大事なファイルサーバーだからこそVNXeを使いたい
そして今回は、学内にあった70校のファイルサーバーを、データセンターのEMCのユニファイド・ストレージ「VNXe」に集約した。新たに導入したActive Directoryと連携したVNXeは、教員・生徒用の統合ファイルサーバーとして機能している。
今回、VNXeを選択した背後には、データやシステムの重要性がある。川上氏は「生徒の家族構成や成績、出席状況、保健関係などの個人情報が保存されています。なかには帳票をプリンアウトして5年間、20年間保存すべきというものもあります。システムが動かなくなったから、データがなくなりましたでは済まないわけです」と述べており、製品選定に関して信頼性や可用性という要件がきわめて大きかったことがわかる。
ローカルベンダーの製品がチョイスされることの多い官公庁系の案件では、EMC製品の選定に至るのはまだ珍しい。製品の選定に関わった四国通建 ICT事業部 今治営業所 SIマネージャー服部博文氏は、「通常はサーバーと同じベンダーのストレージ製品を選定することが多いのですが、川上前所長から『学校の大切なデータを保存するので、さらに安全性を高めたい』という意見をいただきました。大事なファイルサーバーの用途ですので、ストレージ専業ベンダーで、世界一のシェアもお持ちのEMC製品を使いたいと提案しました」と選定の背景を説明した。
服部氏によると、以前からEMC製品を使いたいという要望はあったが、コスト面でなかなか難しかったという。しかし、エントリモデルが100万円を切るVNXeであれば、十分導入できる。四国通建で導入した社内検証機を使った結果、初めてでもGUIが使いやすかったという。「日本語で、設定やインプリメンテーションが楽にできることがわかりました。コスト面だけでなく、こうした使いやすさも選定の大きな理由です」(服部氏)とのことだ。
導入した機種はデュアルコントローラーの「VNXe 3300」。デュアルコアのインテル Xeonプロセッサーを搭載し、最大120ドライブをサポートするVNXeシリーズのハイエンド機種だ。合計2台をデータセンターに設置し、クラスタリング構成で運用。「デュアルコントローラーなので内部的には二重化されているのですが、クラスタリングすることで、より高い信頼性や可用性を実現しています」(服部氏)とのことで、アクティブ-アクティブでレプリケーションを相互に行なっている。
さらに、VNXeに格納されたデータはオンプレミス側のサーバーにレプリケーションしている。そのため、万が一データセンターと高松市総合教育センターとのネットワークが途絶しても、ファイルを利用できる。二重・三重にも渡る堅牢なシステム構成を採用することで、高い信頼性と可用性を確保しているわけだ。
とはいえ、70校にもおよぶファイルサーバーの統合は、なかなか大変だったようだ。単にファイルを集結させるだけではなく、Active Directoryの導入にあわせ、今まで学校側で行なっていたフォルダやアクセス権の管理を統合しなければならない。また、本番を見越して、各校のデータを教育用ネットワーク経由で転送する必要があったという。「各校の担当者には、夏休み中にフォルダ構成とアクセスポリシーを統一してほしいとおねがいしました」(川上氏)といった準備を行なった後、四国通建が2ヶ月かけてVNXeへのファイル統合を進めたという。
効率化やセキュリティの先を見据えた教育クラウド
今回の高松市教育委員会の教育クラウドだが、年内にはインフラ構築を完了。すでに稼働を開始しており、2013年はこのインフラをベースに、校務支援用のアプリケーションを構築していく予定となっている。
高松市教育委員会が教育クラウドで実現しようとしているのは、単なる校務の効率化やセキュアな情報管理だけではない。川上氏は「今でも“チョーク1本で勝負する”という教員の方もいっぱいいますが、今後はそれだけでは難しいのも事実です。なにより教員自体がPCの便利さを体感し、最終的にはその体験を子供たちに還元してくださいと話しています」(川上氏)と述べており、“教育面のソフトウェア的な還元”が最重要課題となる。こうした意欲的な取り組みが実を結ぶまでの取り組みは、インフラ面が整った以降も、続くことになるだろう。
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