7月12日、ブロケードコミュニケーションシステムズは、1月に同社CEOに就任したロイド・カーニー氏を招いての事業戦略説明会を開催した。カーニー氏は、仮想化やクラウドの波の中、ネットワークだけが20年前と変わってないと指摘し、リプレースを訴えた。
複雑なネットワークを解消せよ
「サーバーやストレージ分野は大きな変化を遂げた。かつてピザボックスと言われた1Uのサーバーはスーパーミニコンと同じ性能を実現している。しかし、ネットワークは20年前と変わっていない。相変わらずケーブルがあり、ラックがあり、ポート数は増える一方だ」。ベイ・ネットワークス、ノーテル、ジュニパーといったネットワーク畑の要職を歴任したほか、シーゴ・システムズのCEOとして仮想化の現場を見てきたカーニー氏だけにこうしたコメントにも重みがある。仮想化の分野において、ネットワークのみが取り残されている現状を歯がゆく感じているのだろう。
さらにカーニー氏は、トラフィックの傾向がインターネットに抜けるノース-サウス型から、データセンターのサーバー間でやりとりされるイースト-ウェスト型に変わりつつある現状、今後数年で50億台が出荷されるモバイルデバイスの増大といった現状を説明した。
こうした現状に対し、CPUの処理能力は向上し、メモリの価格はダウン、データセンター自体の仮想化が進んでいるにもかかわらず、ネットワークは複雑さを増しているとカーニー氏は指摘。その上で、「プロビジョニングに時間がかかりすぎる」「運用管理負荷が大きすぎる」「設計・運用が非効率的」「ベンダーロックインによる柔軟性が欠如」といった問題点を挙げた。「現在のネットワークエンジニアは数多くのポートを用意し、20%の稼働率に抑えればよいと考えている」(カーニー氏)という非効率な状態。単一ベンダーによるロックインがネットワークの仮想化を阻害し、複雑さは顧客の負担になっていると述べた。「サーバーやストレージの分野で仮想化が成功したのは、マルチベンダー指向だったからだ」(カーニー氏)
カーニー氏は、ブロケードがこうした課題に長らく対峙してきたと主張する。同社のデータセンター向けのテクノロジーであるVCS(Virtual Cluster Switching)によって、シンプルなL2ベースの仮想化対応ネットワークを実現してきた。Brocade VDXスイッチに搭載されたこのVCSにより、データセンターのネットワークにおいては高い拡張性や信頼性、コンビグレーションや管理の自動化を得られるという。
たった3行のコードで2000ノードを設定
カーニー氏がVCS Fabricのメリットとして挙げたのが、設定の容易さ。競合の製品で2000ノードのインフラの設定を手がける場合、3800以上のコマンドラインが必要で、18のコードエラーが生まれるという。この結果、システムクラッシュが発生すると、分あたり5000ドルというコストがかかると説明した。これに対し、複数のスイッチを単一の論理スイッチとして扱えるVCSでは、電源を入れ、スイッチごとのIDである(RBridge ID)を設定し、ケーブルをつなげるのみで済む。また、導入コストも低廉で、TCOも低く抑えられ、コストメリットも大きいという。
さらに、カーニー氏はベンダーロックインや運用管理の負荷軽減をもたらすSDNやNFV(Network Function Virtualization)についても言及。SDNを操作する側、NFVを操作させる側の技術と位置づけ、幅広い製品でのOpenStackへのサポート、オープンソースSDNコントローラーのOpenDayLightへのコミットなどを従来通り推進していくと説明した。
データセンターネットワークにおいても、SDNにおいても、トップベンダーとの勝負は避けて通れない。これに対して、カーニー氏は、「単に10~20%安いだけでは、移行までは難しい。一方、トレーニングや管理まで含め、コストを4倍も払っているのだとわかったら、移行を検討するだろう。既存のデータセンターは難しいかもしれないが、新しいデータセンターであれば、明らかにブロケードにリプレースしたほうがメリットが大きい。性能やクーリング、稼働率など優れている点を強く伝えていく必要がある」と述べ、リプレースのタイミングで、ブロケード製品のメリットを訴えていくと説明した。