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「CROSS 2014」で語り尽くされた、プライベートを幸せにするための技法

エンジニアの恋と愛とセックス、成功の鍵は“アジャイル”にある

2014年02月27日 06時00分更新

文● 五味明子

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ITエンジニアが幸せになれば、社会全体が幸せになる。だから仕事だけでなくプライベートでも幸せになってほしい――。1月17日に開催されたWebエンジニア向けイベント「エンジニアサポートCROSS 2014」で注目を集めた異色のセッション「エンジニアの恋・愛・セックスのDevOps、ホントのところどうしたらいいの?」。エンジニアが幸せな恋・愛・セックスを勝ち取るにはどうすればいいのかをテーマに、男女4人の登壇者が2時間にわたって真剣で熱い議論を交わした。

「エンジニアが幸せになれないのは、社会の何かがおかしいのでは」

 同セッションのセッションオーナーを務めたのは、サーバーワークスの小室文さんだ。小室さんといえば、クラウド/AWSのスペシャリストとして知られるエンジニアだ。これまで数多くの男性エンジニアと共に仕事をしてきた小室さんだが、“彼女いない歴≒年齢”のエンジニアや、結婚したくてもできないエンジニアが増えていく現実に接するうち、「彼らがプライベートで幸せになれないのは、社会の何かがおかしいのでは」という思いを抱くようになったという。

セッションオーナーを務めた小室さん。AWS/クラウドに精通したエンジニアだ

 「合理的に物事を考えるエンジニアなら、恋愛やセックスといった感情の分野もきっと体系化して学べるはず。それを通じてたくさんのエンジニアが幸せになってほしい」(小室さん)

 小室さんはセッションの主旨をこう説明し、議論がスタートした。

恋愛に対するエンジニアのスタンスは業種別?

 同セッションでは、強力な個性を放つ3人のスピーカーが登壇した。Android向け日本語入力アプリ「Shimeji」のUI/UXを担当するWebデザイナーの矢野りんさん、多くのヒット作をもつAV監督の二村ヒトシさん、イラストレーター/デザイナーで女性向けWebマガジン「東京ナイロンガールズ」編集長のコヤナギユウさんだ。

エンジニアの恋と愛、セックスについて熱く議論を交わしたパネリスト3氏。左から矢野さん、二村監督、コヤナギさん

 IT業界でのキャリアが長い矢野さんに対し、二村監督とコヤナギさんはITに関してはまったくの門外漢。そのためセッションはまず、二村監督の「そもそも“でぶおぷす(DevOps)”って何ですか?」というド直球の質問から始まった。矢野さんがこの問いに答えつつ、恋愛というテーマに話をつないでいく。

 「仕様が確定したら、完璧でなくてもいいからまずは早く開発(Development)してローンチし、運用(Operations)しながらバグを修正していくというやり方がDevOps。これをエンジニアの恋愛にたとえると、とりあえず(恋愛を)始めてみたはいいものの、運用、つまり進め方がわからないという男性が多いのでは」(矢野さん)

 もっとも、一口にエンジニアと言っても「チャラい連中もいればマジメな人もいるので一概には言えない」というのが矢野さんの見方だ。ざっくり分類して、それぞれ次のようなイメージがあると、矢野さんは率直に語る。

  • Webのフロントエンド開発エンジニア=「IT業界でいちばんチャラい」
  • ゲーム開発エンジニア=「いろいろヤバい感じのオタクが多い(2次元の女性が好きすぎるなど)」「リアルな女性に対して一歩引いている」
  • エンタープライズエンジニア(例:Javaを書けるプログラマ)=「世間の常識をあまり踏みはずさない」「既婚率が比較的高い」

 一方で、コヤナギさんが持つエンジニアのイメージは、「恋愛で傷ついたり悲しい思いをするくらいなら、誰にも触れないほうがいい。そう思い込んでいて、恋愛に踏み込めない男性が多い気がする」というものだ。

互いの感情が絡む恋愛は「非論理的で扱いにくい」もの?

