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最新ユーザー事例探求 第30回

VDI導入を見越して柔軟性の高いユニファイド・ストレージを選択

容量やバックアップの課題を解決!VNXを導入した小田急不動産

2013年07月22日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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小田急グループの総合不動産会社である小田急不動産は、大塚商会の提案の元、ファイルサーバーをEMCのユニファイド・ストレージ「VNX 5300」にリプレースした。VNX 5300を選定した理由は、ファイルサーバー統合だけではなく、将来的なVDI(Virtual Desktop Infrastructure)環境での利用を見越していたからだという。

データの増大と管理の手間からファイルサーバー導入を再考

 小田急不動産は小田急沿線の不動産の分譲・販売、賃貸、仲介などを手がける不動産会社。同社の情報システムグループはPCの導入からはじめ、ビルの入出金管理や販売、仲介などの顧客管理などのシステム管理を手がけている。「現在はPCをちょうどWindows 7に切り替えている途中です。だいたい世の中の流れにあわせて、PCやサーバーなどを更新しています」と小田急不動産 情報システムグループ リーダーの増田真久氏は語る。

小田急不動産 経営企画本部 経営企画部 情報システムグループ リーダー 増田真久氏

 今回のVNX 5300の導入は、Windowsベースのファイルサーバーが更新期間を迎えたのがきっかけだ。もともと同社はセキュリティ強化という観点から約250の業務用端末をシンクライアント化しており、ファイルサーバーにデータを保存する仕組みになっていた。通常であれば、このファイルサーバーを新しいものにリプレースすればよかったのだが、運用管理や可用性の面で課題を抱えていたという。

 1つめはデータの容量が増大してきたという点だ。ファイルサーバーに格納されている物件等の資料や経理、総務情報、仲介や販売系データなどは年々増加しており、磁気テープによるバックアップは夜間では終わらなくなっていた。また、容量的に日次バックアップは難しく、週1回のバックアップを4世代分とるというポリシーで行なっていた。そのため、「障害時は、最長1週間前まで戻ってしまうというアナウンスしかできませんでした。でも、ユーザーからは昨日の状態に戻してもらいたいという要望が来ていました」(國井氏)という。とはいえ、データ復旧の際にはテープからリストアする手間を強いられていたため、大きな課題となっていた。

 小田急不動産 経営企画本部 経営企画部 情報システムグループ チーフの國井昭良氏は、「容量の大きなサーバーに買い換えるのは簡単だったんですが、運用管理で限界を感じていました」と語る。

小田急不動産 経営企画本部 経営企画部 情報システムグループ チーフ 國井昭良氏

 2つめはファイルサーバー統合の必要性である。同社ではファイルサーバーのほか、安価なコンシューマ系NASも別途導入しており、ユーザーには重要なデータはファイルサーバー、削除しても良いようなデータはNASといった具合での使い分けを促していた。しかし、エンドユーザー任せの運用はやはり難しく、実際は重要なファイルが安価なコンシューマ系NASに格納されてしまっていたという。

 しかし、安価で大容量な分、コンシューマ系NASは信頼性や性能面で弱点を抱える。実際、同社で導入したコンシューマ系NASではディスク障害が多々起きていたほか、設定を変更するとフリーズしたり、アクセスが集中すると、パフォーマンスも落ちることもあった。「OSが動かなくなって、データセンターまで行って電源を入れ直したこともあります」(國井氏)と、痛い目にあったこともある。こうした経緯もあり、ファイルサーバーやコンシューマ系NASを専用のストレージに統合する必要性を感じていたわけだ。

ユニファイド・ストレージの柔軟性を評価

 こうした課題を感じていた國井氏は、2012年10月に大塚商会が定期的に行なっているセミナーに参加。そこで、相談を受けた大塚商会 LA首都圏営業部の武内保憲氏が提案したのが、EMCのVNX 5300のパッケージソリューションである「TWIN NAS」である。TWIN NASはストレージのハードウェアとソフトウェア、設定作業までパッケージ化にしたもので、5/10/15TBモデルでVNX 5300が採用されている。

 武内氏は、國井氏の話を聞き、従来のファイルサーバーのバックアップに問題を感じたという。「ギガバイト単位であればともかく、すでにテラバイト単位になっているデータのバックアップをネットワーク経由で取得するのは時間がかかります。もちろん、差分で取得することもできますが、障害時に戻すときにはやはり時間がかかります」(武内氏)と語る。その点、TWIN NASでは稼働系、待機系の2つのストレージをワンパッケージ化して提供しており、データもレプリケーションされている。シングルポイントもほとんどない、きわめて高い信頼性と可用性が確保されている。

