富野監督/湖川氏に、坂井真紀さんから質問が
――イベントが佳境に近づいた頃、Twitterでイデオンに言及した女優の坂井真紀さんからメッセージが届けられ、藤津氏が読み上げた――
坂井真紀さんからのメッセージ 「ドバの悲しみが分かる、そんな娘でありたいです」
ドバとは、先ほど触れられたハルルと、本作のヒロインであるカララの父親「ドバ・アジバ」の事。詳しくは作品をご覧いただきたい。
その後、坂井真紀さんからの質問が読み上げられた。
坂井真紀さんから監督への質問 「アフレコの際に必ず立ち会って指導すると聞きました。特別強く指導・要望した点はありますか?」
富野氏:よくできた映画というのは、基本的にキャスティングで7、80%がきまってしまうという俗説があります。現場的には間違いなくそうです。カメラが回り始めてから監督がああだこうだと言っても、たかが知れているんです。やっぱりキャスティングが決まった瞬間に作品の色合いが決まってしまいます。
アニメは本当に声だけの出演ですが、声優さん……僕の場合かなり声優ではない方も使わせて頂きましたが、キャスティングでほとんどが決まりますので。確かに、アフレコスタジオにはテレビ版でも、よほどのことがない限り付き合いはしますが、俗に言うシーン毎、台詞毎の演出指導というのを、一見するとしているように見えていますが、あまりしていませんね。
ガンダムの後半から意識しているのは、演技者としての“作り”を抜くという努力だけです。アニメ的な発声を控えさせるということはしましたが、あまり演技論的なことはしません。
声優さんや役者さんの能力に基本的にたよってしまう。それの組み合わせでキャラクターの関係性が見えてくるというキャスティングを心がけていましたので、坂井さんが想像なさるほど、スタジオで演技指導というところには行っていません。
藤津氏:ハルルの声は麻上洋子さん、代表作は森雪ですよね、それをキャスティングされたのは、当時ファンも驚いたと思うのですが。監督としてはいかがでしたか?
富野氏:今言われて、麻上さんの別のお仕事のキャラクターのことを思い出しましたが、ものすごく簡単なんです。「あ、この役でこういう風に演技ができる人であれば、これができる」という風に、別のところに目を向けることができると、それだけのことです。「これをやらせるために引っ張る」ということは、絶対にしません。
他の仕事でその役者の能力が見えたときに、この人はこれで飽きているなと言うことが匂ったりします。そうしたときに、むしろ違うものを振る。役者というのはいろんなものをやりたがるんです。本来そういう性質を持っていますので、その部分に触れたらしめたものだということで、演技指導というのはまさにそこだけです。おもしろがらせるだけです。
だから、「この画面にあてろ」という注文は一度も出していません。
坂井真紀さんから湖川氏への質問 「湖川さんの描くキャラクターが大好きです。特に湖川さんが描く強い女性が大好きです。キャラクターの芯の強さみたいなものを感じます。と同時に内面のもろさ、はかなさも感じます。イデオンだと、カララ、ハルル、シェリルにそう感じます。富野監督とは、どのようなやりとりをしながら、特に女性キャラクターのデザインを進めて行ったのでしょうか。」
藤津氏:先ほどのお話で、だいぶ分かった部分がありますが……。
湖川氏:キャラクターの系統図とか、富野さんのメモをきちんと見て、あとは自分の世界観をどう作ろうかと思って作っていただけですね。一番最初に作ったのはドバです。
藤津氏:ドバからスタートだったんですか?
湖川氏:ドバは後々中心になりますよね。ただ、書いている時にそれが分かっているわけではないんです。何となくこれを最初に作りたいなあと。そうしたら、あとは決まりますよね。もっとも、ハルルで一番びっくりしたのは私ですよ。大丈夫? と(笑)。けれども、あとあと聞くとハマっているなあと。
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