サーバー用のOSは、デスクトップPCやノートPCなどで使うクライアント用OSと何が違うのか。Windows Server 2008を例に、サーバOS登場の背景から概念、そしてWindows Serverの中核機能の1つであるディレクトリサービス、ユーザー管理の手法などを解説していこう。
サーバーを学ぼう
多くの企業で、Windows Serverが使われている。Windows ServerはGUIベースで使いやすく、予備知識があまりなくてもある程度は使える。しかし、単に使えることと、効果的に使えることは違う。背景にある状況を理解し、なぜその機能が実装されたのかを理解していれば、予期しないトラブルが起きても、その原因を推定し、適切に対処できる可能性が高くなる。
本連載は、単にWindows Serverの使い方を紹介するのではなく、Windows Serverの機能が実装された歴史的背景と理由に重点を置く。もちろん実際の操作も紹介するが、つねに「なぜ」を意識しながら読んでほしい。
サーバーとは何か
Windows Serverは「サーバーOS」と呼ばれる。では、そもそも「サーバ」とは何だろう。英語でServerは「Serveする人や物」という意味である。「サービス(Service)を提供する」と考えてもよい。しかし、これでもまだよく意味がわからないのではないだろうか。長年IT教育に携わっている経験では、新入社員の最初の疑問は「サーバーってなに?」だ。すでにご存じの方にはまどろっこしいかもしれないが、少し詳しく説明したい。
「サーバー」は、特別な用語ではない。ビアホールに行けば「ビールサーバー」があって、注文に応じてビールを提供してくれる。また、オフィスの一角には「コーヒーサーバー」が置いてあって、自由に飲める会社もあるだろう(写真1)。お茶の場合はなぜか「給湯器」あるいは「給茶器」と呼ぶが、英語でいえば「ティーサーバー」である。
「サービス」は、自分がしてほしいことを誰かがやってくれることだ。ビールがほしければビールサーバーから、コーヒーがほしければコーヒーサーバーから入手できる。Serveは、Servant(召使い)の語源でもある。
現在のコンピュータ環境では、サービスを提供する「サーバー」と、サービスを享受する「クライアント(顧客)」の役割が分かれている。多くの場合、クライアントはデスクトップPCやノートPCだ。クライアントPCは、IT部門が設定してくれる場合もあるが、基本的には自分で構成する。これに対して、「サーバー」は一般ユーザーが自分で管理することはないが、誰かが責任を持って管理しなければならない。ビールサーバーにビールをセットするのはビアホールの店員だし、コーヒーサーバーにコーヒーをセットするのは、(もしそういう役割があるなら)コーヒー当番の仕事である。
コーヒーサーバーに求められる能力は、状況によって違う。少人数の職場だと、5杯から10杯くらいを一度に作れれば十分だが、人数が増えるとそれでは追いつかない。大人数の職場だと、自動販売機型のコーヒーサーバーが便利だが、維持費も高いため少人数では非経済的だ。また、コーヒーサーバーがお茶も提供してくれれば便利だが、コーヒー豆と茶葉の両方を用意しないとならないので、手間は増える。サーバーに求められる機能も同様である。少人数の職場では、あまりにも高性能なサーバーは無駄だ。多くの機能があれば便利だが、必要以上の機能はかえって管理が面倒になる。
そう、サーバーといっても難しいことはない。読者のみなさんが、普段誰かから受けているサービスと考え方は同じである。
(次ページ、「サーバーOSが誕生するまで」に続く)
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