 エンジニアの主業務ともいえるコーディングは、システマティックであることを良しとする。一方で、恋愛やセックスは互いの感情が複雑に絡むため、エンジニアが得意とする合理性が発揮できない分野と思われがちだ。扱いにくい感情が障壁になり、恋愛や女性との接触を避けてしまう男性はたしかに少なくないのだろう。

 だが、はたして感情はそんなにも非論理的で扱いにくいものなのだろうか。恋愛に踏み込むことを躊躇させるほどの大きな脅威なのか。小室さんは「決してそんなことはない」と述べたうえで、「恋・セックス・愛の関連表」というスライドを見せた。

小室さん作の「恋・セックス・愛の関連表」。なおエストロゲン(女性ホルモンの1つ)が増加すると、セロトニンも増加するという関係にある

  セックス
What
(それは何)
PEA(フェニルエチルアミン)、ドーパミン オキシトシン、エストロゲン オキシトシン、セロトニン
When
(いつ発生して
いつ終わるの)
目で見たものに対して分泌される(不安定状態)。PEAは約3カ月~3年で減少する 肌の接触、刺激 PEAの減少後、睡眠、運動、日光
Where
(どこで発生するの)
脳内 体、卵巣、精巣、肌 脳内
Why
(どうしてそれが大事なの)
脳が快感を示している 性欲が高まる 精神安定
How
(どうしたらこれを使って幸せになれるの)
ドキドキ 快楽 心の安定

 つまり、人間は置かれたシチュエーションに応じて分泌される化学物質が決まっており、それが感情を左右するのだから、それに合わせた適切な行動をシステマティックに取ることは十分に可能というわけだ。

 多くの女優の感情に日々触れている二村監督も、小室さんの意見に同意する。

 「人間の感情はそんなに壮大でロマンチックなものではない。人それぞれ違うが、あるスイッチを押すと機械的に出てくる感情というものはある。むしろ人間の心は非常にシステマティック。だからこそAVのように、エンターテインメントで性欲を扱うことができる」(二村監督)

「男性なら僕の作品は必ず観たことがあるはず」と二村監督。独自の恋愛論をアツく語るも、IT用語はさっぱりわからないようで「ウォーターフォールって何?『覆水盆に返らず』ってこと?」などの迷言も

「恋と愛」は別モノ、むしろ「愛とセックス」のほうが不可分

 興味深いのは、「セックス」と「愛」では同種の化学物質が分泌されるのに対し、「恋」においてはまったく別の物質が出てくる点だ。生体リズムを整え、感情をおだやかにすると言われるセロトニンは、恋では分泌されない。つまり、恋とは「落ち着かないもの、攻撃的なもの」であり、“恋愛”とひとまとめにして、恋と愛を同じ感情として見るのは間違いということになる。

 「愛は恋の進化形ではない。どちらかというと愛とセックスのほうが深く結びついている。逆に一方的な恋は、憎しみや犯罪にまで発展することもある」(二村監督)

 その理屈ならば、頻繁にセックスが行われるAVの撮影現場はいつも愛にあふれていることになりそうだが、そこは事情が異なると二村監督は説明する。

 「AVのセックスは、お客さん(ユーザー)が興奮することが大前提。恋や愛が先にあるわけではない。だが“絡み(セックス)”を通して女優と男優の間に擬似恋愛感情が生まれ、結果として映像がより生々しくなるケースはある。ただし女優の目が“ハート状態”になるほど男優に恋をしてしまうと、お客さんがしらけるので作品としてはダメになってしまう」(二村監督)

 はじめに肉体関係ありきでも恋愛に発展していく可能性はあるが、セックスをすれば必ず愛に発展するわけではない。相手のある行為だからこそ、やはり「感情のスイッチを正しく押す」ことが大切になってくる。

 「AVの現場でダメな男優というのは勃たない男優。逆に仕事ができる男優は、自分の感情のスイッチを持っていて、女優と仲良くなるポイント、勃つポイントを知っている。女優に対する心のケアも怠らない。そしてお客さんをしらけさせないために、深入りしすぎないようにも心得ている」(二村監督)

(次ページ、エンジニアはなぜ「非モテ」か、本当に「非モテ」なのか)

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