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OpenFlow/SDNの波が来た 第15回

仮想化ネットワークでハードとソフトとの統合を目指す

ブロケードが推進するファブリックとSDNの未来

2012年12月26日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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IPとストレージのネットワークを手がけるブロケード コミュニケーション システムズ(以下、ブロケード)が現在、強力に推進しているのが、ファブリックとSDN(Software-Defined Network)を中心としたネットワークのシンプル化だ。同社のデータセンターテクノロジー部 部長 小宮崇博氏に、これまでの実績と今後の取り組みを聞いた。

1事業者で最大250台という事例もあるファブリック分野

 SANスイッチを手がけてきたブロケードが、IPネットワーク機器を展開していたファウンドリーネットワークスの買収を完了してからすでに4年の月日が流れようとしている。この間、ネットワークトラフィックや管理負荷の増大という事態への対応が求められ、同社は仮想化を中心にした戦略と製品を投入してきた。「われわれはサーバー単位ではなく、システム全体を仮想化し、仮想データセンターを構築。その上でファブリックを動かす」という方向性だ。そして、現在も仮想化への対応とネットワークのシンプル化を実現すべく、「ファブリック」と「SDN」の両輪で新しい技術と製品を投入し続けている。

ブロケード コミュニケーションズ システムズ データセンターテクノロジー部 部長 小宮崇博氏

 ファブリック分野においては、Ethernetの世界に高品質なFC(Fibre Channel)の概念を持ち込んだ「イーサーネットファブリック」で技術的なリーダーシップを確保している。データセンタースイッチ「Brocade VDX」を複数台でクラスター化。レイヤ2のマルチパスネットワークを実現するVCS(Virtual Cluster Switching)によって、高い可用性と拡張性を持ったネットワークが構築できる。

 また、イーサーネットファブリックでは仮想化環境での柔軟性も大きなメリット。仮想サーバーが移動しても、ネットワーク設定をファブリック側で自動的に行なってくれる。「仮想マシン設定変更を自動的に行なえるので、『パスワードを忘れてしまっても問題なかった』というお客様の声もあった」(小宮氏)という。

従来の階層型ネットワークとイーサネットファブリックのアーキテクチャ

 製品としては2011年1月に「Brocade VDX 6720」を出荷した後、9月に「Brocade VDX 6710/6730」を拡充し、ラインナップを充実させた。また、日立、富士通などのブレードサーバーに組み込みスイッチとして提供されるようになっており、「買ったときにすでに組み込まれているエコシステムを作っている」(小宮氏)という。

 こうした施策は確実に実を結んでいるようだ。小宮氏は、「この2年間、イーサーネットファブリックを売ってきたが、現在では世界700社、国内でも150社の導入実績を持つことができた。国内では2台~4台からスタートし、増やしていたら20台になっていたという例が多い。結果的に1事業者で250台近く導入しているところもあり、しかもそれくらいの導入規模が数社ある」と、高い実績をアピールした。この1ヶ月だけでも、NTT西日本の「Bizひかりクラウド」、GMOクラウドの「GMOアプリクラウド」の導入が発表されており、イーサーネットファブリックのメリットと実績が国内のサービスプロバイダーを確実に魅了しつつある。

 そして、2012年10月に発表されたのが、シャーシ型スイッチの「Brocade VDX 8770」だ。4スロットと8スロットのモデルが用意されており、最大384個の10GbEポート、最大96個の40GbEポートを搭載できる。こうした高い拡張性により、単一のファブリックで最大8000ポート、38万4000の仮想マシンへの対応を実現する。「スケーラビリティや多ポートの面で今までのモデル不足している部分を補う」(小宮氏)とのことで、文句なしのスペックを実現したわけだ。

大規模なイーサネットファブリック構築が可能に

DevOps的なインフラ定義も可能なSDNの将来像

 シンプル化を実現するための要素技術という意味では、ファブリックもSDNも位置づけは同じだ。手作業での設定や構築を排除し、ネットワークの各エレメントのインテリジェインとを持たせることで自動化を追求する。小宮氏は、「SDNを突き詰めると開発者がアプリケーションに合わせて、インフラを定義する『DevOps』的な取り組みも容易になる」と述べる。

シンプル化を実現するためのSDN技術の適用

 ブロケードは以前からOpenFlow/SDNに熱心なベンダーではあったが、昨今はより全面的な展開になっているのが印象的だ。従来から同社はスイッチやルーターでのOpenFlow対応を積極的に進めており、既存のネットワークトラフィックとOpenFlowを同居させるハイブリッドモードが実現されている。また、NECをはじめ他社製品との相互運用にも積極的に参加している。

 今後のファームウェアでは、OpenFlowトラフィックを例外ルールとしてフィルタリングし、トラフィックエンジニアリングに活用することができる。これにより、IP/MPLSネットワークとOpenFlowを同居させ、特定のアプリケーションのための仮想ネットワークを提供できる。実際、米国の研究ネットワークであるInternet2において、ブロケードのハイブリッドモードを用い、大規模な環境でOpenFlowを動作させるという。

 コアルーターの「MLXe」においても、ハイブリッドモードのOpenFlowをサポート。新ラインカードが投入したことで、1シャーシあたり最大768個の10GbEポートを搭載可能。より大規模なSDN対応のネットワークが構築できる。「今後は物理的な機器だけではなく、仮想スイッチやアプライアンスとつないで、SDNを構築する必要がある。これには当然オープン性のある技術を採用する」(小宮氏)とのことだ。また、オーバーレイに関しては、ロードバランサーであるADXにVXLANのゲートウェイ機能を追加した。VXLANとVLANをマッピングすることで、非VXLAN機器との中継が可能になる。

オーバーレイプロトコルでの仮想化も着々とサポート

 そして、従来欠けていたソフトウェア戦略も、先日のVyatta(ビアッタ)の買収で明確になった。Vyattaはオープンソースのソフトウェアルーターで、今後同社はハードウェアとのシームレスな統合を目指すことになる。2013年も目が離せない。

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