渡航者の間でのプレゼンスを高める
ビジョンの場合、サービス対象地域の選定と接続方式の拡充は、渡航者数の大小よりも「渡航者の間でいかに存在感を出せるか」で判断している。同社のリピート客は常に10%〜20%と一定数存在する。利用客数が累積で増えれば増えるほど、以降の月で安定したリピート客需要、口コミによる客数増加が望めるため、「携帯キャリア未対応の地域で使える!」「格安で3G(または4G)で接続できる!」と謳って、まずは注目を集めて使ってもらうことが大事になる。
従来のSIMレンタルビジネスは、ディーラーを介して現地の接続事業者から調達したSIMを貸し出している。ディーラーへのマージンが発生するぶん、SIMの貸出料金は高くなってしまう。そこでビジョンは現地に乗り込んで接続事業者と交渉し、法人契約を結んでSIMを直接調達することで原価を抑えて低価格を実現している。需要の予測がつかない国については、サービス開始時にSIM数枚から始めるなど初期費用をかけず、需要の増加を見て素早く追加調達している。
国によっては苦労が伴う。昨年11月から3G接続の対象エリアとなったミャンマーの場合、調達方法がわからなかったため、日本企業の駐在員や現地の民間人に聞き回ってパートナー候補企業を見つけて交渉し、現地での接続テストを重ねてサービスインにこぎつけた。
4G接続の対象地域はもっと増やせる
日本からの海外渡航者は2012年で約1800万人。対してWi-Fiレンタルサービスの利用者数は競合を合わせても十数万人程度で、まだまだ伸びしろはあるとビジョンは見ている。4G接続の対応地域を増やして通信品質を向上させること、法人ユースを開拓することが今後の方針だ。
同社のルータレンタル事業担当者の五味氏が一例として挙げるのはジャマイカ。すでに3G接続サービスは提供しているが、去年のロンドン・オリンピックの時期にウサイン・ボルトがイメージキャラクターになったDigicelが4G接続サービスを提供しているのだ。
「世界中に4G接続サービスを提供している国はまだまだあるので、今後拡充していきます。最初は需要は少ないかもしれませんが、4G接続の対象地域を広げたいですね」