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アマゾンの宿敵は日本企業だ【オムニ徹底解説】

2013年11月28日 16時45分更新

語り● 得平 司(流通・営業コンサルタント)

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【アスキークラウド1月号・特集連動ロングインタビュー】
ヤマダ電機やヨドバシカメラなど量販店は、アマゾンのようなECサイトにどう対抗しているのか。EC進出後、売り上げを出せている量販店はどこか。「ヤマダ電機の「PCDA」経営」著者、流通・営業コンサルタントの得平司氏に聞いた。(1万字相当)


――アマゾンのようなECサイトと日本企業の関係について伺いたい。まず、家電量販店とEC市場について。

 EC市場に過剰反応しているというのがわたしの考え。日本の小売業は134兆円市場(平成23年)だがECは10兆円。(売価の)影響力はたしかに大きいが、中間決算を見ていると、ECに入った企業ほど悪い。家電量販企業もECに参入しているが、利益額は大きく低下している。ヤマダは今年半期で赤字。エコポイントの駆け込み需要からテレビの売り上げが大きく落ちたとはいえ、超優良企業だったのが、たった2年で赤字。ECに過剰対応したのが原因の一つといわれている。家電市場はECとの価格競争による単価ダウンで市場そのものがシュリンクしてしまうという動きが出てきている。

 なぜヤマダ電機をはじめとする家電量販企業が利益を大きく減少させているのか。いちばん大きいのは、家電市場そのものが縮小していること。次に、売価をネットにあわせたことによる利益の落ち込み。ネットに積極的に対抗しようとする企業ほど利益が下がってしまう。将来のネットの勝者というのが何社かというと1社か2社。いまでいえばアマゾンと楽天。消耗戦に入っている。ヤフーが(出店手数料を)ゼロ円にしたことでさらに消耗戦となり新規参入は難しくなる。

 面白いのは楽天もアマゾンもヤフーもビジネスモデルが違うこと。家電量販企業は収益の多くは販売だが、ヤフーは広告で儲けている。アクセスが増えれば儲かる。アマゾンはダイレクト販売とマーケットプレイスのテナント料。格安販売で本体(リテール)が赤字になっても、マーケットプレイスの倉庫料・販売代行料・サーバー賃貸料が入る。物販以外のところで儲けが出る仕組みを持っている。楽天も出店料で儲かる。販売しか儲からない企業が参入してきても、みんな赤字になってしまうだけ。

 イメージでいえば(ベン図のように)三社があって、重なったところがECとする。ヤフーなら広告、アマゾンなら倉庫・サーバー、楽天なら出店料。販売は金額が多いが、収益はその他が多い。それぞれが別のサイフを持っている。楽天は今度カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と同じように会員、ポイントビジネスに手を伸ばしているし、アマゾンはプライベートブランド商品を作ったりしている。家電量販店のように利益の多くが物販というところが対抗してきたら討ち死にしてしまう。

 その中で、ヤマダもいろんなビジネスモデルを考えている。マーケティング理論でいえば、ブロードバンドと同じ。米国で、固定電話だけを契約している人よりも、固定電話とブロードバンドを一緒に契約している方が固定度が高くなる。IDビジネスと同じで、1人あたりの売価が高くなっていく。ヤマダ電機で言えばモールビジネスもあればゲームもあり、いろんなビジネスを組み合わせてトータルでやっていきたいということを考えている。物販と、GREEのような(ゲーム)サービス、トータルであわせていくら、という話。

 DeNAも創業から事業が拡大するまで数年以上かかった。まだまだ(ヤマダ電機のゲーム事業は)始まったばかり。収益モデルが作れるまで3〜5年はかかるはず。我慢できるかどうか。


――ヤマダがモールを始めたのは可能性があるから?

 アマゾン・楽天・ヤフーの3社に共通しているのは、基盤を売るビジネスであるということ。モノを売るだけではなく。ヤフーならたくさんの人が見に来てくれる場所。楽天ならたくさんの人が買いに来てくれる場所。アマゾンもおなじ。ヤマダ電機もおなじで、代わりにリアル店舗と物流があるからモールをやっても投資がいらない。ヨドバシカメラもおなじ。現状の経営基盤に、あとはそれにネットを持ってくればいいという話。


――顧客単価の上昇も大きな課題?

