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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第210回

チップセット黒歴史 負荷低減策が負荷を招いたIntel 5000X

2013年07月08日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 ロードマップのアップデートが一段落したので、久しぶりにチップセット黒歴史をお届けしよう。今回のテーマはGreencreekことIntel 5000Xチップセットである。

Intel 5000Xチップセット

 デスクトップ用というよりはワークステーション/サーバー向けチップセットに分類されるものだ。それでもごくわずかながら個人ユーザーで使われた方もいたようで、後継となるSeaburgはSkullTrailプラットフォームという超ハイエンド向けで採用されているため、デスクトップともまるっきり無縁ではないので説明していきたい。

FSBを2つ搭載する
Intel 5000シリーズ

 Intel 5000Xの元になったIntel 5000シリーズというチップセットが登場したのは2006年5月である。このIntel 5000シリーズは、Blackfordというコード名で開発されたものだ。経緯は連載38回で説明したが、おさらいしておこう。

 2006年当時、インテルはAMDに比べてネイティブのマルチコアCPUの導入がやや遅れていた。元々AMDは、最初のOpteronとなるSledgeHammerコアの時から、コアそのものは1つながら、内蔵するノースブリッジ部はデュアルコア構成を相当した作りになっており、2005年に投入したK8 Revision E(Egypt/Italy/Denmark)コアではプロセスの微細化によりネイティブでデュアルコア化する。

 対するインテルは、2006年に投入したDempseyベースのXeonでやっとデュアルコア化を実現するが、このDempseyはPentium Dと同じく1つのパッケージに2つのダイを搭載し、間をFSBで繋いだ構成になっていた。

Dempseyの構成

 これのなにが問題だったかというと、電気的にはCPUのパッケージ1個で2P相当になるから、デュアルプロセッサー構成というのは実質的に4P構成になり、FSBの速度を下げないと安定動作しないことになった。

デュアルコアXeonでそのまま2プロセッサーサーバーを作った場合の構成

 またXeon MP向け、つまりクワッドプロセッサー構成だと電気的には8P構成になり、これはインテルのFSBではサポートできないことになった。これに対応するため、FSBを2つ搭載したのがBlackfordシリーズのチップセットである。

2本のFSBに対応したBlackfordの構成

 FSBを2つに分ければ、例えばデュアルプロセッサー構成だと1本のFSBあたり2Pになるし、クワッドプロセッサーでも1本のFSBあたり4Pだから、これは従来と構成的に変わらないことになる。

 もっとも、これはあまりに力技といえば力技な解決法で、チップセットのボール数は1432個にも達しており、多層基板(安定して利用するには10層以上が必要だった)と相まってかなり搭載マザーボードは高価になったが、サーバー/ワークステーション向けだからこれは許容されたとも言える。

DempseyベースのXeonパッケージは42.5mm×42.5mmとかなり大きいが、裏面を見ればわかるとおり、約1.1mm間隔でBGAのボールが並んでいる

ボールの内訳。FSB0とFSB1という2本のFSBと、FB-DIMMがそれぞれ全体の4分の1弱のボール数を占めているのがわかる

 またクワッドプロセッサーに関しては、FSBを分割してもまだFSB1本あたり4Pとなり速度を上げにくいため、結局後継となるIntel 7300チップセットまで見送りになってしまった(こちらはFSBが4本出る)。

 ちなみにこのIntel 5000シリーズは3製品がラインナップされており、以下のようになっている。

  • Intel 5000P:ハイエンドサーバー向けの全部入り構成。FB-DIMMを4ch搭載し、PCI Express x4レーンを4本搭載する。またメモリーチャンネルのミラーリング機能も搭載
  • Intel 5000Z:Intel 5000Pの廉価版。メインストリームサーバー向け。FB-DIMMは2chに削減され、PCIe x8レーンも1本に減らされた。メモリーチャンネルのミラーリング機能も削減。
  • Intel 5000V:さらに安価なバリュー向け構成。PCIeを完全に削減。ただそれ以外はIntel 5000Zとまったく変わらない。

Intel 5000Pの構成。サウスブリッジにあたるESB(Enterprise South Bridge)とは、DMIのほかPCIe x4レーン×2で接続される

Intel 5000ZではFB-DIMMが2chに減り、外部接続用のPCIeも2×PCIe x4のみになった

Intel 5000Vはすでに外部接続用PCIeを廃止。ESBとの接続用のみになった

 なぜかIntel 5000Vのみコード名がBlackford-VSだが(Intel 5000ZはBlackford)、内部はまったく同じであり、パッケージもPCI Expressや未使用のFB-DIMMのものがReservedになっている以外は違いがない。

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