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インターネットユーザーの消費行動モデル

2009年01月15日 17時24分更新

文●権 成俊/株式会社ゴンウェブコンサルティング 代表取締役、李 泰成/株式会社ゴンウェブコンサルティング SEMチームリーダー

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なぜネットで買うのか?

●インターネットで買う理由

 皆さんが以下の商品をインターネットで購入する場合、その理由は何でしょうか。まずは考えてみてください。

●ルイヴィトンのバッグ
●iPod
●お米
●水
●本棚
●ワイン
●本
●服

 私だったら以下のような理由です。

●ルイヴィトンのバッグ → ネットなら安い店が探せる
●iPod → ネットなら安い店が探せる
●お米 → 重いので配達してほしい
●水 → 重いので配達してほしい
●本棚 → ネットで探すと種類が豊富
●ワイン → ネットで探すと種類が豊富
●本 → お店まで足を運ばないで良いので便利
●プリンタインク → お店まで足を運ばないで良いので便利

 皆さんはどう思われましたか?おそらく、多くの方が同じ理由を考えたでしょう。つまり、商品によってインターネットで購入する理由は異なり、その理由はどのユーザーもほぼ同じである、と言うことです。

 一般的に、高額なブランド品はどこで購入しても商品そのものに変わりはありませんから、出来るだけ安く買いたいと考えます。ですから、ルイヴィトンのバッグを売りたいのであれば値段が安くないと売れません。値段が高いままでサイトのデザインを工夫したり、アクセス対策に躍起になっても効果がないということです。

 逆に、プリンタインクを売るのに価格は最重要ではありません。多くのユーザーがプリンタインクをネットで購入するのは今使っているインクがなくなった時でしょう。そんなシーンでは、簡単に注文ができて納期が早いことが重要でしょう。たとえば、インクを激安で販売しているショップでも、プリンタとインクの対応の説明がわかりにくくて欲しいインクが見つけられなかったり、在庫がなくて納期1週間、となっていれば購入しないでしょう。購入する理由が明確であれば、ユーザーにアピールすべき点も明確である、と言うことです。。

一般的な消費行動モデルAIDMA

 次にウェブマーケティングミックスの要素を一つ一つ詳しく見てみましょう。

 このように、ユーザーが物を買う時にどんな段階を経て購入に至るのか、この大まかなパターンをまとめたものを消費行動モデルと呼びます。
 消費行動モデルとして最も良く知られているのはAIDMAでしょう。

●Attention(認知)・・・「これなんだろう?」
●Interest(興味)・・・「へー便利だなー(きれいだなー、おいしそうだなー、など)。」
●Desire(欲求)・・・「これ欲しいなー。」
●Memory(記憶)・・・「これ見つけたら買おう。」
●Action(行動)・・・「あ、欲しかったやつだ。購入しよう。」

 興味を持ったら即検索行動をとり、そのまま購入できるというのがインターネット消費行動の特徴であり、強みでもあります。

インターネット消費行動モデル2 AISCEAS

 インターネット消費行動モデルとして知られているもう一つのモデルがAISCEASです。

●Attention(認知)・・・「これなんだろう?」
●Interest(興味)・・・「へー便利だなー(きれいだなー、おいしそうだなー、など)。」
●Search(検索)・・・「売っている場所を調べてみよう。」
●Compare(比較)・・・「該当する商品がいくつもあるから、比較してみよう。」
●Examination(検討)・・・「AとBのどちらがより良いのかな。」
●Action(行動)・・・「Aを購入しよう。」
●Share(共有)・・・「これとても良かったよ。」

 検索した後に該当商品を複数比較、検討し、最終的に購入する商品を選びます。AISASとの違いは比較・検討のステップがあることです。AISASは検索してから購入までの間隔が短く、すぐに購入行動に移ることを意味していますが、AISCEASは検索から購入までに比較・検討を行うという意味です。実際、自身の購入行動を振り返ってみるとおわかりになると思いますが、すでに商品をよく知っている場合や商品の価格が安い場合は検索結果から欲しい商品を見つけてすぐに購入することがあります。しかし、高額商品の購入を検討する場合や、欲しい商品と同じニーズを満たしてくれる商品のブランドや類似品がいくつかある場合、それらを比較してからもっとも自身に適したものを購入するでしょう。

ニーズとウォンツ

 何かを欲しいと思う時、その欲しい対象が明確な場合とそうでない場合があります。たとえば、お中元に何か送りたい、と思っている時、用途はお中元ですが、何を買うかはまだ決まっていません。しかし、お中元でもハムを送ろう、と決まっている場合、欲しい対象はハムという明確なものになっています。さらにそのブランド名まで決まっている場合はより明確です。

 このように、獲得欲求には段階があります。のどが渇いた、という欲求の場合、欠乏感は明確で、それを解決する方法として水やビール、ジュースなどいくつもの選択肢があります。これに対して水が欲しい、という欲求はすでに獲得対象が明確です。前者をニーズ、後者をウォンツと呼びます。

 先ほどのAISASとAISCEASの違いはこのニーズとウォンツの違いです。AISASのような即購買行動に移るモデルはウォンツ(獲得欲求)が具体的かつ明確な場合です。欲しいものが決まっているので、あとは価格と納期を比較して購入判断を行います。しかし、AISCEASモデルはニーズ(欠乏感)のレベルですから、まだ欲しいものは明確ではありません。
 自身の悩みを解決するために適切な商品は何かを比較・検討します。たとえば、お中元を贈る場合でも、相手が上司なのか、取引先なのか、友人なのかで送るものの値段や種類が変わるでしょう。さらに家族の人数や、個人的な嗜好なども考慮に入れるとより検討すべき条件が増えます。これらを検討し、最も適切であるということが伝わればその商品がニーズからウォンツに昇格するわけです。

ウォンツ行動はアクセス対策勝負、ニーズ行動はサイト勝負

 ウォンツからの消費行動ではすでに欲しい商品が明確ですから、その商品の魅力を改めてアピールする必要はありません。同じ商品をどこで買うかを検討する段階なので、あとは価格と納期をアピールすればいいのです。つまり、サイトを訪問してもらえれば購入に至る可能性は高いということです。
 逆に、ニーズからの消費行動ではまだ獲得したい対象が不明確ですから、ユーザーのニーズに合う商品の中から最も適切な商品をウォンツとして認識させなくてはなりません。そのため、サイトを訪問してもらえても購入に結び付く可能性は低く、サイトのコンテンツで十分に商品の魅力を伝える必要があります。
 この傾向をグラフで表現したのが下記の図です。ウォンツを持って検索するユーザーは検索する時点で既に高い購買欲求を持っています。そのため、アクセスさえ獲得できれば購買に結び付く可能性が高いのです。ニーズ商品はサイト訪問時にはまだ購入意欲は低く、サイト内で購買意欲を高める努力をすることで、初めて購入に至ります。

 つまり、どのような商品をどのようなシーンに対して販売するのかによって、アクセス対策に力を入れるべきなのか、それともサイトのコンテンツに力を入れるべきなのかが異なるのです。

著者プロフィール

名前 権 成俊(ごん なるとし、左)、李 泰成(り やすなり、右) info[アットマーク]gonweb.co.jp
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ゴンウェブコンサルティング
サイト http://www.gonweb.co.jp/

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