 そう。1人のお客さんが20〜30枚のカードを持っている、パソコンでいえば20〜30個のIDを持っている。それは不便だから集約していくだろう。ヤフーがTポイントカードを持っているCCCと提携したのはその典型。カードを集約することにより、結果として顧客単価アップにはつながるだろう。

 自分たちで基盤をつくるより、今ある有力な基盤を使ったほうがいいというのはアクセス数の問題が大きいはず。自社でやるよりも楽天に出したほうが人が来るとか、アマゾンを利用したほうがいいとかいうことになる。家電関係でいうと上新電機やビックカメラはアマゾンを利用している。もともとは一番店じゃない。ビックカメラは二番店。自分たちでイチからやるよりそっちを使った方が効率的という考え方。


――それでも家電量販店のECの売り上げはリアル店舗にくらべたらまだ微々たるもの。

 家電量販企業のEC売上高は、アマゾンや楽天に比べたら微々たるもの。1社で300億円くらいから伸びない。3年間ほど伸び悩んでる。それを突き抜けたのが上新電機で、500億円くらい。それはアマゾンなんかと一緒にやれたから。

 ただ、ビックでもいろんな企業でも、アマゾンから入って自分たちのところで買ってもらえばいいわけ。たとえば価格コムに入っている。そこから自分たちのところに戻ってきてくれればいい。ただ、われわれからすると、大きい問題は、ネット販売と、米国で出てきているオムニチャネルの問題が大きい。流通企業のほうがネット企業に逆襲している。

 米国では一部のネット販売業者の勢いが落ちてきている。リアル店舗が非常に近代化していくことにより、顧客は店に 戻ってくる。ネットも伸びているが、リアル店舗の逆襲が始まっている。ネットと店舗の境目がなくなってきて、たとえばお客さんがネットの商品から入って、アマゾンは今日は受け取れないが、ヨドバシならいまどこの店にあるというのが分かる。お客さんはそこに行けば受け取れるようになる。今まではネットで見てネットで買ってたが、これからはネットで見て店で買いに行くようになる。

 米国のファッション企業がやっているのは、接客強化。お客さんのスーツがあるが、色が気に入らない。いままではそれで帰っていた。ところがタブレットを見せれば、他の店にある、お客さんが好きな色の服を直送できる。全店在庫が個店の在庫をカバーできる。その店では売り上げが前年の140%になった。見る限りは誰でも自由に見られる。ネットが伸びていくと思うが、今度は店舗側の番。


――いちばん熱いところはどこか。

 たとえばカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)が来年、新しい家電店を作ろうとしている。TSUTAYA代官山のような電器屋になると思う。値段ではなく、好き嫌いの戦い。ネットの戦いはしょせん価格競争でしかない。ヤフーもアマゾンも消耗戦。消耗戦に巻き込まれるほどリアル店舗は売れなくなる。疲弊する。店舗も、メーカーも、価格競争に巻き込まれないような戦い方をしたい。メーカーはネットに出さない商品・売り場を作ろうとする。CCCもやってくるはず。

 TSUTAYA代官山のように、知的好奇心の高い人たちをターゲットにする、といった可能性。あるいはメーカーがだんだんそこに取り組みはじめていて、BOSEのようなメーカー直営店が増えていく傾向がみられる。あるいはネスプレッソのようにコーヒーを試飲しながら買ってもらい、コーヒーのサプライはネットで買ってもらうとか。ハードを売って、サプライはアマゾンとかで買ってもらう。そういったビジネスに変わってくるのでは。あと増えてくるのは、マーケティング的視点から見ると、売ったあとまで面倒を見たいというメーカーが増えてきている。売りっぱなしではなくカスタマーケアできるようなインショップを作る。オムニチャネルみたいな考え方ができるようになる。


――セブンやイオンはオムニチャネルの先頭か。

 いちばん力を入れているのはセブンとイオン。リアルもネットもできる。宅配ビジネスもできる。プライベートブランドも充実している。海外にないようなスタイルもできる。海外の研究もしている。ネットに対しての危機意識がある。このままいったら儲からない。そうなったとき、どうビジネスモデルを作っていくかという部分がある。

