弥生とマイクロソフトが協業
弥生流どぶ板営業でマイクロソフトはSOHOを開拓できるか?
3月26日、マイクロソフトと弥生は中小規模法人・個人事業主の業務の効率化を進めるための協業を発表した。セミナーの共催のほか、Windows Azure上で動作する「弥生SaaS(仮称)」の共同開発まで行なうという。
従業員20名以下の企業は
手書き業務処理が多い
協業について説明した弥生社長の岡本浩一郎氏は、2009年の中小企業白書を引き合いに出し、従業員20名以下の小規模法人・個人事業主の市場規模について全420万社中の87パーセントにあたる366万社と割り出した。しかし、弥生の調べによると、小規模法人・個人事業主は会計や給与計算、販売管理などの業務処理の多くをいまだに手書きで行なっているという。今回の協業により、弥生とマイクロソフトは、3年後までにIT化の遅れた366万社のうち10%にあたる36万社の業務ITを促進することを目指す。
協業の内容は既存製品の啓蒙やセミナーのほか、パッケージ化による販売販促、最新プラットフォームへのいち早い対応、さらにWindows Azure上で動作する「弥生SaaS(仮称)」の共同開発まで含めた、きわめて広い分野に渡る。SaaSプラットフォームにWindows Azureを選択したことについて、岡本社長は「.NET Frameworkを採用していますし、開発はVisualStudio 2008に完全移行している。デスクトップアプリケーションもSaaSも同じように作れるし、コンポーネントも共用できる。Azureを採用しないほうが不思議」と語った。
マイクロソフトとしても、WordやExcelが使われているにもかかわらず、従来からの手作業が数多く存在し、ソフトウェアの力が活用されていないという現状を認識している。また、マイクロソフトも従来から小規模法人・個人事業主のIT化支援のため、「スマートビジネスセンター」「経革広場」などのサイトやキャンペーン、セミナーなどを行なってきたが、こうしたアプローチが必ずしも訴求しきれていないという点もある。こうしたなか、マイクロソフトが進める「Software+Service」の戦略に弥生が全面的に載っていることもあり、広範な協業内容となったようだ。
焦点はまだ仮称となっている弥生SaaSだ。弥生はこれまでもホスティング業者との協業やJSaaSなどでの展開しているが、これらはあくまでWebブラウザで使えるのみ。弥生SaaSはマルチテナント型ののSaasを意識して作られ、GUIもリッチなSilverlightを採用するという。
もはや価格がネックではない
家電量販店の店頭に立ったり、5名程度のパソコン教室でセミナーを進めてきた弥生は、すでに小規模法人・個人事業主の導入ノウハウを持っている。岡本氏は「われわれも価格破壊を先導してきた経緯があるが、高価だった会計ソフトは安価になっており、青色申告のソフトに至ってはすでに1万円を切っている。こうした現状で導入が進まないということは、もはや価格がネックではないということ」と語る。価格の安さやソフトウェアの機能がどうこういう以前に、業務の効率化という話を丁寧に進めていかないと導入にまで行き着かないという。
今後、マイクロソフトがこうした「どぶ板営業」を旨とする弥生と組むことで、長らくブレイクできなかった小規模法人・個人事業主を開拓できるか、注目が集まる。
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