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40代記者が身につまされた生々しい介護の実態とクラウド

両親が倒れたら?介護の課題をクラウドで乗り越える

2013年01月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1月18日、Webエンジニア向けイベント「エンジニアサポートCROSS」が開催された。今回は、本来のイベントの趣旨である技術交流とはやや異なった「介護とクラウドを活用した働き方」をテーマにしたセミナーにお邪魔した。

クラウド型ワークスタイルの価値を考える
異色セッション

 エンジニアサポートCROSSは、ニフティのエンジニアサポートプログラムから発展したイベントで、言語やクラウド、データベース、フロントエンド、運用管理など細分化が進みつつあるWebテクノロジーのエンジニアに、他の技術への洞察や人材交流を深める機会を提供する趣旨で始まった。昨年の第1回目は参加無料で、夕方からのセッションと懇親会という流れだったが、今年は参加が有料になり、午前中から数多くのセッションが組まれるより本格的なイベントになった。スポンサーもニフティのみならず、DeNAやグリー、ヤフーなど日本を代表するWeb企業が名を連ね、参加団体も多くなった。

 そんな中、今回レポートするのは、こうした技術交流イベントの中でも異色とも呼べる「クラウドな働き方 x 介護 ~来るべき育児と介護をどうITの力で乗り越えるか!?~」。親の介護や育児のためにワークスタイルを変えたJAWS-UG(Japan AWS User Group)を中心にしたメンバーたちが、クラウドを使ったワークスタイルに至った経緯や実践について生々しく語った。

「クラウドな働き方 x 介護」のセッションの模様

 まずセッションオーナーであるサーバーワークスの小室文氏が披露したのが、さまざまな研究機関が明らかにしている人口問題の統計や基本調査だ。たとえば、現在15~64歳といういわゆる生産年齢が66%を占めており、65歳以上は27%だが、2045年には65歳以上は40%に増加する。「介護は必ず来る。しかも突然来るんです」(小室氏)。また、IT産業は極端に首都圏に寄っており、地方では仕事がない状況。さらに、年老いた親の介護は家族が携わるべきという意見が多いが、経済的な支援については反対意見が見られるといったアンケートも披露された。

 こうしたさまざまな調査から得られたのは、「今後介護が必要な人が大幅に増えるのに対し、介護する人材は圧倒的に足りなくなる」、「東京以外には仕事がない」、そして「こうした事態に多くの人が困る」といった前提だ。厳しいと言わざるを得ないこうした未来を「変えるまではいかないかもしれないけど、良くするくらいはできるかもしれない」(小室氏)というのが、クラウドを最大限に活用した新しいワークスタイルの提案だ。

調査や統計から得られた自分たちの未来像

震災と両親の病気が
ワークスタイルを変えるきっかけに

 こうした前置きのあとに登壇した欧文印刷の田名辺健人氏は、本社のある東京から実家のある北海道に移住し、クラウドを活用したテレワークを実践している経験を語った。

 田名辺氏は名刺発注やブログ製本などのWebサービスの開発を担当するエンジニア。7年前、子供が生まれたのを期に自然豊かな北海道に帰りたいという気持ちが頭をもたげ始めたと語る。しかし、20年近く仕事してきた東京を離れること、北海道に戻って仕事することに非現実感があり、日々の仕事に忙殺されてきたという。

 きっかけは3・11だ。通勤で使っている電車が1日中止まり、地震の揺れで棚に置いてあったコンシューマNASが宙を舞う。田名辺氏は「当たり前だと思っていたものが、いとも簡単になくなった」ことに大きなショックを受けた。そして震災後、仕事に復帰した田名辺氏は、まずツールやデータをAWSのクラウドに移したという。「以前は、われわれのような製造業がこんなDRをやろうとするとコスト的に無理だったが、クラウドのおかげで安価に、スピーディにできるようになった」(田名辺氏)。

3・11では当たり前だと思ったものが、いとも簡単になくなった

 こうして仕事環境やシステム自体をクラウドに移し、ひと安心した田名辺氏だが、その1週間後にもともと難病認定されていた両親の症状が悪化してしまった。そのため、両親の近くでサポートする必要が出てきたのだ。この段階で田名辺氏が気がついたのは、「必要なリソースはすべてクラウドにあり、実はどこでも仕事ができること」だ。もともと北海道に帰りたいという漠然とした思いがあったのに加え、大震災と両親の病気。「今動かなければ、一生やらない」と一念発起した田名辺氏は、家族と共に北海道に移住することを決断したという。

(次ページ、Google AppsとSkypeでコミュニケーション)


 

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