WebGLは)来ないだろうなあ」と思いながらCSS 3を使っていて。3D transformationを使って地球をポリゴン分割した後にマッピングして、「人工衛星は今ここを飛んでいる」などが見られるビューワーを作りました。

遠藤 公開されたんですか?

藤井 一時期公開していましたよ。

遠藤 なぜそれが今回の作品のきっかけになったんでしょう。今まで遠く見ていた天体が数字になったわけですよね。

藤井 NASAがアーカイブしているデータに対して、ここまでアクセスできる点にまず驚きました。またそのデータを加工するのに、特別な装置などが必要ないということもわかったんですね。普通にJSON(JavaScript Object Notation)でも解析できますし、XMLでもいい。NASAの方でも標準的なAPIで公開してくれています。それを加工するのも、JavaScriptで動くライブラリーだったりしていて。そういう意味ではやり方さえ知っていれば、軌道上での振る舞いが十分に見えることがわかりました。

 参加者の中にはISSをレーザーポインターで指し示し続ける、ラピュタの飛行石のようなものを作っている人もいました。それを動かしているのもLinuxだったりとかで、基本的に私たちが手にしているコンピューターというものは、宇宙につながるところまで十分来ているんだなというのが、すごく印象的でした。そこでオービタル・クラウドのストーリーを思いついたんです。

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