ブログやコミュニティ、ソーシャルブックマーク、Twitter、Facebook、など、近年台頭してきたソーシャルメディアを検索マーケティングの戦略的施策の1つとして位置づけて、SEOとのシナジー効果も念頭においたソーシャルメディアマーケティングが数年前から注目されています。米国ではSESやSMXなど主要なサーチ系カンファレンスにおいてもセッションとして設けられることが一般的になってきました。
一足遅れて日本でも最近、ソーシャルメディアをSEOに活用しようという動きが見え始めましたが、大きな勘違いをしている方々が非常に目立つので、ここで軽くその勘違いについて指摘したいと思います。
なお、SMO(ソーシャルメディア最適化)やSMM(ソーシャルメディアマーケティング)などいろいろな呼称がありますが、ここではソーシャルメディアプラットフォームを意識した施策全般をひっくるめてソーシャルメディアマーケティングとしておきます。
さて、SEOの効果を引き出す観点からソーシャルメディアを活用する際には、まずソーシャルメディアの位置づけや役割を理解する必要があります。それは次の通りです。
- ソーシャルメディアはコンテンツの流通・拡散を促すための手段である
- ソーシャルメディア上のリンクを張るのは「あなた(=広告主)」ではなくて、あなたのコンテンツに共感したユーザである
特にTwitterやFacebookは、検索とは異なるチャネルを通じて、広範囲のユーザに広く情報を流通・伝播させやすい性質を持っています。良いコンテンツ -- 楽しい、勉強になる、驚いた、共感した等、ユーザに受け入れられ、他の人にも伝えたいと思わせるようなコンテンツ -- であるほど、より広く流通していきます。
SEOの効果も考えた場合、リーチは必要ですので、いかに"良いコンテンツ"を企画・開発するかが肝となります。コンテンツが重要であることは至極当たり前のことですが、やはり"Content is King" あるいは "Content is STILL King" が適切でしょうか、繰り返し述べますが、SEOを念頭においたソーシャルメディア施策においてもコンテンツが最重要です。
コンテンツが広く流通・伝播していくということは、多くのユーザがリンクとともにそれを共有しているということです。つまり共有範囲が広がるほど、より多くのユーザがシェアするほど、多くの(自然)リンクも獲得できることを示しています。
まとめますと、ソーシャルメディアと上手につきあってSEOの効果も出すためには、(1) 良いコンテンツを作る、(2) ソーシャルメディアで広げる (3) 広がるほど自然リンクが生まれるようになる という流れになりますので、コンテンツ企画が重要です。
ところが現実に日本国内で言われているSEO効果を謳ったソーシャルメディアマーケティングは根本的な勘違いをしています。それは、あたかも有料リンクやディレクトリ検索エンジンに登録するかのように、"自分で"ソーシャルメディア上にたくさんリンクを登録しようとしている点です。
たとえば、はてなブックマークやBuzzurl、livedoorクリップといったソーシャルブックマークを見ると、無数のアカウントを取得して、深夜に自分やクライアントのサイトをせっせと登録しているSEO会社やアフィリエイターが後を絶ちません。Yahoo!知恵袋や教えてgooなどのQ&Aサービスに、質問者と回答者のアカウントを用意した上で、「○○○するならおすすめのサービスを教えて下さい」(○○○はSEOのターゲットキーワード)と質問して、回答で「○○○なら△△△(サイト名)がおすすめです」という記述とともにリンクを張っている会社も増加傾向にあります。迷惑メールや営業電話で、こうした商材の売り込みを受け取った方もきっといらっしゃるでしょう。自分で大量にFC2やAmeba上にブログサイトを大量に開設して相互にリンクしあったりターゲットサイトにリンクを張るのも然りです。
これらはソーシャルメディア施策ではなくて、単なるウェブスパムです。SEOとソーシャルメディアを連携したいのであれば、リンクを張るのは自分ではなく、あなたに関心を持ってくれるユーザであるという点を十分に理解して下さい。ソーシャルメディアに自分でリンクを張るのではなく、そこにいるユーザが自然と共有(=リンクしてくれる)ためにどうすべきか?を起点に考えてみて下さい。
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「ソーシャルブックマークにたくさん登録することはSEOの効果ありますか?」「ブログからのリンクは他のページより評価されますか?自分でブログたくさん用意した方がいいのでしょうか」「RSS使ってサイトたくさん作ってリンク張ろうと考えているんですけど」といった類の質問を定期的に受けるのですが、上記の内容を理解してもらえば、ソーシャルメディア上に自分でリンクを張ろう、増やそうとしている点でちょっとおかしいということを理解できるはずです。いろいろなサイトを見ていると、ほんと明らかに時間と労力と資源の無駄としか思えないことを実践している企業やアフィリエイターが多いので、ちょっとコラムとしてまとめておきました。