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HPは病める出版業界に“クラウドのメス”を入れるか

2011年09月09日 22時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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 「atomをbitにする、bitをatomにする。それがわたしたちのビジネスになる」

 8日、米ヒューレットパッカード(HP)が中国・上海で開催した、大規模なプリンターの新製品発表会。ブロガーや放送局を含めて数百社ものメディアが詰めかける中、取締役副社長ビオメシ・ジョシ(Vyomesh Joshi)氏はそんなフレーズをかかげた。

 現実にあるもの(アナログ)を仮想(デジタル)化し、逆に仮想化されたものを現実に戻す。そのプロセスのハブになるものが“印刷”だ。コンテンツが爆発的に増えているWeb時代にあって、その2つの往復がこれからのビジネスの鍵という。

 その思想を具体化したといえるのが、3Dスキャナー機能を備えたプリンター最新機種「TOPSHOT」(LaserJet Pro M275)だ。撮影台に置いた被写体を、上部のアームについた6つのカメラがLEDライトを当てながら撮影する。プリンターは6枚の撮影データを合成し、1枚の画像を作る。ECサイトで商品の画像を作りたいときなどに非常に便利だ。

「HP TOPSHOT」。来春発売予定でスペックは未公開

3Dスキャンは簡単。こうして被写体を撮影台に置き…

スマホのようなタッチ画面でスキャン開始を押すだけ。「これで小物の撮影スタジオがいらなくなる!」と記者はひそかに小躍りした

 まさに「現実を仮想に、仮想を現実にする」という冒頭のモットーが端的に表現されたようなプリンターだ。ビジネスユーザーならずとも衝撃的なアイテムで、来春の発売と予価、また詳細なスペックの発表が待ち遠しい。

 さて、HPからの発表はそれだけではない。キーワードはやはりWebだ。プリンター向けのアプリやクラウドなどの機能を次々と発表している(関連記事)。HPがここまでプリント事業に力を入れている背景には、事業全体としての大きなねらいがある。

 「クラウドで、IPG(Imaging and Printing Group)を変革する」

 彼らの掲げたモットーはこれだ。HPのIPG事業は現在、収益にして約260億ドル。この10年間、約70億ドル増という緩やかなペースで成長してきた。27年前、1984年のインクジェットプリンター「Thinkjet」シリーズからHPのIPG事業は始まった。それがクラウド時代の現在、ふたたび脚光を浴びようとしている。

 だが、変革とはいったい何なのか。そのビジネス上のパイはどこにあるのか? 話を聞くと、どうやら初めにターゲットとなっているのは私たち(と名乗れるほど大きなものとは思えないが)マスメディアのようだ。

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