 米国のベストバイという家電があるが、カスタマーセンターを広げている。ネットへの対抗策として、顧客サービスを充実させている。ネットには返品とカウンセリングの問題がある。その部分を大型化している。イオンとかセブンとか、彼らはモールを作ろうという動きになっている。銀行やイオンなら病院も。モールの20〜30%をソフト・サービス関係(のテナント)で埋めていくようになっている。病院であるとか、トレーニング、フィットネス、カウンセリングとか。

 ネットで買うのは便利というのはみんなわかってきたが、ネットがどんどん便利になってくると、リアルの店店舗の収益性が弱まり、投資できなくなり、陳腐化してしまう。するとリアルが二極化して、ネットへの効果的な対抗策をやっていたところだけが残っていく。ネットになかなかできにくい売ったあとのケアができるところか、売る前の情報をしっかり出せているところに成長の可能性がある。


――物流はリアルの強みでもある。ヤマダもセブンもロジスティクスを完備している。

 1つは自前、1つは委託。デパートはほとんど委託。家電量販企業もだいたい委託。委託を受けているのは、家電メーカー系の物流会社。いまの三井ロジスティックスはサンヨーのメーカー物流を買収した。流通業の中でいうと、日立物流はイオンとやっている。メーカーの物流は、流通の元請けになってやっている。

 彼らは1社だけやっているわけではなく、物流が増えているので、売り上げは増えている。物流会社は大きくなってきて、小さい物流会社ではもう無理。そしてアマゾンくらい大きくなると、委託業者の物流センターへの投資金額が半端ではない。物流会社は大手EC会社の取引が大きくなり、1社の売り上げが大きくなりすぎると、下請け化して言うことを聞かざるをえない。物流会社はそれを恐れている。数社の委託でバランスを取りながら、お互い切磋琢磨をしてやっていきましょうと頑張っている。


――ヤマトは引き受けられる余力がある。

 採算に合わなくなったらやめる可能性がある。ネットの数は増えている。儲からない仕事になれば、やらないと断るだろう。


――ECが伸びていくと物流の比率が高まる。いま物流で伸ばしているのは。

 物流だけをやる会社ではなくなっている。ハイブリッド物流ではないけど、佐川やヤマトでは、エアコンの据え付けまで全部やるとか。物流から出てくるところのサービスを請け負うと。ネットで出来ないところを受けて、単価を上げる試みをしている。物流のやりかたが変わってきているし、物流のなかでも利益がとりやすくなってきている。

 モノを売る物流は昔からヤマトがやっていて、青森のリンゴはどうですかとカタログで売っていたりした。それに今度は付属品のようなものをつけて、たとえばわれわれの業界(家電業界)なら、冷蔵庫を配送する。そのとき床に敷く冷蔵庫用のマットもセットでどうですかと。マットも一緒に買っていただくと利益が高い。それは非常に利益率が高い。

 物流企業は、いまのところ絶対儲かる。一日のドライバー当たりの配送個数が違うから。ドライバー1人が百数十個配送している。1個500円としても生産性がすごい。100個としても5万円、それが30日で150万円。それがほとんど利益みたいなもの。物流というのは理論のかたまり。だから非常におもしろいのは、効率化をすべて踏まえた上でやっていると。海外とくらべて、日本の物流は優秀。見落としも少ないし確実。個数がたくさん出ているから、いまは付帯業務をやるよりも物流業務をやる方が儲かる。

 物流の鍵になるのは、日本郵政。あそこがいろんなサービスを始めている。いま始めようとしているのは僻地で「見守り」サービスのようなものを始めている。今日行ったら元気でしたよというのを手紙にして家族に届ける。買い物も全部やってくれる。これまで民営化しても動きが遅かったところが、ガンガンやるようになっていく。

 今までいろんなことができなかったところがやれるようになる。JRが民営化されてから、イオンやセブンに対抗できるだけの流通を持っている。駅ビルを持ち、ショッピングモールだけでも数兆円。


