PCIと高速CPUがもたらしたチップセットの集約化
さて、この後あたりから、急速にチップセットの集約化が行なわれている。その理由は3つ。まずはシステムの高速化と高性能化にともない、複数の独立チップを外部でつなげるよりも、全部ひとつのLSI内部に納めたほうが性能面で有利であるため。2つ目はパーツ数や実装面積を節約できること。3つ目はこれによって低価格化できることだ。
実際486の時代になると、互換チップセットベンダーがインテルよりも集約度を高めたチップセットを相次いで発表しており、これにより低価格化や省サイズ化を図ることが可能になった。論より証拠、例えば下の図は、1996年にインテルが発売していた「Ultra-Low Power Intel 486SX Processor Evaluation Board」のマニュアルから抜粋したものである。
「ちょっと大きめのISAカード」といった基板にパソコンの機能をまるごと収めたものだが、この内部構造は次の図のようになる。インテル自身のマザーボード製品にも関わらず、チップセットにはPicoPower Technologies社の製品を使っている事がわかる。
「例にあげたのは組み込み向けの低消費電力製品だから例外」と考えるとしても(当時もインテルの売り上げの中核はCPUであり、CPUが売れるのであればむしろこうした互換チップセットは歓迎されるという雰囲気が残されていた)、長期的に見れば複数チップからなるシステムを、もっとチップ数を減らしたシステムに集約することが必要と考えられていた。Socket 5/7時代の初期は、複数チップ構成で提供されていたものの、やがてチップ数を集約して2チップ構成を取るにいたる。
初代のPCIチップセット 82430LX
それではロードマップの話に入ろう。インテルが最初に出したPentium向けチップセットは、1993年の「Mercury」こと「Intel 82430LX」である。初のPCIサポートチップセットであり、ほぼ1ページ目の図3の構成に近い。82430LXは、キャッシュ/メモリーコントローラーの「82434KX」と、PCIバスブリッジの「82433LX」が2つ、さらにISAバスブリッジの「82378」という4チップで構成されていた。
この82430LXをベースに、ややハイエンド向けとしたものが翌1994年に登場する「430NX」である。こちらは対応CPUがSocket 5/7 CPUになったうえ、デュアルCPU構成をサポートした製品だった。対象マーケットはワークステーションからローエンドサーバーまでをカバーするものだったが、普通のデスクトップ向けにも採用されている。
これに続き1995年に登場したのが「430FX」(コード名Triton)である。チップ数としては依然として4チップ構成であったものの、PCI-ISA Bridgeである「82371FB」(PIIX)にバスマスターDMA転送対応のIDEコントローラーが搭載されたという点で画期的な製品であった。この430FXを搭載したインテルのコード名「Zappa」マザーボードはかなり広く使われたし、これをチューニングできる「Mr.BIOS」というサードパーティー製BIOSが登場するなど、いろいろな意味で特徴的な製品であった。
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