大塚商会 LA首都圏営業部 民需第2グループ 首都圏販売3課 主任 武内保憲氏

 VNX 5300について、武内氏は「大塚商会でもいろいろな商材を扱っていますが、私としてはVNXを非常に高く評価しています。業務継続や高い柔軟性、なによりNASとSANを併用するユニファイド構成がとれるところが大きいです」と語っており、大塚商会としてもイチオシの製品だという。

 こうした提案に対して、小田急不動産ではパッケージソリューションのTWIN NASではなく、VNX 5300単体での導入を選択した。最大の理由はVDIの導入時には、VNX 5300を単なるファイルサーバーだけでなく、プロファイルを格納するSANストレージとして利用することを想定しているからだ。

 「確かにファイルサーバーのリプレースのみであれば、TWIN NASで十分です。しかし、先々VDIでの利用などを考えると、柔軟性の高いVNX 5300の方がよいだろうという判断です」と語る。また、レプリケーション先や時間が固定されているTWIN NASに比べ、バックアップやレプリケーションの構成が柔軟に行なえるという点も大きかったという。

 もちろん、コストパフォーマンスも大きなポイントだった。「以前もEMC製品を紹介されたことがあったのですが、当社の予算規模では導入できるレベルではありませんでした。しかし、VNX 5300の金額であれば、十分導入を検討できると思いました」と國井氏は語る。大塚商会の武内氏も、「4~5年前、同じ構成でEMC製品を導入しようと思ったら、おそらく桁が違っていました。今は製品の競争力も相当強いと思います」と述べており、価格的に中堅中小企業においては現実的な選択肢になったという。

 小田急不動産ではセミナー参加の1ヶ月後の11月にVNX 5300の導入を決定。2012年12月には納品が完了し、年が明けてからデータ移行を進め、現在はすでに稼働を開始している。「ボリュームの構成やアクセス権設定などは大塚商会さんにやっていただき、データ移行は情報システム部で進めました」(國井氏)。

データ管理のレベルが大幅に向上

 VNX 5300自体は小田急電鉄のデータセンターに設置されており、ネットワークを介して利用している。実効容量としては3TBが用意されており、既存のファイルサーバーやコンシューマ系NASから移行されたデータが収められている。

VNX 5300のシステム構成。将来的にはVDIでの利用を想定している

 導入効果としては、やはりファイルサーバーの統合が実現し、データ管理のレベルが大幅に向上したことが挙げられる。コンシューマー系NASとは異なる高い信頼性や性能、可用性を実現したことで、情報システム部の負荷が大きく軽減された。

 また、VNX 5300では筐体内で常時レプリケーションを行なっており、リアルタイムにデータを複製。コントローラーの障害においても、データが適切に保護され、システム自体が運用継続できるようになっている。スナップショットを用いて、毎日2週間分のバックアップを取得するようにした。「バックアップの世代管理が可能になり、ユーザーの要望にも応えられるようになりました」(國井氏)。これにより、従来に比べ高いデータ保護レベルを実現したわけだ。

 さらにVNXの大きな特徴である重複排除も活用しており、積極的にデータの容量自体も減らしている。ファイルサーバーの運用に際しては、ユーザーに不要なファイルを削除するようアナウンスしているが、なかなか実現されないという課題があった。その点、重複排除はファイルを削除しないで、重複部分を排除したり、圧縮をかけることが可能だ。「重複排除は以前にもご提案いただいたのですが、別途アプリケーションを導入する必要がありましたし、実際使ってみないと効果が読めませんでした。VNXの場合、標準で搭載されているのがありがたいです」と有用さを実感しているようだ。

 こうして小田急不動産の話を聞くと、ユニファイド・ストレージ、重複排除、レプリケーションなどVNXのメリットをフル活用しているようだ。國井氏は、「うちでほしい機能をすべて標準で持っている点が選定の決め手です。VNXを導入することで、トータルとしてデータ管理ができています」とまさにベストマッチであると評価している。また、「ストレージがすでにVDIに対応しているので、2013年度の投資を前倒しにできたと考えています」(増田氏)とのことで、予算も有効に活用できたという。

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