――JRはSUICAやNEWDAYSのような事業もやっている。

 どんどん新しい事業をやっていく。基盤を活かしたビジネス。郵便局なら特定郵便局があり、カネを集め、保険もやり、郵便もやっている。そこがネットと連動する可能性は充分にある。小包をネットで依頼できるとか。日本の流通業はいろんな世界にいっているがサービスの点では世界一。高齢化が流通サービスに寄与する可能性は高い。ネットとリアルの融合という形になっていく。ケータイの進化というのもあるけど、年配の方でも使えるようになっていく。物流は人と人のあいだ。日本郵政のように毎日「御用聞き」ができる企業は違う。ネットがどんどん進んできてIT化が進んでいくにつれ、どんどんウエットなところが重視されていく。


――セブンやイオンはよりECで差別化できるようになる。

 ビッグデータができれば本当の御用聞きになる。米屋がやっているが、世帯人数が分かれば何日後に米が切れるかが分かる。介護の人たちがやっているのは薬の投与を間違えないように初めに登録するシステムがある。自動的にケータイで「やってください」とメールが来る。同じように、この家は「いつもはコシヒカリだがワンランク上のコメを勧めてみてはどうか」というのがいくらでも出てくる。

 住宅をやっているとそれ(ライフステージに合わせた提案)ができる。住宅をやっているとどんどんモノが増える。3〜5年でふすまがダメになり、床がダメになり、10年で設備がダメになる。むかしそれをやっていたのは丸井だった。丸井のカードがステータスだった時代の話。大学に入った最初の夏休みに免許をとりにいく。大学1〜4年に何をするかというのがデータベースになっていて、それに応じて案内がくる。3年のころにはリクルートスーツを買いませんかという案内が来る。

 要は、どこが入り口をおさえるかという話。履歴マーケティングみたいなものはビッグデータが出てくるとやりやすい。ただ、全部情報を吸い上げられるのは怖い。ひとつのIDのもとに吸い上げられてしまったら、交流関係から何から何まですべて分析をされてしまう。技術進化がついてくると顔情報が出てくると、名前と顔がリンクしたり、背番号制度とリンクしたら、1つの情報がすべて吸い上げられてしまう。だから怖い部分もある。


――アマゾンに話をもどすと、家電のたたき売りがおさまったという話がある。

 いくつか理由がある。家電量販側から、マスコミを通して不当廉売の可能性があるという指摘があった。去年11月くらい。アマゾンは、成長性を確保していくために低価格販売を行う事がある。場合によっては、原価を割っても販売することがある。「数量限定」といった場合は、ある程度認められているが、恒常的に原価割れを起こすと不当廉売となってしまう。また、メーカーも原価割れやあまりにも大幅な割引は販売政策として望ましくないと考え、取引を縮小することを考える。アマゾンにとって取引が出来なくなるのはやはり困るので、販売政策を修正せざるを得ない。


――プライベートブランドをやるのはそこで利ざやをかせぐため?

 メーカーもブランド政策で、価格をあまり落としたくない。しかし、アマゾンでの売り上げも欲しい。解決策としてアマゾンのプライベートブラントをつくるという動きは当然出てくる。当然、プライベートブランドはある程度の利益も期待できる。


――アマゾンに対してのメーカーのスタンス、ECへの取り組みは?

 メーカーによってアマゾンに対してのスタンスは異なる。新しい取引先として成長させていきたいと考えるメーカーは積極的。とくに既存の販売チャネルを持っていないメーカーは積極的。但し、既存販売チャネルを持っているメーカーは対応が異なる。メーカーもアマゾンと一線を引いて、あまり積極的にやりませんというソニーのようなメーカーもある。パナソニックのように、門戸は開くが仕入れ値は下げないというところも増えている。メーカーもアマゾンより ビックカメラやヨドバシカメラ、ヤマダ電機の売り上げがはるかに大きいので、家電量販店を中心に販売政策を考えざるを得ない。(楽天については)家電販売の中小企業が多いので、お好きにどうぞという感じでやっている。メーカーが直接楽天に入れるケースも増えている。ヤーマンという美顔器ローラーを売っているメーカーは、直営店を楽天に持っている。エレコムも直営店を出している。メーカーの中でも、楽天やヤフーのように直営店を持っている中小メーカーは増えていくのではないかと思う。


