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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第2回

「歌ってみた」「ロストワンの号哭」「アヤノの幸福理論」「敗北の少年(kemu)」

連載第2回!myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」

2013年06月06日 11時00分更新

文● myrmecoleon

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 この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画の現在を紹介していきます。第二回は「歌ってみた」タグを取り上げてみたいと思います。
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筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2013』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
 Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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この連載がちょっと読みやすくなる用語解説コーナー

<タグ> ニコニコ動画で動画に視聴者が自由につけられる短いキーワード。ニコ動で動画を探すさいはこのタグで検索すると便利。
<カテゴリタグ> 「ゲーム」「歌ってみた」「VOCALOID」など、タグの中で特別な30個のタグ。公式ランキングが存在するなどいくつかの機能がある。
<マイリスト> ニコニコ動画の一機能。好きな動画を自分のリストに登録できる。このマイリスト登録数は、動画の再生数やコメント数とともによく評価の対象とされる。
<プレミアム会員> ニコニコ動画の有料会員のこと。動画の視聴や投稿、ニコ生の配信等にさまざまな優遇がある。
<中央値> 順番に並べてちょうど真ん中になる数値のこと。動画の再生数等は正規分布してないため、平均でなくこちらが実態をよく反映している。

10万人以上が投稿する「歌ってみた」タグ

 「歌ってみた」は、おもに自分で既存の楽曲を歌った動画につけるカテゴリタグです。「歌ってみた」タグの動画は現在61万以上投稿されており(ニコ動全体の6.6%)、「~ってみた」の付くタグでは最大です。

 このタグ最大の特徴は、膨大な投稿者人口です。これまで約11万2000名のユーザーが歌ってみた動画を投稿し、毎月2000名が新たに加わっています。

 男性の多いニコ動ですが、「歌ってみた」は女性が4割と多く、ニコ動の女性投稿者全体の4割が歌ってみた動画を投稿しています。また平均年齢も22歳と、カテゴリタグの中でも若いユーザーが最も多いタグです。

「歌ってみた」タグの基本データ
合計 中央値 参考:全体の中央値
再生数 22億0201万9000 250 526
コメント数 1億0611万4500 9 20
マイリスト登録数 6327万9520 4 3
コメント率 - 3.51% 3.54%
マイリスト率 - 1.79% 0.87%
「歌ってみた」タグの投稿者データ(公開ユーザーのみ)
プレミアム会員の比率 47.67%
女性の比率 44.16%
国外からの動画投稿者の比率 6.86%
平均年齢 22.3歳

※コメント率・マイリスト率はそれぞれコメント数・マイリスト登録数を再生数で割った値。拙著同人誌『ニコニコ動画統計データハンドブック2013』より抜粋。2012年12月上旬調査時点の値。

 動画の特徴としては音楽系共通のマイリスト登録率の高さがあります。一方で再生数は非常に低く、マイリスト登録数も高くありません。再生数の中央値は250。1万再生以上が4.2%、上位0.14%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中しており、この偏りはカテゴリタグの中では最大です。ちなみに女性が4割な一方、再生数の多い投稿者は男性が多い傾向があります。

週刊ニコニコ歌ってみたランキングの作者による歴代1位の歌ってみた動画を200本つないだ動画。同作者がニコニコ学会βで発表した考察も面白い

 タグの動画投稿・新規投稿者の増加は2009年から2010年にかけて劇的に加速しました。2011年以降は加速は多少落ちつきましたが、現在も月に1万以上の動画が投稿されています。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。2013年5月27日までの数字。2009年から2010年からの増加の注目。この時期はボカロ曲が歌われた時期であるとともに、ニコニコ大会議が開催され、歌ってみたに注目が集中した時期でもあります

 よく歌われる楽曲はVOCALOIDを使って発表された楽曲(ボカロ曲)です。

 以下のグラフに各年の「歌ってみた」タグで人気のあった楽曲を並べましたが、2007年から2008年はアニソンや「エアーマンが倒せない」(ボカロ以前のユーザー発の楽曲)およびそれらの曲をつないだ「組曲『ニコニコ動画』」などのメドレーを歌った動画が多く、ボカロ曲は初音ミク以降も「メルト」や「カンタレラ」に多少人気があった程度でした。

 ボカロ曲が主流となったのは2009年、「炉心融解」「ロミオとシンデレラ」「magnet」といった曲が歌われるようになってから。以降、人気の歌い手や曲調などは変わりながらも、現在までこの流れが続いています。

現時点で視聴できる歌ってみたタグの動画について、各年の前後半ごとに多かった曲名タグを順に並べたもの。2013年は5月まで。ボカロ曲は青、その他のニコ動発は紫、アニソン等外部の楽曲は赤に塗ってある。2009年前後のボカロ曲の増加がよく分かる

 「歌ってみた」タグは、ニコニコ動画初期から活発だったのに加え、ボカロ曲が好きでそれを歌って聞いてもらいたいユーザーの気持ちが動画の投稿を加速させました。2010年までの勢いはありませんが、歌ってみた人口の拡大は現在も止まらず、今後も15万人20万人と新たな少年少女たちが歌ってみた動画を投稿していくでしょう。

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