「今日もまたお金のかかる話をしに参りました」――。
6日、表参道・スパイラルホール。話しはじめたのは、動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴ取締役・夏野剛氏だ。夏野氏が発表したのは「ネットとライブの融合」という新事業。そのメインはライブとミュージカル、つまり「舞台」だ。
たしかにいまメディアはライブストリーミング(生放送)、ナマの時代だ。Ustreamではクラブイベントの生放送番組「Dommune」が大成功し、最近のニコニコ動画で人気を集めているのはライブ配信サービス「ニコニコ生放送」だ。
しかし、ドワンゴは赤字つづきのニコニコ動画を3月にようやく黒字化したばかり。「よせばいいのに……」という声もツイッターでちらほら見かける中、いったい今度は何をはじようというのか。そしその勝算はどこにあるのだろう。
そんな疑いを受けるように「明らかに儲かりそうにないですが」と夏野氏は自嘲的に話しはじめ、「1500万人の通常会員、80万人のプレミアム会員を2倍にすること」がねらいのひとつと語る。その上で「ライブという構造を収益化する」という大目標をかかげた。
そもそもこれまでのメディアではライブそのものを収益源にするしくみはない。あくまでCDなど「モノ」を販売するための「広告」だった。ライブは会場をおさえるお金がかかる上、入場できる人数も限られる。地方から東京のライブに来るのは至難の業だ。
その前提を受けて紹介したのは、3月に東京で開かれたCGアイドル「初音ミク」のライブ映像。初音ミクのライブで販売したチケットは、通常のものが4390円、ニコニコ動画で中継を見る「ネットチケット」は1500円。人数が限られていたこともあり、インターネットでライブを見た人数は、会場にいった人数の1.5倍だったという。
事業のひとつとして大きく成長するというのではなく、「ひとつの生態系としてまわるようにするのが目標」と夏野氏。これからはプレイガイドやローソン、ぴあチケットなど既存のチケット業者とも協業していくと話す。たとえばミュージシャンのヨーロッパツアーなどをニコニコ動画で「ライブ中継」する予定もあるという。
そして、ドワンゴとしてライブ事業スタートの「お披露目」をすることになるのが、事業説明会を名目としたライブイベント「ニコニコ大会議」だ。毎回派手な演出で話題を呼び、「資本の無駄使い!」とユーザーたちもチャチャを入れながら盛り上がってきた。
そんな次回のニコニコ大会議は8月26日、渋谷C.C.Lemonホールで開催する。チケットは5800円、ニコニコ動画で見るのは1500ポイント(円)だ。7月6日からニコニコ動画の有料会員(プレミアム会員)に販売し、8月8日に一般販売をはじめる予定という。
その大会議の主要メンバーで全国を縦断するイベント「全国ツアー」もふたたび開催。12月~1月にかけて、1ヵ月半で全国を回るという強行スケジュールという。こちらも同様にチケットを発売する予定だ。