――今までそれができなかったのが増えてきた理由は。

 既存の売り先を刺激したくないというのがいちばん大きかった。「おれたちを捨てるのか」とかならず言われてしまうのでやりたくなかった。あとはメーカーの定款に「小売り」という項目がないから。ソニーはソニーがやっているのではなく、ソニー・マーケティングが販売窓口。東芝もパナソニックもダイレクト販売をしているが小売りという項目はなく、子会社がそうしたものをやっている状態。既存の家電量販店やGMSはいい顔をしない。メーカーも(直売を)やっているが、売価は小売店より高い。メーカーがダイレクト販売を行うのは、一つはメーカー純正のサプライを販売する店舗が近くにない場合があり、お客の便利性に対応するのと、新製品等のテストマーケティングの情報収集、さらには過剰在庫や旧製品の処分の場合が多い。既存の流通企業の販売の邪魔をしない分野で行なっている。そうすれば流通は文句は言わない。流通業はダイレクトをやっても時代の流れだからしょうがないという意識を持っている。メーカーもオンラインの直営店を持っているけど、値段はやっぱり高い。


――あえてチャレンジした企業はあるか。

 アイリスオーヤマ。あそこは非常にしたたか。ちょっと見ると、アマゾンよりもアイリスオーヤマのほうがたしかに値段は高い。アマゾンの問題は商品名と値段しかついていないこと。アイリスオーヤマの商品は、説明を見ないと使い方が分からないようになっている。アイリスのページには動画説明がある。ポイントをつけたり、販促物をつけ、アマゾンよりも場合によっては安いときがある。だからアイリスから直で買う。IDがそこに落ちると囲い込める。アイリスはアマゾンの弱点をよく分かっている。商品の使い方はメーカーのホームページを見てくださいというアマゾンのやり方を逆手にとった。今これだとポイントがこれだけついてくる、実質アマゾンより安いとなれば、アマゾンよりもアイリスの方がいい。


――アマゾンを広告として使っているわけか。

 アイリスを見ていると非常にオムニチャネルをうまく使っているメーカーと感じる。ホームセンターにダイレクトの売り場を作っているし、非常にしたたか。ネット販売とホームセンターと家電売り場、アマゾン・楽天の売り場をどう使い分けているか。彼らのメインの販売先はホームセンター。何百人の女性スタッフを派遣している。きちっと商品説明をしている。そこの評判がいい。リアルはそこでおさえている。アイリスはオムニチャネルを比較的うまくやっている数少ないメーカー。アマゾンも利用しながら直営サイトでうまく囲い込んでる。ホームセンターの売り場はインショップをうまくやっている。次から次へと新製品を出していっている。


――CCCの家電量販店はどうなるか。

 結局、CCCもレンタルで売り上げが落ちている。ビジネスが変わってきて、データをふくめたマーケティングビジネスに変わろうとしている。面白いのは、今あるビジネスではなく次のビジネスについて考えているところ。家電というのは今までやってきたところではなく新しいところ。はっきり言って自分たちの行きたい店がない。電機屋もどこへ行ったって値段の叩き合いをやっているだけ。自分たちの行きたい電気屋を作りたい。

 たとえば米国に行くと調理家電は電気屋で売っていない。グルメ家電といいデパートで売っている。有名なレストランの横に食材屋があってグルメ家電の売り場がある。おカネのある人がグルメ家電を売っている。おいしいもののためにはおカネを惜しまないという人たちが集まってくる。中国のオーディオ売り場は日本よりもはるかにいい。リビングだから40平米の部屋をいくつも作り、オーディオの試聴室にしている。1部屋に1000万くらいかける金持ちがいくつもいる。そういうのを見ているとCCCの増田さんはオレの行きたい店を作るぞということじゃないか。


――2014年には何が起きるか。

 おそらく、商品ラインから変わる。3月に消費税駆け込みがあるから高額商品が買われる。4Kテレビや冷蔵庫・洗濯機といった家電が売れる。ただ、家電量販店の中で成長性が高いのはケータイ・スマホだけ。だから量販店の中でケータイの位置づけがますます高くなると思う。量販店の中で売り場も変わる。ネットに値段で負ける。非価格施策のようなものを打つことになる。ネットが出てくるということは、非価格施策をどれだけうまくやっていくかということ。

 1つのキーワードは「本物」。一眼レフでも「本物」は売り上げが落ちていない。一般のデジカメは落ちてしまうかもしれないけど。本物を売れる販売員を育成し、売ったあとのフォロースタイルが既存の流通に欠けている。ソニー、キヤノン、ニコンはカメラの撮影勉強会までやってフォローしている。そうしたことを流通業がやってくると思う。おそらくソリューションセンターのようなものができてくる。アップルでいうジーニアスバーのようなものが増えてくると思う。メーカーが売りっぱなしではなく、売ったあともケアをしていくような。


――先日PCデポさんのお話を伺った。あれもモノ売りではなくサービスを売りにする。

 そう。カメラのキタムラも利益の6〜7割はサービス収入。小売業ではなくサービス業。写真のプリントはセルフサービスだが、キタムラは案内してくれる。ウエットな部分。栃木に佐藤カメラというところがあり、カメラ業界では圧倒的な有名店。売ったあとまで徹底的に面倒を見るお店。キタムラはそこの影響が大きい。佐藤カメラであれば売るだけでなく、一眼レフはレンズを換えると埃がたまるがそれを無料で取ってくれる。写真を撮ったとき一枚ずつトリミングしてくれるとか。そういうのが徹底しているところ。アップルもそう。デザインのこまごましたところにこだわる人は、売り方にもこだわっている。


――小売りからサービス業へ。

 とくにオムニチャネルは面白い。ネットは消耗戦に入り、どこがどう出るか。ヤフーも楽天も海外に力を入れはじめている。孫さんがそこに入ってきて仕掛けてきた。消耗戦に入るということは、楽天とヤフーでネタの叩き合いになる。無料になれば楽天に出しているところは固定費がかかる。おそらく孫さんは消耗戦に入ったときの自信がある。ネットは楽天・アマゾン・ヤフーの3社くらいしか残れない。恐らくそういう状況になっていく。それにメーカーのダイレクトがどんどん増えていく。3社が共通しているのは自分たちではほとんどモノが作れないということ。楽天でいえばテナントが困ってしまうから。アマゾンもメーカーがIDを自分たちのところで取れるのであれば顧客の囲い込みができる。


――ヤフーはそれを見越して、リアルとの連携を前提に作っていく。

 あるある。その面でいえばオムニチャネル。ヤフーのほうがオムニチャネルに行きやすいはず。彼らは広告事業だからお店の人たちは広告を出しやすい。ヤフーのほうがまだネットで買ってもお店で買ってもどうぞと。こっち(ネット)をゼロにしてもこっち(リアル)が増えれば、という発想ができる。イオンだろうとなんだろうと協力してもらえる。Tポイントで連動している店もすごくある。手数料無料にするかどうかで議論したそうだけど、オムニチャネルをイメージした戦略が作れるかどうかで最終的に判断したんだと思う。そこでまた(オムニチャネル同士の)消耗戦が出てしまう恐れはあるけど。ビッグデータとオムニチャネルを組み合わせたやり方はヤフーの方がやりやすいと思う。たとえば薬をよく買っていて、病院に行こうとしていた客に対して、健康器具をたくさん売っているお店の案内を出すとかね。よりリアルに彼らができるのは、食品にアクセスしたら、スーパーでセールをしてますよという案内をするとか。

 彼ら(ヤフー)はIDに対して自信がある。われわれは一歩先に行っているという意識がある。あとはケータイが強い。アマゾンも楽天も課題がある。ヤフーはポータルがあるぶん強い。オムニチャネルはケータイ。店に行ってバーコードを読み込めばショッピングにも行ける。孫さんはケータイをやってるからそういうイメージがわく。オムニの面白いところはケータイを中心とした購入モデル。ケータイを使うとネットと思われるけど、たとえば店に在庫がないとき、商品の実物を見て、ケータイで注文すれば家に届くみたいな発想。


――お店で使う買い物アプリが出そう。

 絶対に出ると思う。販売員の役割も変わってきて、ご相談係みたいになる。お店に行って相談をしに行くとか。ヤフーはケータイを中心としたビジネスの流れを見ていったとき、アマゾンとか楽天なんかでもどちらかといえばまだまだパソコンを中心とした購入スタイル。あまりに商品アイテム数が多いと、ケータイで見るのは大変になる。ケータイもどちらかというとショッピングよりセンサービジネスになってくる。売り場に言ってピッとかざせば情報が出てくる、注文ボタンも出てくる。そうするとリアルとネットの融合が出来る。非常に面白い時代になるだろう。

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